「高市発言は極めて危険」 西園寺一晃氏が警鐘

2025-11-20 17:28:00

【新華社北京11月20日】高市早苗首相が台湾情勢をめぐり、自衛隊が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得るとした発言が、波紋を広げている。中日間の四つの政治文書の精神に明らかに背くものであり、中国側の厳正な申し入れと抗議を招いただけでなく、政治と安全保障の根本にかかわる問題として日本国内でも重く受け止められている。有識者からは、日本が過去の過ちを繰り返すことのないよう、「村山談話」に改めて立ち返るべきだとの声が相次いでいる。

村山富市氏の死去から1カ月を迎えた17日、中国外交部の毛寧(もう・ねい)報道官は、村山氏が1995年に首相として談話を発表した当時の映像をSNSで紹介し、「いま一度思い起こすべき時だ」と呼びかけた。日本の侵略と植民地支配を認め、深い反省と謝罪を表明したこの談話は、戦後日本の歴史認識を示す公式見解として位置付けられている。

「村山首相談話を継承し発展させる会」の藤田高景理事長も同日、高市氏の発言を「戦後の日本の歴史でも例を見ないような暴言だ。日本は二度と戦争への突入を許してはならない」と批判し、直ちに撤回と謝罪を求めた。藤田氏は、1972年の日中共同声明が台湾を「中華人民共和国の領土の不可分の一部」と明記していると指摘し、「台湾有事が起きたからといって、日本が自衛隊を出すということは明らかに中国に対する内政干渉であり、戦争を引き起こすことになる」と述べ、高市発言は「間違いなく村山談話を踏みにじったものだ」と強調した。

藤田氏はさらに、戦後日本の基盤となる歴史認識が日本社会では必ずしも共有されていないと指摘し、「もう二度と再びあのような侵略戦争は日本は中国に対して起こしてはならない」として、特に若い世代に対する教育の重要性を訴えた。

村山氏が談話を発表する1年前の1994年、当時1期生議員だった高市氏は国会審議で、侵略の定義や謝罪の正当性について村山氏を問いただした経緯がある。今回の発言は、その立場が今も変わっていないことを示すものといえる。

軍事専門家の小西誠氏も、「台湾有事は日本有事」との論が政治的に利用され、南西諸島を中心に軍備増強が加速している現状を「極めて危うい」と警告し、地域の緊張を高める政策判断を避けるべきだと論じた。

沖縄県の玉城デニー知事は記者会見で、高市発言について「従来の政府見解より突っ込んでいる」と述べ、「戦争は絶対に起こしてはならないし、引き起こすようなきっかけを与えてもいけない」と懸念を示した。戦争で凄惨な被害を受けた沖縄では、戦争に対する警戒心がとりわけ強い。

高市政権が発足した10月21日、「平和を守り、未来を創る」をテーマに福岡で開かれた会合では、村山談話の会の藤田氏が村山氏の遺稿を代読した。「日本の過去を謙虚に問うことこそが日本の名誉につながる」「日本と中国の平和友好関係は、アジアの平和の礎であり、アジアの平和の根底となる日本と中国の末長い良好な関係を築くことこそが、日本の国益を守り、発展させることにつながる」。これが平和の理念に生涯をささげた政治家の「最後の言葉」となった。

日本の主要紙も村山談話の正しい継承を訴えている。朝日新聞は村山市死去翌日の社説で、村山談話は近隣諸国との信頼関係の礎になってきたとし、「繰り返し否定的な考えを示してきた自民党の高市早苗新総裁は、その意義を理解しているのだろうか」と疑問を呈した。琉球新報も「戦争の過ちを語ることができる政治家がいなくなる。歴史認識をゆがめる政治をはびこらせないためにも、戦後民主主義を守り、平和国家を目指した村山さんらの思いに何度でも立ち返りたい」と論じ、戦後日本が築いた平和国家の原点を守る必要性を指摘した。

高市氏の発言が中日関係を緊張させる中、日本がいかなる姿勢を取るのかが改めて問われている。村山談話が示した歴史観と平和理念は、今もなお重い意味を持つ。政治指導者は、その重さを真摯(しんし)に受け止める責任がある。(記者/彭純、胡暁格)

「新華網日本語版」2025年11月20日

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