教育が老後に彩りと幸せを
李家祺=文
人々の生活水準が高まるにつれ、高齢者の精神的・文化的生活や自己実現に対する欲求も日増しに高まっている。近年、中国の高齢者教育の供給は拡大と進化を続けており、生涯学習に励む「シルバー世代」が増えた。彼らは高齢者大学で趣味を養い、スキルを身に付け、学校が組織するボランティアで自身の余力を社会に貢献し、充実感とぬくもりあふれる老後を過ごしている。
老いてもなお積極的
王麗英さん(70)は上海市楊浦区の高齢者大学に通う熱心な受講生だ。2024年春に王さんは、若い頃の趣味を再開するために朗読の講座を申し込んだ。しかしその試みが、彼女の老後の「新たな世界の扉」を開けることになった。
講師の指導で王さんは朗読のコツを身に付けていった。25年の春学期で、朗読、現代舞踊、ラテンダンスの長期講座を申し込んだ。同年秋学期には、八段錦(健康気功法の一種)、古典舞踊、ボディバレエと二つの歌唱講座の五つの短期講座が彼女の時間割に加わった。さらに高齢者大学の受講者代表として、さまざまな社会貢献活動にも積極的に参加し、何度も舞台に上がって成果を披露した。「高齢者大学のおかげで日常に彩りがあふれ、今では毎日がとても充実しています」と王さん。

王さんの満ち足りていく勉強の日々は、中国高齢者教育事業の絶え間ない発展の生き生きとした縮図だ。1980年代初頭、中国初の高齢者大学である山東高齢者大学が設立されると、全国で高齢者大学が次々と誕生した。これらの大学は公益と普遍的恩恵を基本方針とし、多数の講座を実費で受けられるため、高齢者にとって敷居が低い学習環境を整備している。
当初は大学数の地域間の不均衡があったり、カリキュラムの単一性や時代遅れといった問題があった。近年は高齢化進行の加速と人々の生活水準の高まりにつれ、勉強で時代に追い付こうとする高齢者の需要が日増しに高まり、各地の高齢者大学もこの流れに乗って募集規模の拡大やカリキュラムの充実化を図り、高齢者の多様な学習ニーズに応えるよう力を入れている。
各地の高齢者大学の時間割を見てみると、舞踊や声楽からコーヒーのテイスティングや入れ方、AI応用、ショート動画撮影と編集、トラベル英会話などさまざまな内容が目を引く。関連データによると、スマート系、知識系、スキル系のカリキュラムが高齢者の人気をますます集め、目下中国の50%以上の高齢者大学が情報技術系の講座を開設し、40%以上が医学、文学系の講座を開設している。
「出発地を選び、このフィルターボタンを押せば、価格順にチケットを絞り込めます」。山西省太原高齢者開放大学の教室で李さん(75)が講師の楊暁琴さんからスマホのチケット購入を学んでいる。
「これまではスマホの使い方を聞いてもちんぷんかんぷんでしたが、先生から手取り足取り教わったおかげで、今ではモーメンツに投稿できるだけじゃなく、ショート動画の編集までできるようになりました」と、ショート動画編集講座を受け終わったばかりの翁さん(63)がスマホを操作すると、画面には武夷山旅行で撮影した真夏の絶景が表示され、明快なBGMまで付いていた。
ある受講生はかつて、その年で新しい技術を学んでどうするのかと家族から理解を得られなかった。それでも彼は時代に取り残されることを良しとせず、若者の助けを借り続けるつもりもなかった。「高齢者も新しいものを理解し、新しいスキルを学ぼうとすることで、社会の発展に追い付き、自信をつけるのです」という彼の言葉は楊さんの心に今も残っている。
データによれば、高齢者は「老いて養われる」のに満足せず、「老いても楽しむ」と「老いてもことをなす」を求めるようになった。高齢者大学はこの追求のために重要な場所を提供している。
楊さんの呼び掛けで、太原高齢者開放大学スマホ応用講座の多くの受講生は、学校が組織するシルバーボランティアに加入し、オンライン診療予約や配車手続き、出前注文など実用スキルを身近な高齢者に教えている。「スマホの使い方を学んだだけではなく、十数人の近隣住人にも教えました。退職後の人生に価値を見いだせた気がします」とシルバーボランティアの呉さん(64)は笑った。
農村にリーチする「大学」
「これまでは合唱を学びたくとも場所がとても遠かったですが、今ならコミュニティー内で先生に学ぶことができます」。天津市河北区望海楼街道昆雲里コミュニティーの活動室で、王さん(68)が「昆雲隣里学院」の受講生たちと新曲のリハーサルに勤しんでいる。
高齢者の学習ニーズが高まり続ける中、中国各地では高齢者教育の取り組みに力を入れ続けており、多くの地区で「省—市—県—鎮(街道)—村(コミュニティー)」の5段階教育体系が構築され、高齢者教育のサービスが都市・農村部の末端にまで行き渡るようになった。
真夏の田園に稲穂がたなびく頃、四川省眉山市東坡区永豊村の農家の庭先で、金融知識と金融詐欺防止をテーマとする授業が開かれていた。40人余りの「学生」はみな村の高齢者だ。
