新たな質の生産力が最重要

2024-04-09 14:11:00

李家祺=文 

習近平総書記は今年の全国「両会」において、全人代代表や全国政協委員による審議と討論会にたびたび出席し、各業種業界の代表の提言に耳を傾け、意見をくみ取り、新たな質の生産力の発展やエコ文明建設の強化などといった課題について重要談話を発表した。 

新たな質の生産力の発展 

習総書記は自身が所属する第14期全人代第2回会議江蘇省代表団の審議に参加した際、質の高い発展という最重要課題をしっかりと把握し、現地の状況に応じたやり方で新たな質の生産力を発展させる必要があると述べ、新たな科学技術革命と産業変革を前にしてチャンスを捉え、イノベーションを強化し、新興産業を育成し強大化させ、未来産業を先行的に配置構築し、現代化産業システムを整備しなければならないと強調した。 

さらに、習総書記は次のように指摘した。改革のさらなる全面的深化という重要措置を講じ、質の高い発展を後押しし、中国式現代化を推進するために引き続き強靭(きょうじん)な原動力をもたらさなければならない。ハイレベルな社会主義市場経済体制の構築において、財産権の保護、市場参入、公平な競争、社会信用といった市場経済の基礎的制度の整備を加速させる。「二つの揺るぐことなく」(揺るぐことなく公有制経済を打ち固めて発展させる、揺るぐことなく非公有制経済の発展を奨励支援リードする)というシステムおよびメカニズムをしっかりと整え、実行に移し、民営経済と民営企業のさらなる発展をサポートし、各種経営主体の内在的原動力とイノベーションの活力を喚起する。テクノロジー教育人材システムなどの改革を深化させ、新たな質の生産力の発展を阻害するボトルネック障壁を打ち破る。市場化法治化国際化した世界トップレベルのビジネス環境を引き続き構築し、よりハイレベルな開放型の経済という新たな優位性をつくり上げる。 

習総書記は江蘇省が経済社会の発展で上げた新たな進展と成果を大いに評価し、江蘇省が信念を固め、大いに意気込んで重責を担い、全国の大局のためにより大きな貢献を果たすよう期待を示した。 

習総書記は江蘇省に大きな期待を寄せる中、これまで一貫して科学技術イノベーションを念頭に置いてきた。このたびの審議でも、「先進的製造業を柱とする現代化産業システムの構築という重点を際立たせ、科学技術イノベーションを導きとし、従来型産業のアップグレード、新興産業の成長、未来産業の育成を一体的に推進し、科学技術イノベーションと産業の革新の踏み込んだ融合を強化し、従来型産業の先行的地位を打ち固め、国際競争力を持つ戦略的新興産業クラスターをつくり上げ、江蘇省を新たな質の生産力の発展における重要拠点としなければならない」と指摘した。 

会場では活発な審議が行われ、現場は熱気に包まれた。代表たちはハイレベルな科学技術の自立自強の実現、中国における太陽光発電産業の質の高い発展の後押し、文化遺産の保護と伝承の強化、共同富裕の推進による「幸福村」の建設、長江デルタ一体化発展への貢献、ものづくり精神の発揚といった課題について提言した。その中で習総書記はたびたび発言し、代表たちと交流を行った。 

代表の高紀凡氏は天合光能股份有限公司の会長兼最高経営責任者であり、太陽光発電科学技術国家重点実験室の主任も務めている。 

あなたたちの実験室はどこにあるのかという習総書記の問いに対し、高氏は「江蘇省の常州と上海にあります。企業と大学による共同設立で、基礎研究から最先端研究、応用研究まで一貫して行っています」と答えた。 

企業と大学、研究機関が連携して科学技術と産業の革新をしっかりと進めることは、ハイレベルな科学技術の自立自強を実現するための重要な筋道だ。科学技術の革新は新たな産業、新たなモデル、新たな原動力を生み出し、新たな質の生産力を伸ばすための核となる要素である。 

