山河を育み 恵み分かち合う
段非平=文
中国は、世界で最も多く、かつ最も速く緑を増やしている国として、毎年数千万ムー(1ムーは約0・067㌶)規模の造林によって、荒れた山々を緑で覆い、谷間に豊かな森を育てている。この壮大な緑化の取り組みは、かつて過度な開墾や伐採によって生じた生態環境の傷跡を癒やしただけでなく、清らかな水と青い山々の間に、人と自然が共生しながら豊かになる新たな発展の道を切り開き、世界各国にも参考となる実践モデルを提供している。
無から有へ、有から優へ
中国北部における砂漠化防止と人工造林の代表的なプロジェクトとして、河北省と内蒙古自治区の境に位置するサイハンバ(塞罕壩)機械林場は、世界を驚かせる生態学的な奇跡を生み出した。「砂が広がり人が退く」という厳しい生態環境に直面したサイハンバの林業従事者らは、何世代にもわたって荒れ地に100万ムーにも及ぶ人工林を育て上げ、京津冀(北京・天津・河北)地域を守る巨大な「緑の防壁」を築き上げた。
緑化が進む一方、取り組むべき課題も一段と困難になっていった。2012年から、サイハンバの林業従事者らは、これまで足を踏み入れたことのない石質の山肌で造林事業に乗り出した。これらの地域は土壌が薄く石が一面に広がり、雨水を貯めることも養分を保持することもできないため、世界的にも「造林不可能地帯」とされている場所だ。緑を荒れ山に根付かせるために、林場の職員たちは何度も試行を重ね、固く締まった土壌を少しずつ改良し、一株一株の苗木を丁寧に育ててきた。
「石だらけの斜面は水が貯まらないので、私たちは苗木に『布団』をかけたり、ピンポイントで水を与えたりして、1年を通して一本一本の苗木をきめ細かく管理しています。この荒れ山に本当に命を吹き込みたいからです」とサイハンバで30年以上働いている森林保護員の王福軍さんは語った。長年にわたる粘り強い取り組みの結果、サイハンバは累計10万6000ムーの石質の荒れ地が造林され、かつて草一本生えなかった石の山は全て緑に覆われ、苗木の活着率も98.9%以上を保っている。
こうしたたゆまぬ努力は、世界からも注目と敬意を集めた。第3回国連環境総会において、サイハンバ機械林場の建設者たちは、国連環境計画(UNEP)から「地球大賞」を授与された。UNEP事務局長のエリック・ソルヘイム氏は「彼らが築き上げた『緑の長城』は、荒廃した環境が回復し得ることを証明しました。これはサイハンバの人々の偉業であると同時に、世界各地への励ましでもあります」と評価した。
現在のサイハンバでは、115万1000ムーにも及ぶ森林が連なり、森林被覆率は82%に達し、毎年2億8400万立方㍍の水を蓄え、86万300㌧の二酸化炭素を固定している。「サイハンバの変貌は、新時代における生態修復の典型的な縮図です。これは単なる人工造林ではなく、完全で持続可能な森林生態系を構築したと言えます。この100万ムーの森林は、すでに華北地域で最大級の天然の炭素貯蔵庫の一つとなりました。かつての荒野は、いまや北京・天津・河北を守る『緑の肺』と『緑の宝庫』へと生まれ変わったのです」と北京林業大学生態・自然保護学院の張志強教授は語る。
サイハンバから千里も離れた嶺南の地、広東省仏山市にある雲勇林場は「有から優へ」の物語が語り継がれている。ここにはかつて、スギやマツの単一樹種林が大規模に植えられ、木々は整然と並んでいたが、林床はむき出しの状態だった。「森は見た目が緑ですが、実際にはほとんど生命感がなかったのです。数種類のどこでも見掛ける小鳥以外、野生動物を見ることはまれで、ひとたび病害虫が発生すると、山林全体が一気に大きな被害を受けやすい状況でした」と、1990年代生まれの林業エンジニア・曽鴻文さんは振り返る。
変化が始まったのは2002年のことだった。雲勇林場は、それまでの木材生産を主とする商業林場から、環境保全を目的とする生態公益林へとかじを切った。「造林のモデルには、参考にできる教科書のようなものがありませんでした。何の木を、どのように植えるのかは、私たち自身で模索するしかなかったのです。しかし、私たちの目標ははっきりしています。単に木を植えるだけではなく、多層的で多様な生物が共生する健全な森林生態系を構築することなのです」と雲勇林場で20年も働いてきた副場長の盤李軍さんは語った。