昨年9月に「大学小村」高齢者教育プロジェクトが永豊村で実施された。プロジェクトには四川工商学院の講師陣を活用し、授業の場を農村に移転した。
これまで都市と農村部の距離は永豊村の高齢者が新しい知識を得るのを阻害していた。ダンス好きな章素桃さんは都市部に高齢者大学ができると聞いて喜び勇んで申し込みに行ったが、結局気後れして戻ってきたことがある。「村から都市部まで十数㌔もあり、毎回往復するだけでも大変ですから」と章さんは振り返る。
「場所を固定した教育モデルから脱却し、高齢者大学を村に持ってこられないか?」。現地調査をした四川工商学院高齢者大学責任者の王玉龍さんの頭にこんな考えがよぎった。
学校は村内の既存資源を最大限に活用した。郷土史館や農村図書館は教室となり、田園は特別な実践の場所となる。講師たちは太極拳、絞り染め、中医学薬膳などのカリキュラムを次々に開設し、村の高齢者たちから歓迎された。
「村で勉強ができるばかりか、学生として大学にも行けるんです」と章さん。四川工商学院は高齢者受講生向けにキャンパスを開放し、書画、パン作り、茶道など専用設備が必要なカリキュラムを構内に開設し、受講生をまとめて送迎している。講義棟は高齢者向けに改造され、バリアフリー設備(10)や救急医療体制が整えられた。
「昔は用意されたものを学ぶだけでしたが、今では学びたいものを自由に学べるようになりました」と王さん。固定した時間割のほか、10人以上の高齢者からの要望があれば、大学側は新たな講座を計画し、最短1カ月で開講できる。
スキマ時間にオンライン授業
湖北省荆門市に住む唐文傑さん(59)は昼休みが終わるとパソコンを開いて全国高齢者教育公共サービスプラットフォームにログインした。「私はここの『活発な受講生』なんです」。画面右下に表示されている唐さんの勉強時間は、22万分を超えていた。
21年に発表された「中共中央・国務院の新時代における高齢者事業の強化に関する意見」には、高齢者教育資源の供給拡大と、全国高齢者教育資源共有・公共サービスプラットフォームの構築が盛り込まれた。23年に国家高齢者大学が正式に設立されると、同プラットフォームも並行してリリースされた。ラジオでこのニュースを聞いた唐さんは直ちにアクセスして申し込んだ。
それからは毎日数時間の勉強が唐さんの日課となり、数年で100以上のオンライン授業を受講した。「ここは講座が豊富で、何人もの有名な学者の授業を聞けます。視聴も便利で、繰り返すこともできますし、時間的にも融通が効き、疲れたら一時停止をして一旦休憩することもできます」
唐さんのような「オンライン受講生」は多い。国家高齢者大学副学長の范賢睿氏は次のように語る。「私たちは良質なデジタル資源の共有を推し進めることによって、対面式講座の供給不足や資源分配の不均衡などの問題を打開し、高齢者教育が一般に普及するような発展を促進したいと考えています。特に対面式では席が取れないような人気の授業をいくつも開講しました。質の高いカリキュラムをもっと多くの高齢者に届けられるようにしています」
内容が絶えず充実し、形式も刷新を続けている。受講生はプラットフォームにある膨大な資源を視聴できるばかりか、学期ごとに新設される講座を「オンラインフォロー」することが可能だ。例えば毎学期開講される「クラウド講座」シリーズは、学期ごとに5科目を選べ、毎週1回更新されると受講生に通知される。「楽学ライブ配信」授業では、講師と生徒がコメント欄で直接やり取りすることが可能だ。今年3月まで、同プラットフォームは延べ79万3000点、総再生時間729万5000分の無料講座資源が集約され、登録ユーザー数は1237万人を超えている。
高齢の受講生にとって、オンライン学習は一定のデジタルリテラシーが求められる。いかにして高齢者が見やすく使いやすいものにするのか、プラットフォームは高齢者向けのユーザビリティ改善に力を入れている。バリアフリーモードによる文字サイズの調整、音声読み上げなどの機能に対応し、デジタル・スマート分野の高齢者用補助講座も特別に設置、さらに「小葉子」という学習サポートAIも導入している。
「『国家高齢者大学』のウイーチャットミニプログラムもお気に入りに登録しているから、タップすればすぐに勉強が始められます。画面下にあるイチョウの葉に似た金色の『小葉子』をタップすれば、AIアシスタントと会話ができ、おすすめの講座を教えてくれます」と唐さんはスマホで実演した。
オンラインと対面式が協調して発展する高齢者教育は、高齢者の精神的・文化的生活を豊かにしているばかりか、シルバー世代が自己実現を追求し、時代の発展に溶け込むための広範なプラットフォームを築き上げ、より多くの高齢者が学習の中で喜びを見いだし、可能性を発揮し、よりぬくもりと質感がある幸福な老後を手にしている。
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