地球の腎臓――湿地を拡大

2026-09-23 15:52:00

王雲月=文 VCG=写真

宇宙から見た地球は7割が海で覆われ、3割が陸地だ。しかし海と陸の間には特殊な移行地帯――湿地が存在する。それらは大地に広がる巨大なスポンジのように水循環の中で最も脆弱ぜいじゃくで最も重要な部分だ。 

中国は湿地資源が豊富だが、かつては面積の減少や機能退行などの問題に直面していた。そのため、一連の重要生態修復プロジェクトを実施し、傷ついた多くの湿地を生き返らせたのだ。 

保護修復を常態化 

湿地は「地球の腎臓」と呼ばれる。物理的な沈降、植物による吸収、微生物による分解など複合的メカニズムによって土砂を留め、栄養塩を固定し、多数の汚染物質を分解あるいは閉じ込め、水源を涵養させ水質を改善させる上で代替不可能な役割を発揮している。それとともに湿地は天然の遊水地でもあり、豊水期には水を吸収し、渇水期には水を放出するというピークカットと谷埋めの方法で地域の水量の増減を調整し、周辺環境を潤いのあるものにし、底生生物や渡り鳥、希少な水鳥、絶滅危惧植物に至る大規模な生命ネットワークに住処と繁殖の場を提供している。 

縦横に流れる河川、点在する湖沼、広大な沼沢地や干潟は、生物多様性に富んだ湿地生態系を形作っている。中国国家林業草原局のデータによると、中国の湿地面積は約5635万で、アジア最大、世界第4位だ。 

だがこの貴重な「生態資産」は常に大切にされていたわけではない。改革開放後の急成長期に中国の湿地は重い代償を支払った。干拓による農地化が湖面や干潟を圧迫し、高密度養殖や都市部農村部からの排水が水質を悪化させ、都市道路や開発区の拡大が水系の連続性を断ち切った。多くの調査やリモートセンシング研究によれば、1970~90年代にかけて、湿地は年間数十万規模で減少する急速な縮小期を経験し、「地球の腎臓」は系統的なリスクにさらされていた。 

湿地の急速な減少の本質は「いくつかの水面が減った」ということではなく、水系網の連続性の破壊、遊水貯水地の圧縮、自然浄化緩衝能力の削減を意味する。結果として洪水が勢いを増し、水質が悪化し、渡り鳥が減少する。生態的赤字は最終的に沿岸に住む人々への被害という形で跳ね返る。 

2012年から、中国はかつてないほどの力の入れようで生態文明建設を推進し、湿地の保護修復をより重要な位置に据えた。各地で「退耕還湿」(農地を湿地に戻す)や生態補償を積極的に進め、湿地自然保護区の整備に力を入れ、常態的な湿地生態モニタリングを実施し、傷ついた湿地に対する植生回復や水系整備などの作業を持続的に行い、湿地の保護修復は徐々に常態化標準化へと向かった。22年6月1日には「中華人民共和国湿地保護法」が正式に施行され、中国は世界でも数少ない湿地保護に関する専門法を持つ国の一つとなった。同年には「全国湿地保護計画(2022~30年)」も実施された。 

法的枠組みに支えられ、全国規模の湿地修復の取り組みが全面的に展開された。南中国海の浜辺から長江中下流の江漢平原、都市中心部から高原の奥地に至るまで、各地域の湿地はそれぞれの実情に合わせた独自の修復の道を歩み、大地の傷は一つ一つ縫い合わされつつある。 

人が生活の場を譲る 

湿原修復の第一歩は「人間が退き湿地が進む」であり、人間活動の過度な干渉を減らし、自然生態系を休ませることだ。 

武漢市唯一の国際重要湿地である沈湖湿地は蔡甸区西南部に位置し、総面積約17万4000ムー、多くの渡り鳥の重要な越冬地と中継地になっている。この水系網はかつて多くの生き物を育んできた。蔡甸区消泗郷漁樵村の元村党支部書記の陳為炳氏によれば、付近の村民は先祖代々水と共に生き、漁で生計を立て、湖の水は直接飲めるほどきれいだったという。だがその後、水面が高密度養殖に貸し出され、湖を囲む養殖や干拓が行われ、核心区と緩衝区には3万2000ムー余りに網や囲い、いけすが設置され、湖岸が狭まり、渡り鳥の住処が縮小し続けた。さらにまずいことに、渡り鳥は魚介類や農作物を好んで食べるため、村民と鳥の対立も日増しに高まり、野鳥を撃つ、卵を奪うという行為が一時目立った。 

「水は汚染され、人間に追い立てられた鳥は寄り付かなくなり、沈湖の様相は一変しました。一時期は越冬に来たガンの群れが寄る辺なく空を旋回する光景が見られました」と陳氏は語る。 

転機が訪れたのは17年のこと。武漢は約9000万元を投入し、沈湖湿地の網を全て撤去した。19年に蔡甸区はより大規模な「退養還湿」(養殖をやめ湿地に戻す)計画を始動し、核心区と緩衝区内のあらゆる養殖栽培活動を有償で撤退させた。その対象は三つの郷鎮、23の行政村、400世帯以上の請負事業者に及んだ。区政府は7000万元近い養殖撤退資金を一度に投入し、毎年の管理維持費を財政予算に組み込んだ。政府は経済補償や代替生計手段によって村民に自主的に撤退させ、撤退後も生活が保障されるようにした。その後、浚渫しゅんせつ、水路の接続、植生回復、周辺集落の生活排水処理施設の整備など、一連の生態修復事業が順次展開された。 