習総書記は新たな質の生産力の発展という高度な視点から科学技術の革新の意義を詳しく説明し、「江蘇省は新たな質の生産力を発展させる上で優れた条件と能力を備えている」「新たな科学技術革命と産業変革を前にして、チャンスを捉え、イノベーションを強化し、新興産業を育成および強大化させ、未来産業を先行的に配置構築し、現代化産業システムを整備しなければならない」と指摘した。 

一方、習総書記は、「もちろん、新たな質の生産力の発展は従来型産業を軽視し、放棄するものではなく、一斉に突進する現象やバブル化を防ぐ必要があり、単一のモデルに陥ってはならない。江蘇省各地の状況は同じではなく、現地の状況に応じた方法を取らなければならない」とくぎを刺した。 

薄い灰色の整った作業着姿で審議に参加した代表の孫景南氏は、中国中車南京浦鎮車輛有限公司で働く溶接工だ。かつて見習いだった孫氏は30年以上にわたって溶接技術の研究に精魂を傾け、今では中国中車の著名な技能専門家となった。 

孫氏は発言の中で「大国の職人」について言及し、「『匠』とは各専門分野で自分に妥協をしないことで、錬磨を経てこそブレークスルーを実現できます」と自らの見解を述べた。 

習総書記はその言葉に同意を示し、「『大国の職人』はわれわれ中華民族をビルとするなら、礎石や大黒柱に当たるものだ。優れた設計図をつくるだけではだめで、最後は溶接工の手によって完成させる必要があり、世界トップクラスの水準でなければ最も優れた設備を生み出すことはできない。ゆえに、われわれは職業教育をしっかりと行い、『ものづくり精神』を確立し、第一線で活躍する『大国の職人』を続々と育てなければならない」と語った。 

コンセンサス結集し建設後押し 

習総書記は全国政協第14期第2回会議に参加した中国国民党革命委員会、科学技術界、環境資源界の委員を訪れ、合同グループ会議に参加して意見や提案を聴取した。習総書記は、人民政協の各党派、各団体、各民族の各界各分野の関係者は中国共産党第20回全国代表大会(第20回党大会)が打ち出した重要な戦略任務と中央経済活動会議の方針を中心に据え、深く調査研究し、積極的に建言し、広範なコンセンサスを形成し、中国式現代化の推進に助力しなければならないと強調した。 

環境資源界という新たなカテゴリーが今期から設けられたのは、党と国家が生態環境保護の取り組みを非常に重視していることの表れであり、より多くの専門的な人材を結集させてエコ文明建設を後押しする上でもプラスとなる。 

このカテゴリーに属する黄綿松委員は長年にわたり生態環境ガバナンス7)に携わり、このたびの会議で自身の取り組みの成果と経験について報告を行った。 

習総書記はたびたびうなずいて同意を示し、「党中央は一貫して環境保護の取り組みを重視しており、特に第18回党大会以降、急速な進展と非常に大きな変化を迎えた」と語った。 

また、習総書記は子どもの頃の北京の様子を振り返り、「常に砂ぼこりがひどく、春にマスクを外すと表になんとほこりの層ができていて、一日家を空けると屋内に砂が積もっていたものだった。あれはPM25ではなく『PM250』だ」と語ると、会場からはどっと笑い声が上がった。 

さらに習総書記は、「2014年に北京で開かれたアジア太平洋経済協力(APEC)非公式指導者会議の際、数日にわたって好天に恵まれた。当時、ある人からこの『APECブルー』は続くのかと聞かれ、この青空は一時的なものではなく、数年後には永遠のブルーとなるだろうと答えたものだ」「われわれは『PM250』からPM25の時代を経て、現在はPM25の問題もほぼ解決し、ここ数年一歩一歩前進している」と感慨深く語った。 

