高品質なゲームが席巻
李家祺=文
中国のゲームは技術革新と文化的共鳴の中で世界中のプレイヤーの生活に深く溶け込み、世界のデジタルゲーム産業になくてはならないものになった。中国音響映像・デジタル出版協会のゲーム出版活動委員会と、中国ゲーム市場の分析を行う伽馬データが共同作成した「2024年中国ゲーム海外進出研究報告」によると、昨年中国が自主開発したゲームの海外での実質売上高は前年同期比13・39%増の185億5700万㌦だった。10年の2億3000万㌦から14年間で約80倍も増えた計算になる。
世界を駆ける「悟空」
昨年ドイツのケルンで開催されたゲームズコムで、『黒神話:悟空』のブースに黒山の人だかりができ、写真を撮るために大勢が並び、緊箍児を頭につけながら「WuKong」と掛け声を上げていた。
杭州遊戯科学が開発した西遊記を題材にしたアクションRPG『黒神話:悟空』は、昨年8月20日に正式にリリースされると、世界のゲーム市場で瞬く間に大きな反響を巻き起こした。発売日当日の世界でのダウンロード数は450万を超え、販売総額は15億元以上となった。昨年末までにこのゲームは2800万回以上ダウンロードされ、売上は90億元を超えた。オンラインゲーミングプラットフォームSteamでの最大同時接続プレイヤー数は300万人を超えた。これは『PUBG: BATTLEGROUNDS』に次ぐ歴代2位の数だ。
ゲーム業界にとって、クオリティーこそが世界中のユーザーの心を打つ根本的要素だ。『黒神話:悟空』は開発工程で最先端のゲームエンジンの一つである「アンリアルエンジン5」が使われており、精巧なレンダリング技術によってゲームに圧倒的なリアリティーと迫力を与えている。Steamのゲームコミュニティーでは、多くのプレイヤーがアニメーションに対して高評価を下し、戦闘システム、特にボス戦イベントの難易度とそれにともなう達成感が高いとコメントしている。同ゲームは昨年末に「ゲーム界のアカデミー賞」といわれるTGAでその年の「ベストアクションゲーム」と「プレイヤーボイス」を受賞し、そのクオリティーが国際市場で受け入れられたことが分かる。
『黒神話:悟空』はハイクオリティーであり、ストーリーや風景、BGMが中国の伝統文化に深く根差しているため、海外のユーザーに中華文化を没入体験させられる。「初めてPVを見たときからこのゲームにずっと注目し、英語版の『西遊記』も買った。アニメ版もストーリーの理解に役立った」と米国のプレイヤーは語る。
データによると、同ゲームは昨年の中国のコンソールゲーム市場の実質売上高を前年同期比55・13%増の44億8800万元に引き上げた。この数字は、ハイクオリティーコンテンツが産業チェーンに与える波及効果(10)を実証し、より多くの中国企業が関連分野に進出する布石となった。
各国の特色盛り込む
中国は2015年に初めて米国を超えた世界一のゲーム市場となった。市場シェア率が高まり、ゲーム会社の規模も大きくなる中で中国が世界ゲーム市場で成功を収めた例が増えていた。とりわけ抜きん出ているのがモバイルゲーム分野だ。
米市場調査会社センサータワーによると、今年1月の世界モバイルゲームパブリッシャー売上高ランキング上位100社のうち、中国企業が34社ランクインし、売上高の合計は23億3000万㌦で、100社の中で38・7%を占める。
上海のゲーム開発会社miHoYoが開発し、20年9月にリリースされたオープンワールド型RPG『原神』は近年の世界ゲーム市場で最も成功した中国ゲームの一つだ。データによると、21~23年に『原神』は中国モバイルゲームの海外売上高ランキングで3年連続でトップだった。
『原神』のストーリーは七つの「国」が背景となり、それぞれの「国」には現実世界のさまざまな地域の文化的要素と文明的記号が溶け合っている。
「ゲームの中では、中華文化を題材にした『璃月』のほかに、日本をモチーフにした国や他の異国情緒あふれる国々が出てきて、さまざまな風景やストーリーを楽しめる」と日本のプレイヤーはそのコメントとともにApp Storeで『原神』に最高の星5評価を下していた。
「『原神』はその多彩なコンテンツが世界中の異なる文化的背景を持つプレイヤーをリリース当初から引き付けています。『原神』が世界市場で目を見張るような成果を上げられたことが、『各美其美、美美与共』(それぞれの良さを生かして素晴らしさを共有する)という理念を分かりやすく証明しています」とmiHoYoグローバル事業開発ディレクターの凌妤さんは語る。
中国ゲームは海外に進出する中で、題材、シナリオ、美術、音楽などで中華文化との結合を追求しながらも、作品のローカライズも重視し、海外市場で継続して運営できるよう努めている。
上海のリリスゲームズが開発した放置型RPG『AFKアリーナ』は「西洋のファンタジー」と「東洋のキャラクター」を組み合わせたゲームで、米国でリリースされてから8カ月で月3000万㌦の売上を達成した。上海の沐瞳が2016年にリリースしたチームバトルゲーム『モバイルレジェンド: Bang Bang』は、さまざまな市場を対象に、現地の文化に合ったヒーローを生み出している。例えば、インドネシアからは現地の神話に出てくる護法神ガトートカチャが、フィリピンからは侵略者に抵抗した民族的英雄のラプラプというキャラが生まれた。このような「グローバルフレームワーク+ローカルカスタマイズ」モデルは、中国ゲーム企業が海外の細分化された市場で成功する武器となった。