沈湖湿地保護区技術者の馮江氏は06年に大学を卒業後、ずっとここで働いている。毎日バイクに乗って湖岸を巡回する彼は、排水口や鳥の巣まで一つ残らず覚えている。「19年1月には約3万羽しか記録されていなかったですが、養殖撤退後の20年1月に6万羽となり、21年には7万7000羽、22年には8万5000羽を突破しました」と語る。23年からは3年連続して10万羽を超えている。 

沈湖湿地が記録している鳥類は301種類に上り、中には国家1級保護鳥類が数多くいる。鳥は言葉を話さないが、翼で投票できる――環境が良ければ留まり、悪ければ飛び去る。沈湖に集まる10万羽の渡り鳥の存在こそが、最高の検収報告書なのだ。 

都市と湿地の共生 

沈湖湿地の修復が生態学的な救済であるなら、杭州西溪湿地の物語は、より複雑な命題への答えだ。湿地が都市のすぐそばにあり、人が湿地の隣に住んでいる場合、両者はどのように調和して共生できるのか。 

西溪湿地は中国初の国家湿地公園だ。杭州市の西部にあり、総面積約1038、西湖風景区から5しか離れてなく、市民と観光客の憩いの場として愛されている。世界でもまれな「都市の中の湿地」であり、郊外の公園でもなければ自然保護区でもなく、住宅街やオフィスビル、道路に囲まれた水系網だ。09年に国際重要湿地に指定され、24年末まで971種類の維管束植物、918種類の昆虫、224種類の鳥類が記録され、散歩、バードウォッチング、撮影、家族の遊び場として最適であり、市民と観光客に最も愛されるレジャースポットの一つだ。 

しかし約30年前の西溪は全く異なる風景だった。1990年代、杭州の都市化が拡大を続ける中、湿地内に多くの人々が居住するようになった。養豚業者まで現れ、ピーク時は数万頭も飼育されていた。高密度養殖では飼料が水中に直接投棄されていた。生活排水は処理されることなくそのまま川に流れ込んだ。その結果、水は黒く変色し悪臭を放つようになった。 

「あの頃は水が臭くて、誰も散歩に来なかった」と西溪で生まれ育った蒋晨傑さんは振り返る。湿地公園管理部門の幹部である彼は当時の西溪を思い出すたびに残念そうな口調になる。 

2003年9月、杭州市政府は大胆な決定を下した。保護区域内の1万3000人以上の村民を段階的に移住させることだ。各世帯は移転後に住居と都市部の社会保険が提供され、生活条件は以前より大幅に改善された。 

それとともに政府は数十億元を投入して生態の修復に取り組み、浚渫、汚水遮断、導水、植生回復、違法建築物の撤去などを実施し、養豚排水と生活汚水で壊滅していた汚れまみれの水系網を生態系が生存可能な基盤に徐々に引き戻した。湿地公園は3期に分けて建設され、05年4月30日に1期が先行開園し、その後も拡張充実が続き、開園後は元住民を優先的に再雇用した。 

「今は固定給が出て、立ち退き補償で得た家の家賃収入も合わせると、年収は10万元以上あります」。湿地公園の電動船操縦士の周忠偉さんは当時故郷を離れた者の一人だが、今では湿地の守護者となっている。周さんが所属する車船部には200人近い従業員がおり、彼のような元住民が7割を占める。 

特筆すべきは、西溪の無料開放エリアが当初の2平方から579平方に拡大されたことだ。市民は入場券を買わなくとも散歩やランニング、サイクリング、バードウォッチングなどを楽しめる。開園から24年末までに西溪湿地は延べ6500万人以上が来場し、営業収入は28億元に達した。周辺の新興住宅地は20万人以上の常住人口が集まり、北側の蒋村街道だけで1万社以上の企業が拠点を置いている。これらの数字は、生態保護は人を排除するのではなく、人と自然が共に「とどまれる」生き方を見つけることであることを教えている。 

増える数字と実績 

中国の湿地保護修復活動は今も着実に進んでいる。中国国家林業草原局のデータによると、12年以降、中国は3700件以上の湿地保護修復プロジェクトを実施し、100万以上の湿地を新たに造成修復し、2200カ所余りの各種湿地自然保護地を設立し、重要湿地の生態状況が明らかに改善された。現在、国際重要湿地は82カ所あり、国家湿地公園は903カ所設立され、全国の湿地保護率は50%以上になり、内陸の湖沼から都市内の湿地公園に至るまで、数多くの湿地が再び活気を取り戻し、水清く緑豊かで、鳥が飛び交い、魚が泳ぐ美しい光景が各地で再現されている。 

湿地の修復は長期的な闘いであり、生態系の改善は一朝一夕では達成されない。中国は系統的な保護と科学的な修復という理念を堅持し、全ての「大地のスポンジ」を守り続けるとともに、世界の湿地保護に対しても実用的な中国の経験を提供し続けている。

人民中国インターネット版

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