林場は広東省林業科学院などの研究機関と連携し、「同じ土俵で競争」させる形で、これまでに134種類の広葉樹を導入した。環境に適応できるものは残し、生育の悪いものは自然に淘汰される。何度も選抜を重ねた結果、シマスギなど12種類が当地の酸性土壌に最も適した樹種として選ばれた。これにより、単一樹種林が抱える収益性の低さや生態系の脆弱性といった難題が効果的に解決された。
20年以上にわたるこの森林再生プロジェクトは、実り豊かな成果を遂げた。実施前と比べて、今の林場では森の単位面積当たりの成長量が60%以上増加し、生物多様性は平均で40%以上向上し、陸上植物による炭素固定量も40%以上増加した。赤外線カメラには、長い間見られなかったハクビシン、ハッカン、ベンガルヤマネコなどの野生動物が頻繁に写るようになり、かつては姿を消していた複数種の在来ランも、再び林内に現れるようになった。
「高さ40、50㌢の小さな苗木が天高く伸びた大木になるのを見るのは、自分の子どもが少しずつ成長していくのを見守るのと同じ気持ちです。林場がどんどん良くなっていくのが本当にうれしいです」と林場で36年間働く上級エンジニアの冼杆標さんは、胸高直径を測る器具を取り出し、手慣れた様子で幹に一巻きしながら語った。今の雲勇林場では、1万ムーを超える低効率林の生態改良が完了し、森林被覆率は98・36%に達し、林内の平均気温は市街地より3~5度低く、市民が自然に親しむ憩いの場となっている。単一樹種の林から生まれ変わったこの混交林も、南亜熱帯地域における森林生態の修復に、実行可能な道筋を示している。
森林がもたらす「恩恵」
長い間、中国の国土緑化の核心となる目標は、緑の面積を広げ、荒れた山や砂地を「まず緑にする」ことだった。新時代に入ってからは、中国は植樹の本数だけを重視するのではなく、森林の質により注目し、多様な価値を兼ね備えた森林づくりに全力で取り組んでいる。22年、習近平総書記は北京で植樹ボランティア活動に参加した際、森林を「水の貯蔵庫、富の貯蔵庫、食糧の貯蔵庫、炭素の貯蔵庫(『森林四庫』)」にたとえ、森林は生態的、経済的、社会的な利益を持続的に生み出す総合システムだと強調した。今では、森林は地域の生態環境を継続的に改善しているだけでなく、多様なグリーン産業を生み出し、生態上の優位性を有形の所得増加「ボーナス」へと着実に転換させている。
四川省叙永県水尾鎮の竹林の奥深くで、「鄔高林下栽培専門産業協同組合」責任者の鄔高蘭さんが木陰にしゃがみ込み、柔らかい腐植土を手でそっとかき分けると、白くて柔らかな菌糸が姿を現した。「林の下で菌を栽培すれば、肥料も水やりもいりません。『森が菌を育て、菌が森を肥やす』という天然の循環です。昔は竹を刈って原材料として売っていましたが、利益はごくわずかでした。林の下で菌を育てるようになってから、ようやく森の本当の恵みを味わえるようになったのです」

鄔さんが言う「恵み」とは、まさに「森林四庫」という理念を生き生きと体現したものだ。根が発達している竹林は、山全体の水源を蓄える自然の「見えない水がめ」だ。竹林は毎年大量の二酸化炭素を吸収し、安定して炭素を固定する「天然の炭素の貯蔵庫」となる。林床のキノコ類は林木と調和して共生し、樹木を守ると同時に高品質な農産物を生み出し、「食糧の貯蔵庫」を豊かにする。さらに、キノコの加工販売によって得られる収入が、人々の「富の貯蔵庫」を膨らませているのだ。
「『林菌共生』は単純なように見えますが、「四庫」間の転換ルートを切り開きました。木を切らなくても豊かになれる、これこそが森林の多機能経営の価値です」と四川省林業科学院専門家の李丕軍氏は評価した。
「林菌共生」のような実践が、中国の多くの林業地域で展開されている。昨年、中国のフォレストフードの年間生産量は2億㌧を突破し、穀物・野菜に次ぐ第3の重要農産物となった。中国の2800以上の県のうち、2400を超える県で経済林が栽培されており、経済林の年間産出額は2兆元を超え、数千万人の林業従事者の収入を増やした。
