草原を再生し収入増加促進

2026-09-23 15:01:00

李家祺=文 

中国は草原資源大国だ。2012年から中国は生態保護修復プロジェクトを大規模に実施し、草原の生態系は回復し続けている。データによると、「第14次五カ年計画」期間(2021~25年)に中国は国土緑化面積が5億4900万ムー、退行草原の年間修復面積が4600万ムー以上になり、草原の総合植生被覆率が50%以上を維持し、健康および準健康状態の草原が全体の70%を超える27億ムーに達した。 

このデータの裏には、科学的な緑化による生態系基盤の構築から始まり、生態価値の向上が人々の収入増加をもたらすという一貫したガバナンスチェーンがある。人と草原の共存繁栄の緑の絵巻物が今まさに広大な大地に徐々に広がっている。 

黒山を青く染める 

夕暮れ、青海省ゴロクチベット(蔵)族自治州タルラク県ジメイ鎮を夕闇が覆い、チベット風の民家からは夕げの煙が立ち上り、遠くのタルラク川は金色に染まる。 

「今日の巡視は終わりです。ホラ、川辺で鳥たちが楽しそうに飛び回っていますよ」と、タルラク県林業草原所のスニムツォ所長は歩きながら語った。ズボンの裾には草の切れ端、靴には泥も付いている。「以前ここは一面が黒土の斜面で、至る所にネズミの穴があり、強風が吹けば砂塵が舞い上がり、今のような風景とは大違いでした」 

平均標高4200のタルラク県は黄河源流の重要な水源涵養地だ。20世紀末、過度な放牧や自然災害など複合的な影響を受け、現地の草原は著しく退行し、黒褐色のはげ山のようなむき出しの土地は「黒土」と呼ばれ、牧畜民の家畜のエサがなくなるどころか、三江源地域(長江、黄河、瀾滄江の源流域)の生態系の安全を深刻に脅かしていた。 

荒廃した黒土をよみがえらせるには、草を植えて緑化するのが一番だ。しかし青蔵高原で草原を修復するのは、草の種を埋めて済む単純な話ではない。「外来の草種はここの厳寒で干ばつの環境に耐えられないため、適応した優良な種を選び育てるのに、数年から場合によっては数十年かかることもあります」と青海大学の省部共建三江源生態高原農牧業国家重点実験室の趙新全主任は語る。05年からチームは青海省の現地草種企業と協力し、野外採取と選抜繁殖を繰り返し、ついに寒さや乾燥に強く、活着率の高い草種の育成に成功した。 

種の問題が解決しても、植え方の課題がまだ残っていた。「退行の程度が異なる草原では、異なる方法を用いなければいけません」とタルラク県農牧水利科学技術局草原所のロウサイ所長は語る。植生被覆率が比較的高い軽度退行地域では囲い込みによる保護と自然回復が主とされ、重度退行地域では人工追播や機械的改良による積極的な介入が必要となる。 

草を植えるのは簡単な仕事ではない。一般的な草地の耕運深度は18でいいが、黒土は25まで耕さなければならない。表層の土壌の養分がとっくに枯れ、保肥力も弱いため、土壌を深く耕すことで肥沃度を活性化させ、科学的な追肥と組み合わせることで牧草の成長基盤を整えられるようになるからだ。草種の播種深度も10前後に抑えることが大切だった。これにより牧草の出芽が遅れる代わりに根がさらに深く張り、草地の生育がより安定し持続するようになる。 

材料の革新は幼苗の活着率向上にも貢献している。ロウサイ所長は緑色のフィルムを説明した。「これは不織布です。これがあれば土壌の保温保湿ができ、幼苗が安心して根付きます。草が成長すれば、不織布は徐々に風化していきます」。この一見シンプルな技術によって黒土の牧草の活着率は当初の30%から80%以上にまで向上した。 

データによれば、「十四五」期間中にタルラク県は累計3億7000万元を生態に投資し、黒土生態修復プロジェクトにより340万ムーが対象になった。昨年のモニタリングデータによれば、20年と比べてタルラク県の草原総合植生被覆率は58%から5913%になり、天然草地の草の1ムー当たり生産量が115から21327に増え、かつては草もまばらだった黒土は徐々に自然豊かな高原の牧場に戻りつつある。 

