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ハルピン講演会

ジャスロン代表 笈川幸司

初めての地・ハルピン。

出発前、仲間から「10月には雪が降るぞ」とか、「ものすごく寒いから気をつけろ!」などのありがたいアドバイスをいただいた。そして妻が、スーツケースいっぱいに防寒グッズを詰め込んでくれた。ところが、ハルピン空港に降り立つと、昼間は20度を越え、無風の日には汗をかくほどだった…。

さて、ハルピン講演では、お陰さまでどの会場でも昼間の暑さ以上に熱かった。更に会場を見渡すと、夏休みにわざわざ大連や北京の特訓班に参加してくれた学生たちの姿があったから、自分のペースを取り戻すのに時間はかからなかった。

実は、すべてが順調だったわけではない。ハルピンに着く前は体調が思わしくなかったのだ。要するに、わたしはひと一倍ハツモノに弱いということだ。

しかし、そんな不安も一気に消え去った。ハツモノ弱さを上回る好条件に恵まれたからだ。今回、ほとんどの大学で日本語学部主任を筆頭に、何人もの先生が見学に来てくれた。こんなことを書くと、ちょっと不思議に思う人がいるかもしれない。わたしは他の教師に「見られたい」という欲望がひと一倍強いのだ。だから、突然他校の日本語教師が「授業を見学させて欲しい」と言ってきたら、喜んで応対する。理由は、教師も学生も、勉強を第一にするという考えが間違っていることを、私の授業を通してわかってもらいたいからだ。

子曰く、『弟子入りては則ち孝、出でては則ち悌、謹みて信あり、汎く衆を愛して仁に親しみ、行いて余力あれば、則ち以って文を学ぶ』

これは、3000年も前の話だ。

孔子がこうおっしゃった。『若者たちよ、家庭では親孝行し、家庭を出れば地域社会の年長者に従い、言行を慎んで誠実さを守り、広く愛して人徳ある人格者と親しくしなさい。これらの事を実行して余力があれば、そこで初めて書物を学ぶとよい』。

「勉強さえできれば良いのだ。がはは!」

そう考えている学生がたまにいる。いや、学生だけじゃない。子どもに家事の手伝いなどさせず、勉強だけをやらせている親までいるらしい。教師だって親だって、「勉強しろ、勉強しろ」ってうるさい。学生たちは、嫌々勉強するから何にも頭に入らない。やりたくないから勉強を後回しにする。ゲームが終ったら勉強しようと決めるけど、ゲームをしながら宿題のことを考えているからゲームにも集中できない。集中できないからなかなかクリアできない。だから、ゲームしただけで疲れてしまう。気づいた頃には宿舎は消灯時間。勉強は明日やればいいやと考える。しかし、そんな毎日の繰り返しだから、勉強はどんどん遅れてゆく。その結果、勉強のストレスが膨らんでゆき、いつか爆発してしまうのだ。

はっきり言って、勉強って最高に楽しいし、勉強と比べたら、ゲームやパチンコなんかつまらない。でも、勉強の楽しさを知らないから、勉強のストレスで苦しむことになるのだ。

ハルピン講演では、もちろんスピーチの秘訣や勉強の方法について話してきたが、勉強が一番大切なのではないという話だけは忘れずにしてきた。

さあ、次は3都市目・長春。途中から急に寒くなるそうだけど、そんな寒さに負けず、これから知り合うであろう人たちにほんものの「熱」を伝えていきたい。

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2011年10月14日

 

 

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