四川の「林菌共生」が「四庫」理念の生きた実践だとすれば、福建省南平市の「森林エコバンク」は、「四庫」が持つ多様な価値を引き出す制度面でのイノベーションと言える。
18年、南平市は全国に先駆けて「森林エコバンク」の試行を始めた。商業銀行のモデルを参考にして、個々の農家が保有する細分化された森林資源をまとめて預かり、統合・最適化した上で、国有の運営会社が一体的に経営管理を行う仕組みだ。
「わが家の50ムーの竹林は、これまでは年間でせいぜい数千元しか稼げませんでした。林地を『森林エコバンク』に預け入れてからは、毎年の最低保証配当と成果配分が加わり、収入は何倍にも増えました」と南平市順昌県の林業従事者・呉福生さんは話す。さらに呉さんにとって思いがけなかったのは、林地をうまく経営すれば、カーボンシンクも売れることだった。「バンク」は統合した質の高い林地についてカーボンクレジットのプロジェクト開発を行い、22年には南平市が中国初の竹林カーボンクレジット取引を実現し、昨年末までの累計カーボンクレジット取引量は100万㌧を超え、取引額は6000万元を上回った。
「林菌共生」であれ「森林エコバンク」であれ、中国は数多くの実践を通じて、「緑の山河は金山銀山(美しい自然こそ最大の財産)」ということを証明してきた。
中国の経験、世界へ
土地の砂漠化や森林の退行は、今もなお多くの国家が抱える共通課題だ。近年、中国の造林技術や経験は海外へも広がり、各国の生態系修復に活用されている。
昨年8月、中国とクウェートが協力して実施する造林プロジェクトが、クウェート北西部の砂漠で正式に始動した。「見渡す限り一面の黄砂で、生きている植物をほとんど見つけることができませんでした。現地の人たちはみな、ここで木を植えるのは天に昇るより難しいと言っていました」と新疆塔建三五九建工有限責任公司のプロジェクトマネジャー王俏雷さんは初めて到着したときの情景を振り返る。
中国のチームは、国内での造林経験を土台にしつつ、現地の砂漠の条件に合わせて最適化と調整を行った。彼らはタリム大学と連携し、砂地の土壌改良により、かつて草一本も生えなかった砂漠に、苗木が根を張れる生育環境を徐々に整えてきた。さらに現地の気候の特徴を踏まえ、砂漠クコなどおよそ8万本の、乾燥に強く風砂に耐える苗木を選び、疎植や列をずらして植える方法を採用して樹木同士の水分競合を減らし、スマートかんがいシステムを整備することで、貴重な水資源を無駄なく有効に活用できるようにした。
クウェート側の代表でプロジェクトのチーフエンジニアでもあるサディグ・ジャシム・アルサイゴさんは、「正直に言うと、最初はあまり期待していませんでした。これまであまりにも多くの造林の失敗例を見てきましたから」と振り返った。しかし数カ月後、点滴かんがいによって潤った第1陣の苗木が新芽を伸ばすのを目にしたとき、彼の考えは一変した。
今年5月に行った現地統計では、プロジェクトで最初に植え付けた苗木の活着率が95%を突破した。「中国の先進的な造林技術は、砂漠に緑をもたらしただけでなく、私たちに希望を見せてくれました」と風にしなやかに揺れる苗木のそばに立ちながら、サディグさんは感慨深げに語った。750ムー規模の造林試験区を二つ整備したほか、このプロジェクトは、クウェートの現地技術者 20人余りと中国側スタッフによる定期的な交流・研修も実施し、現地に「持ち去ることのできない」造林チームを育成している。
クウェート以外にも、中国の造林経験は世界の多くの国・地域で活用されている。モンゴルでは、中国の専門家が現地の「10億本植林計画」に参加し、耐乾性苗木の育成技術を普及させている。カンボジアでは、中国側の技術チームが単一林地の改良方法を伝え、多様な樹種から成り、長期的に持続可能な混交林のモデル拠点を築いた。さらに毎年、ガーナやエチオピア、エジプトなどの国々の林業従事者が中国を訪れ、サイハンバや寧夏回族自治区の沙坡頭に足を運んで造林と砂漠化防止の経験を現地で学んでいる。一本の苗木から一面の森林へ、技術共有から人材の共同育成へと、国境を越えた緑化交流は地球の生態環境を共に守る力となっている。
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