生態環境部所属の胡松琴委員は新たな汚染物の対策強化に関する提言を行い、それに対して習総書記は、「新たな汚染物対策は時宜にかなった提言だ。眼前の従来からある問題を解決するまで新たな問題に手をつけずともよいわけではなく、同時に取り組まなければならない。遠い将来の事を考えておかなければ、近いうちに必ず心配事が起こるものだ。環境保護は任重くして道遠く、引き続きしっかりと取り組まなければならない」と評価した。 

加えて習総書記は、的確な汚染対策、科学的な汚染対策、法に基づく汚染対策の方針を全面的かつ正確に実施し、経済社会発展のグリーン化と低炭素化を促進し、資源の節約集約循環型利用を強化し、エコ製品の価値実現の道を切り開き、カーボンピークアウトとカーボンニュートラルを積極的かつ着実に推進し、質の高い発展のために新たな原動力をもたらし、新たな優位性を築かなければならないと強調した。 

国家ナノ科学センターで研究員を務める科学技術界の趙宇亮委員は発言の中で、イノベーションチェーンと産業チェーンのミスマッチが新たな質の生産力の構築を阻害する要因になっているとし、科学技術イノベーションが生んだ新たな成果の産業化により力を入れるべきだとする提言を行った。 

習総書記は、「党中央はハイレベルな科学技術の自立自強と新たな質の生産力の発展の加速に関する統一した認識を持ち、積極的に推進している最中だ」と回答し、「過去の研究と生産は一元化されていなかったが、現在の科学研究成果の産業応用の度合いはかつてに比べて大幅に向上しており、特に企業が自ら研究開発の成果を転化させ、高等教育機関と企業が共同体を形成している。このような傾向と方向性は正しいものであり、一層スピードアップさせ、奨励促進政策をよりしっかりと行うべきだ」と語った。 

習総書記は、科学技術界の委員と広範な科学技術者は科学技術と教育による国家の振興と強化という抱負をさらに強固なものとし、科学技術イノベーションという重責を担い、基礎研究とその応用を強化し、重要技術コア技術の堅塁攻略戦に力を尽くし、新たな質の生産力を発展させる新たな原動力を培わなければならないと指摘した。さらに、実務的な建言献策を行い、科学技術体制改革と人材発展体制制度改革の深化に助力し、科学技術の評価システムとインセンティブメカニズムを整備し、各種人材のイノベーションの活力と潜在力をさらに引き出す必要があると述べた。 

責任感を強め改革革新を深化 

習総書記は解放軍武装警察部隊代表団の全体会議に参加し、新興分野の戦略能力は国家の戦略体系と能力の重要な構成要素であり、中国の経済社会の質の高い発展に関わり、中国式現代化による強国建設と民族復興の偉業を全面的に推進する上で重要な意義を持っていると強調し、使命への責任感を強め、改革革新を深化させ、新興分野の戦略能力を全面的に向上させなければならないと語った。 

会議の席上、代表たちは人工知能(AI)の応用推進、新興分野における規格共通化の取り組みの強化などの面での課題について提言を行った。 

習総書記は次のように指摘した。新興分野の発展は根本的に科学技術の革新と応用から始まる。革新への自信を強め、主体性を堅持し、現実に即して自主的革新と独創的革新の推進に力を入れ、新たな質の生産力と新たな質の戦闘力の成長の極みを築く必要がある。交差的融合的発展という新興分野の特徴を把握し、統合的革新と総合的応用を強化しなければならない。 

さらに習総書記は、新興分野の改革を改革のさらなる全面的進化の重点として際立たせ、自主自強かつ開放的融合的で活力に満ちたイノベーションのエコシステムを構築し、新興分野における戦略能力の構築をよりしっかりと推し進めなければならないと強調した。さらに、ニーズのマッチング、計画のマッチング、資源共有などの面での制度メカニズムをしっかりと整備し、共通規格化の道をしっかりと歩み、新興分野の発展における全体的な効果と利益を高めなければならないと指摘した。 

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