牧畜民の意識を刷新 

真っ青な空の下、新疆ウイグル自治区アルタイ地区ブルチン県のティエルシャハン生態牧場には広大な草地が果てしなく広がっている。20年以上前は考えられない光景だ。伝統的な牧畜業への長期にわたる過度な依存により、過剰放牧が草地の退行、植生被覆率の下落、砂漠化を引き起こし、「天任せの畜産」という考えの影響によって、家畜の品種も徐々に退化していった。 

草地の退行と収入増加の困難という二重の苦境に遭い、ブルチン県は草地と家畜のバランス維持、放牧禁止と家畜削減、草原生態保護補助奨励など多くの措置を講じ、草地の許容能力(7)試算基準に基づき過剰な羊の頭数を減らし、草地の負担を抜本的に減らした。 

この決定に対し、伝統的な放牧に慣れた牧畜民たちは当初納得しなかったとブルチン県農業農村局のダレンダヘスタン副局長は振り返る。「草地を基準に家畜の頭数を決めるなら、余った家畜はどうする」「草地と家畜のバランスを保てば家畜を減らすしかなく、家畜を減らせば収入も減る」という意見が相次いだ。 

牧畜民たちの意識をどうやって変えるか? まず必要になったのが、牧畜民たちに家畜削減後の「収入増加計算式」を見せることだった。 

「家畜が多いほど冬に飼料代で大きな出費がかかる。それに品種改良しなければ良い値段で売れない。一年でどれだけ儲けられる?」。22年4月のある日、ウイモク鎮クイクバイ村で幹部が村民総会を開き、過剰放牧の害について認識を促した。 

村民のザハンベクハラオバイさんは150頭の羊を飼っていたが、夫婦二人で一年中羊の世話に追われていた。それでも羊の肉付きが良くなく、市場価格の変動もあって、年収は多いといえなかった。そこで自分の草地の許容能力に基づき、羊を80頭まで減らす決断をした。その結果、妻一人で羊の世話ができるようになり、彼は町へ働きに出た。年末に収入を計算してみたところ、家族の総収入は以前よりかなり増えていた。 

草地と家畜の割合を決めてから、草原生態保護補助奨励政策を使って牧畜民たちの生産方式の転換を徐々に導き、「暖候期に放牧し、寒候期に舎飼いする」新たな飼育モデルを模索した。 

ダレン副局長はこう語る。「これまでは4~5月に出産させ、9~10月に集中的に出荷していましたが、現在は人工授精によって科学的に繁殖させ、1月に出産、6~7月に出荷ができるようになりました。その時期のアルタイはまさに観光シーズンで、牛や羊を良い値段で販売でき、夏に山に上る家畜の数を減らすことによって、草地の負担を軽減できるので、『家畜削減により質は向上し収入は減らない』を真に実現できました」 

近年、ブルチン県は累計で96万6500ムーの草地を放牧禁止地にし、5万ムーを囲い込んで保護し、2万ムーに対して草原生態修復管理を行い、8万ムーを対象に有害生物防除を行い、草地の牧草生産量が3ポイント向上した。 

草地で起きた変化は年々改善されるモニタリングデータ上だけでなく、牧畜民一人一人の認識にも表れている。 

タルラク県では毎年5~6月が高原牧草の播種の最適期であり、牧畜民が山で冬虫夏草を採取する収入増加シーズンでもある。しかし今では、この時期になるとどの家庭も必ず誰かが草地の種まきや管理保護に当たる。草地改善による目に見える恩恵が、牧畜民の生態保護意識の変化を静かに後押ししている。 

「以前は草地の退行が深刻で、草地と家畜のバランスが悪く、ヤクが十分に食べられなかったため、多くの人は数十、時には100以上離れた貸し牧場でテントを張って放牧せざるを得ず、翌年5月まで故郷に戻れませんでした。ヤクを売った収入の大半は貸し牧場の費用や飼料代に消え、一年中働き詰めでも手元に残るお金はほとんどありませんでした」と村民のシャーチュンさんは振り返る。今では、現地の牧草はほぼ30以上に育ち、牛や羊が満足に食べられる草地となり、牧畜民は以前のように長距離を移動して牧場を借りたり飼料を買ったりする必要がなくなり、手元にお金が残るようになった。 

