海南自由貿易港 「封関運営」によるハイレベルな開放
李家祺=文 段巍=写真
2025年12月18日、海南自由貿易港(以下、海南自貿港)で海南島全体を関税ゼロにする「封関運営」が正式にスタートし、同貿易港の建設は要となる一歩を踏み出した。
「封関運営」とは一体何を意味するのか? 海南自貿港の開放性はどのような分野に現れているのか? 投資家の権益をどのようにしっかりと保護しているのか? こうした広く関心を寄せられている問いについて、本誌記者は海南自貿港を訪れ、「封関運営」開始後の現地の状況を取材した。加えて、今回は馮飛海南省党委員会書記の単独インタビューおよび于運全中国外文局副局長による踏み込んだ評論を掲載し、政策設計や制度革新、グローバルな視点といった多角的な側面から、この重要な開放措置が持つ現実的意義と長期的影響を読み解く。

「封関」は封鎖ではない
海南自貿港の建設は、ハイレベルな対外開放のさらなる推進という中国の国家戦略を代表するプロジェクトの一つである。
17年、習近平総書記は中国共産党第19回全国代表大会(党大会、19大)で自由貿易港の模索と建設を明確に提起した。
18年4月、習総書記は党中央が海南省による中国の特色ある自由貿易港建設の段階的模索と着実な推進を支持していると宣言した。
20年6月、「海南自由貿易港建設総体方案」(以下、「方案」)が正式に発表された。その後、5年余りを経て、海南自貿港は実践の中で不断に整備が進められ、日増しに条件が整っていき、このたび「封関運営」の開始という新たな段階に入った。
「封関運営」は海南島全域を税関監督・管理特殊地域とし、「『一線』開放、『二線』管理、島内自由」を基本的な特徴とする新たなタイプの管理制度である。
「一線」開放とは、海南自貿港と域外の他の国・地域との間の出入国(境)管理を最大限自由化・円滑化することである。
「二線」管理とは、海南自貿港と中国大陸部の間を「二線」として、「一線」における輸入関税の免税もしくは貿易管理措置の緩和が適用される貨物などが海南自貿港から中国大陸部に運ばれる際、原則として輸入規定に基づいて関連手続きを行い、規定通りに徴税することをいう。
「島内自由」とは、海南自貿港内では、各種要素がより自由に流通できることを指す。
「封関運営」開始後、海南省の「ゼロ関税」適用商品は1900品目から約6600品目にまで拡大し、品目全体のおよそ74%を占めており、主に化学工業の原料、機械部品、電子部品、紡績・繊維などの生産手段に集中している。
それと同時に、「加工付加価値免税政策」が海南自貿港全域で実施された。これにより、奨励産業および企業が生産したもののうち、輸入原料・部品を含み、なおかつ海南自貿港で加工された商品の付加価値が30%以上に達した場合、「二線」を通じての中国大陸部への移動時に輸入関税が免除される。
現在、海南省の奨励産業リストには中国でもとりわけ多い1100以上の産業項目が含まれており、その中身はバイオ医薬や海上風力発電、新エネルギー車などの戦略的新興産業に加え、高水準な農地の建設、商用ロケットの打ち上げ、国際教育といった自貿港の重点発展分野をカバーしている。
税収政策の面では、「二つの15%」制度による企業や人材の誘致効果がとりわけ際立っている。条件に合致する企業は企業所得税の軽減税率である15%を享受でき、条件に合致する人材は個人所得税の実質負担分のうち15%を超える部分が免税となる。中国大陸部の場合、15%の企業所得税が適用されるのは一部のハイテク企業などに限られる。
また、海南自貿港は外資に対しても同様に、開放を拡大し続ける明確なシグナルを発信している。昨年8月、「海南自由貿易港外商投資条例」が正式に施行され、それに基づき、海南自貿港に適した外商投資参入ネガティブリストの実施が明確化され、バイオテクノロジー、全額外資出資による病院や金融機関、海外教育機関による単独での学校運営などの分野で開放拡大に関する試行政策が率先して行われ、外商投資の公平な待遇などが全面的に保障される。
