市場の優位性と投資の魅力

2024-04-09 14:14:00

段非平=文

14期全人代第2回会議の開幕会議で、李強国務院総理が国務院を代表して政府活動報告(以下、報告)を行った。報告は昨年の活動を振り返るとともに、今年の発展目標を提示した上で具体的な計画書、施工図、政策リストをつくった。発展の中で直面する可能性がある挑戦や問題に対して、中国は一貫して冷静さを保っており、このような冷静な態度とそれに基づく自信と努力が報告全体に通底している。 

GDP5%程度の意味 

世界第2位の経済国として、中国経済の鼓動は世界経済の神経を動かしている。毎年の全国「両会」期間中、世界は中国政府が発表する中国経済の状況と発展計画にとりわけ関心を寄せる。 

「今年の主な所期目標として、GDPの伸び率を5%程度とする」。報告が提起したこの目標は、世界に向けて「安定は大局と基礎」「前進は方向性と原動力」という明確なシグナルを発した。そして中国経済の安定的かつ健全な発展は、世界経済の回復に原動力と自信を注入する。 

なぜ5%程度なのか?報告は次のように指摘している。GDPの伸び率を5%程度としたのは、雇用と収入増の促進、リスクの防止解消などの必要性を考慮し、また経済成長の潜在力とそれを支える諸要素についても考慮し、鋭意進取、発奮努力の姿勢を反映したものだ。だがこの目標の達成は容易なことではないため、的確な政策を講じ、各方面が心を一つにして倍に努力する必要がある。 

「経済の『質』の効果的向上と『量』の適正な拡大のどちらの達成を推し進めるにしても、GDPの伸び率5%程度という所期目標は妥当です」。中国国際経済交流センター副チーフエコノミストの張永軍氏は、5%程度という所期目標は過去4年間の平均成長率467%を上回り、各方面の自信と期待の向上につながり、経済の持ち直しの動きの安定化と強化を求めることを表していると考える。 

この目標を達成する自信はどこから来るのか?全国政協委員で北京大学新構造経済学研究院院長の林毅夫氏は次のように説明する。中国経済はまだ非常に多くの発展潜在力を有しており、顕著な制度面での優位性、超大規模市場の需要面の優位性、産業体系の完備という供給面の優位性、高い資質の労働者が数多くいるという人材面の優位性をうまく活用し、リスクや課題に適切に対処できれば、安定の中で中高度成長を達成するのは十分に可能だ。 

伸び率だけを見ると、過去数年の高度成長と比べたら中国経済の成長速度は確かに緩やかになっている。その原因は中国経済が質の高い発展を求める航路に移り、「質」の効果的向上と「量」の適正な拡大を強調し始め、「GDPで英雄を論ずる」ようなことをしなくなり、経済のギアチェンジと減速をしているからだが、決して失速するわけではない。 

「中国のGDP成長率の減速に注目する人が少なくないが、データの裏にはさらなる希望があふれている。この『アジアの巨人』は今なお毎年5%前後のスピードで成長し、中国経済は世界の経済成長の重要なエンジンだということだ」。スペインの新聞『エルエコノミスタ』はそう報じた。 

新たな質の生産力とは? 

今年、新たな質の生産力が初めて報告に盛り込まれるとともに、今年の10大活動任務の筆頭に掲げられた。これは中国が新たな原動力と新たな優位性を不断に創出することで経済の質の高い発展を推し進めることを意味している。 

新たな質の生産力は科学技術イノベーションが主導的役割を発揮する先進的生産力で、昨年9月に初めて提起され、またたく間に中国経済のホットワードとなった。今年の報告は新たな質の生産力の発展加速に対し具体的な配置を下し、その発展の道筋もますます明確になった。 

「昨年12月に開かれた中央経済活動会議では、質の高い発展の堅持を新時代の根本的道理としなければならないと提起されました。質の高い発展は科学技術イノベーションを内なる駆動力とし、新たな質の生産力の発展は中国経済の質の高い発展の実現を推し進めるのに役立ちます」。中国科学院中国現代化研究センター執行主任の梁昊光氏は、新たな質の生産力の発展は中国経済の競争力と持続可能性を向上させる重要なアプローチだと見る。 

北京市社会科学院研究員でデータ資産化研究院執行院長の王鵬氏は、新たな質の生産力の発展は中国経済の発展におけるいくつかの根深い矛盾や問題の解決に役立つと考える。「この過程は外部からの挑戦に対応するニーズであり、経済の内的原動力を推し進める必然的な選択でもあります」 