シャーチュンさん自身は伝統的な牧畜民から草原管理保護員に転身した。草地の種まきの季節には他の管理保護員と共に播種作業に参加し、播種後は定期的に種まき地点を巡回し、放牧禁止の実施状況を監督し、その後の管理保護作業をフォローアップする。昨年末まで県全体に2700人以上の生態管理保護員がおり、そのうち500人以上は貧困脱却世帯出身者だ。この草原に根差した管理保護チームは、草原生態保護の末端防衛ラインを固めるだけでなく、現地の村民に安定した就労機会を提供している。 

エコツーリズムをけん引 

新疆ウイグル自治区ボルタラ蒙古自治州ボルタラ市にあるサリム湖一帯は、夏になると青い空と澄み切った湖が広がり、緑の山々が連なる。湖畔の小さな売店の店主オルジャトリョブクさんは棚の在庫を確認していた。かつて草原で羊の群れを追い掛けていた彼女も、今や小さな店を営み、1日の売上は1000元以上になる。 

サリム湖は新疆で最も標高が高く、面積が最大の高山堰止湖だ。広大な草地が生い茂る湖畔でオルジャさんは振り返る。「子どもの頃に羊を放牧していたときは、羊が草の中に伏せると、頭も見えなくなりました」 

しかし家畜の数が増えるにつれて、草地は次第に「薄く」なっていった。「草が足首ほどの高さに伸びる前に羊や牛に食べられてしまい、風が吹けば土が湖に流れ込み、水も濁り、見ていてつらかったです」とオルジャさんは言う。 

草原植生被覆の回復は喫緊の課題だった。12年から放牧の中止と草原の休息、草原生態保護補助奨励メカニズムの実施、代替草地の調整など一連の体系的な措置がサリム湖重点保護区域で講じられた。 

「家畜を移動させると草が育ちました」とサリム湖風景景勝区管理委員会(以下、同委員会)総合執法局の樊江偉局長は語る。現在、130万ムー余りの草地が生命力に満ち、植生被覆率は95%を超え、放牧禁止前と比べて35%上昇し、1ムー当たりの草の生産量は少なくとも50増加した。さらに、かつてはめったに見られなかったユキヒョウやアイベックスなどの希少な野生動物が頻繁に現れるようになった。サリム湖の水質も草原修復と一連の関連保護措置により大幅に改善され、湖上の船から水中をのぞくと、深さ十数の湖底の砂や石の模様まではっきりと見える。 

生態の改善は現地の牧畜民にも新たなチャンスをもたらした。サリム湖風景区は中国最高ランクの5A級観光地となり、昨年の年間観光客数は延べ700万人以上だった。 

オルジャさんの売店も繁盛し、彼女の夫は3人の牧畜民と共に観光乗馬隊を結成し、繁忙期には3万元以上の月収を得られるときもある。「むちを置き、観光業に力を入れれば、暮らしはどんどん良くなります」とオルジャさんは語った。 

「エコツーリズムの隆盛は多種多様な業種の誕生を促し、牧畜民に遠くへ行かずとも就業起業できる機会を与えています」と同委員会観光発展管理局の余亭副局長は述べる。 

観光産業の発展がもたらす収入は多くの人々に恩恵を与えている。ボルタラ市やサリム湖に隣接する温泉県などには新しい校舎が次々と建ち、郷鎮の医療施設は設備が刷新され、舗装道路が牧畜民の定住地の入り口まで通じている。「生態系が良くなり、観光が盛んになれば、より多くの人々が恩恵を受けられるのです」と余副局長は言う。 

「草を青々と密に育て、水を清らかに守れば、私たちの生活はますます豊かになります」。湖畔に立ち、青空を映す湖面と山麓に広がる緑の草地を見つめながら、オルジャさんは感慨深く語った。 

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