まさしく「方案」が計画したように、「封関運営」には25年に政策・制度体系を基本的に確立するとともに海南島全体で「封関運営」を開始し、35年までに運営モデルを成熟させ、最終的に今世紀半ばまでに強い国際的影響力を持つハイレベルな自貿港を完成させるという戦略的に要となる3段階の節目がある。「封関運営」とは海南自貿港の完成を意味するのではなく、よりハイレベルな開放に向けて現在進行形で行われている取り組みなのである。
企業に直接届く政策の恩恵
儋州市洋浦経済開発区にある中熬湯業(海南)科技有限公司(以下、中熬湯業)は骨だしスープの素の研究開発や生産、サービスを主な業務内容とするハイテク企業であり、「封関運営」開始直前の昨年11月28日、同社の第1期プロジェクトが洋浦保税港区で正式に稼働した。
中熬湯業にとって、輸入における「ゼロ関税」政策はコスト削減と効率向上の実際の数字にダイレクトにつながっている。「原料骨の輸入1㌧当たり12%の関税と9%の付加価値税を節約できます」と語る于連富董事長によると、同社が1年間に輸入する原料骨の総額は10億元を上回り、この政策によって1億元以上のコストを削減できる見込みだという。
それと同時に、「加工付加価値免税政策」は、企業に国内市場を開拓する底力をもたらしている。
洋浦経済開発区にある中国石化海南煉油化工有限公司(以下、海南煉化)の倉庫エリアを訪れると、6台のフォークリフトが忙しく走り回り、化学工業の基礎原料である690㌧のポリプロピレンを25台の大型トラックに積み込んでいた。この原材料はその後、11㌔離れた儋州偉達化工有限公司(以下、偉達化工)の工場に運ばれ、伸線や押出成形などの工程を経て袋状の包材となり、加工による付加価値増加率は累計で30%以上に達する。
説明によれば、偉達化工は同政策により生産コストを1㌧当たり400元削減し、製品の競争力を高めることができたという。
「この政策により、産業チェーンの川上と川下に位置するより多くの企業の協力強化が進み、産業チェーンの延伸と化学工業製品のハイエンド化発展が力強く促進されています」と語るのは、海南煉化の計画・経営部で副経理を務める宋鵬俊氏だ。

また、取材を通じて感じられたのは、海南自貿港は国内と国際的な二つの循環が交わる要所となっており、広範な発展の余地を持っているということだ。
中国中車国際車両産業(海南)有限公司(以下、中車公司)はこの枠組みに新たに加わった企業である。同社は中国通用技術集団中国車両輸出入公司が海口総合保税区で立ち上げた全額出資子会社であり、昨年5月に海口総合保税区で登録・設立された。
「封関運営」開始後、海南自貿港では輸入製品を修理して再輸出する保税修理の対象製品が新たに38種類増え、この政策的サポートの下、中車公司は排気量の大きい自動車用ディーゼルエンジンの修理の受注に成功している。
「自貿港の『一線』開放によるゼロ関税政策の恩恵を受け、修理で必要な輸入部品の関税、輸入時の付加価値税、消費税が全て免除となりました。また一方で、総合保税区では中国大陸部から取り寄せた部品の税金還付が受けられるため、修理コストがとても大きく下がりました」と説明してくれたのは、同社で市場総監を務める張紫瑞氏だ。その他、海南自貿港の一連の自由化・円滑化措置に基づき、輸出入で必要なさまざまな申告も非常に少なくなり、マンパワーと時間のコストが大幅に節約された。
張氏は、「『封関運営』開始後、毎週のように海外の顧客が視察に訪れます」と語る。昨年末、海南省へのビザなし渡航対象国は86カ国にまで拡大し、中国大陸部の他の地域に比べて11カ国多く、企業と世界の結び付きがより緊密になった。「現在、当社の多くの顧客や協力パートナーは思い立ったらすぐに海南省を訪れることができます」(張氏)。
開放を支える法治
優れた政策がますます増える中、その安定性はどのように保たれ、投資家の権益はいかに保障されているのか。これらは中国国内外の企業があまねく関心を抱く問題である。