「昨年、中国の『新三種』(電気自動車、リチウムイオン電池、太陽電池製品)の輸出額が初めて1兆元を突破しました。これは中国が新たな質の生産力を打ち立てた成果が現れ始めていることを意味しています」。全人代代表で中国社会科学院社会発展戦略研究院院長の張翼氏は、新たな質の生産力の「新」の核心は科学技術の先進性、革新性、けん引性にあるとする。新たな競争分野をつくらなければ従来の競争分野の制度や枠組みといった束縛から逃れられず、質の高い発展も効率的に推し進められない。「新たな質の生産力は科学技術イノベーションの突撃ラッパを吹き鳴らし、中国の発展と建設に戦略的チャンスをもたらしました」 

民政改善にさらに注力 

今年の報告における力強くぬくもりに満ちた民生に関する記述は、人民大衆の獲得感、幸福感、安心感を不断に高めている。 

「雇用は『国家にとって大事なもの』であり、最大の民生です。今年、政府は雇用確保政策に引き続き力を入れるという前提の下、雇用ミスマッチを解決するという的確性を高め、労働力の需要と供給の一致をさらに精確に促します」。全国政協委員で南方科技大学副学長の金李氏は、報告で打ち出された一連の措置は高等教育機関卒業生などの重要な層にさらなる権利と利益の保障を与え、さらに充実した質の高い雇用を有効的に推し進めると考える。 

人民の健康は民族の振興と国家の富強に欠かせない象徴だ。公立病院改革の深化から老年医学や医療看護などの不足しているサービスを充実化することまで、報告で打ち出された一連の措置は人民中心の発展理念を入念に明らかにしている。「報告は、今年の都市農村住民基本医療保険の1人当たり公費負担額を30元引き上げると提起しました。世界最大の医療保障ネットワークを持ち、基本医療保険加入者が13億人を超える国として、これは政府が国民の受診問題を精一杯解決しようとする決意と意気込みを十分に表しています」と、全国政協委員で北京大学第一病院密雲区病院院長の王広発氏は語った。 

住居があることは重要な民生の目標であり、多くの家庭の直接的な利益に関わっている。報告では、保障タイプ住宅の建設と供給を拡大し、不動産取引に関わる基本的制度を整備し、住民の住宅需要と多様化した住み替え需要を満たすとしている。全国政協委員で山西省工商連合会主席の景普秋氏は、政府が実施する一連の政策は住宅の実需という悩みのタネを的確に解決するばかりか、居住の快適度のアップも強調し、人民の「安らかに暮らす夢」をかなえようとする誠意の表れだと述べた。 

「中国は発展における問題を改革で解決し、民衆に確かな利益をもらたすのに長けている」。ナイジェリア中国研究センターのチャールズオヌナウィージュ氏は次のように考える。人間本位9)の発展の道は中国の歴史と文化の中にずっと息づいている。中国の発展は経済の指標やデータだけに目を向けているのではなく、人々の幸せと無事にさらに関心を寄せている。民生にスポットを当て、人間本位の中国の発展モデルは他の国々の参考になると考える。 

依然としてチャンス多し 

中国の発展は世界と不可分で、世界の発展も中国を必要としている。中国は質の高い発展を堅持し、ハイレベルな対外開放10)を引き続き推し進め、自身の経済の発展を力強く推し進めるばかりか、世界経済の発展の「パイ」をより大きくし、世界に協力ウインウインのチャンスを与えている。 

「中国はより広範な開放とより深い改革によって西側が築いた『小さな庭に高い壁』に対応している」。ロシアのスプートニクは、報告にあるハイレベルな対外開放の拡大を巡る数々の新たな措置は他の国々にとって大きなチャンスであり、各国はウインウインを確実に実現できると報道した。 

「今年の報告では、外資参入ネガティブリストを引き続き縮小し、外資系企業の内国民待遇を徹底すると述べています。中国が引き続き外資導入の積極的なシグナルを出し、拡大と開放を堅持する決意と自信を明らかにすることで、外資系企業も中国経済の包摂性と幅広い発展のチャンスを切に感じています」。ハネウェル中国地域総裁の余鋒氏は、中国市場の規模やイノベーションの活力などの優位性は国際企業が中国で成長する上で着実な市場的よりどころを提供していると述べる。 

昨年から、一部の海外メディアは「外資離れ」を言いふらしているが、外資系企業は中国が依然として世界で一番価値のある投資先だと実際の行動で証明している。昨年、世界の対内直接投資が新型コロナ感染症や保護貿易主義などさまざまな要素が重なって18%減少したという状況の中、中国で新規設立された外資系企業は前年比397%増の5万3766社で、外資利用実績は1兆1339億1000万元で、外資導入の規模は2021年、22年に次ぐ史上3番目だった。まさにP&Gの社長兼最高経営責任者(CEO)のジョンモーラー氏がかつて「中国の長期的視点でのチャンスは健在で、中国に投資する魅力も健在です」と言った通りだ。 

 

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