21年6月、全国人民代表大会(全人代)常務委員会は「中華人民共和国海南自貿港法」を採択し、その日に公布、施行された。同法は「方案」における自貿港建設関連の政策を法的にしっかりと裏打ちし、法的強制力、権威性、安定性を有し、企業による海南自貿港での投資や踏み込んだ事業拡大に安心をもたらした。
その後、海南省は地方の関連立法業務を急速に進めた。データによると、海南省は昨年12月18日までに地方性法規および法規的決定を累計160本余り打ち出し、そのうち自貿港に関連する法規は55本を占めた。これらの法規は貿易・投資・越境資金・人員・運輸の自由で円滑な流れ、データの安全で秩序ある流動に焦点を当てたものであり、自貿港建設の順調な進展をしっかりと支えている。
商品や資本などの要素の流動性がいっそう高まるに伴い、国際的なビジネス紛争の数や種類も増えていく可能性がある。海南省は多元的なビジネス紛争解決メカニズムの構築を積極的に模索し、国際的なビジネス紛争の仲裁、調停といったさまざまな非訴訟型の紛争解決手段を提供しており、これはシンガポールや香港特別行政区などの有名な自貿港で一般的に用いられている手法である。
企業の投資への自信をさらに強化すべく、海南省は企業や資本の誘致、企業サービスの面でも十分な取り組みを行っている。
「封関運営」開始当日、フォーチュン・グローバル500に名を連ねる企業であるシーメンス・エナジーは洋浦経済開発区でガスタービン組み立て拠点およびサービスセンターの起工式を行うとともに、シーメンス・エナジー(海南)有限公司を立ち上げた。これは同社が中国で設立した初のガスタービン組み立て拠点およびサービスセンターだ。
「このプロジェクトは私たち企業誘致チームがおよそ2年にわたりフォローアップし、サポートしてきました」と洋浦国際投資コンサルティング有限公司エネルギー発展部の副総経理である李鋭氏は当時を振り返って語った。
折衝から実現までの間に、投資プロジェクトは信用確立と効果・利益の評価において繰り返し論証することが求められる。当初、シーメンス・エナジーの関心の要はサプライチェーンにあった。すなわち、海南省はハイエンド製造業の基礎が相対的に弱く、1基のガスタービンの組み立てで1万点以上の部品を調達する上で、その大半を海南島外に依存する場合、物流コストがプロジェクトの実現可能性に直接影響するのではないかという懸念である。
これに対し、企業誘致チームは全ての部品の輸出入統計品目番号と調達元を一つ一つ整理し、海外からの調達が必要な部品と調達の現地化が可能なものを明確にし、物流の専門家と連携して洋浦港を経由するグローバルな集散プランを企業のニーズに合わせてまとめるとともに、シーメンスの中国における他の生産拠点との比較推計を行った。その結果、海南自貿港の「ゼロ関税」政策および洋浦の地理的優位性はサプライチェーン全体のコストを抑えるだけでなく、際立った競争力を備えていることが分かった。
まさしく洋浦経済開発区投資促進局の陳琦副局長が、「私たちのサービスによって、より多くの外資が海南省の優れたビジネス環境を目の当たりにし、いっそう多くの外資が海南省を選んでくれるよう願っています」と語ったように、専門的で細やかなサービスにより、自貿港の制度的優位性は企業が実感でき、十分に見込める競争の優位性となっているのである。
中国の生産側と中南米地域の需要側を結ぶ越境B2Bサプライチェーンプラットフォーム「億盟購(Emonk Online)」は海口市で事業を始めて3年近くになる。同社のCOO(最高執行責任者)であるホアン・イグナシオ・バレンスエラ氏は、海南省のビジネス環境と政府によるサービスについての深い印象を次のように語った。「現地の関連部門はしばしば私たちを企業参加活動に招き、自貿港に関する政策を進んで解説してくれます。それに加えて、ビザや居住、保険、医療などの生活上の問題についても、海南自貿港の公式ホームページを通じて明確な案内が得られます。中国語と英語でさまざまな情報がよくまとまっていて、外国籍の人々にとって非常に参考にしやすいと感じます」
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