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例外中の例外・吉林という街

ジャスロン代表 笈川幸司

長春市の隣には吉林市がある。

吉林省の省都はその吉林市ではなく、長春市だ。それを聞いて不思議な気持ちになったのはわたしだけだろうか。湖南省に湖南という都市はない。四川省に四川という都市もない。とにかく、そういう面から見ても、吉林市は例外中の例外なのだそうだ。

吉林市にある北華大学鉄院長の話では、吉林市の存在を知る中国人は、半分ぐらいしかいないらしい。しかも、吉林市は吉林省の省都でもない。確か、日本にもそんな都市があった。栃木県栃木市。栃木県の県庁所在地は宇都宮だ。

あっ、そんなことはともかく、吉林市は長春駅から高速鉄道に乗って40分でいけるところにある。一等席を購入したが39人民元だった。以前、北京天津間を走る高速鉄道に乗ったことがあるが、69元だったからかなりお得だ。

吉林駅に着くと、東北電力大学の朴院長(男性)がじきじきに出迎えてくれた。

一週間前に長春では、師範学院の張先生(男性)が早朝ホテルに挨拶だけをしに来てくれた。それはなぜかと聞いてみたところ、「10月の東北地方は雪が降るが、東北の男心は熱いから(笑)だ」そうだ。

あっ、誤解されてはいけないので敢えて説明するが、吉林市にある東北電力大学と日本の東北電力とはまったく関係がない。だから、東電が作った中国の大学などと思わないで欲しい。それどころか、朴院長の嘆き節によると、吉林市には日本企業がひとつもないという。ここで日本語を学ぶ学生たちは、みな憧れの大連で仕事をしたいと思っている。

今回、わたしが講演を無償で行っていることを知った吉林市の3大学(東北電力大学、吉林化工大学、北華大学)では、3泊分の宿泊費をそれぞれの大学が負担し、昼夜の食事をそれぞれの大学の先生が引き受け、とともにしてくれた。化工大学の姜主任は、わたしがホテルに戻ったあとも部屋が寒くないかどうか心配して電話までしてくれた。とにかく、至れり尽くせりだった…。

どエラい地位についている人間でないわたしですらこのような厚待遇を受けるのだから、きっと、この街の人たちは、誰に対してもそれができるのだろう。

長春では、スケジュールの都合で移動中にパンを口の中に放り込むことが多かっただけに、ゆっくりと食事をしながら吉林市のことを聞くことができたのは嬉しい悲鳴、そして、予想外の収穫だ。

何から何までお世話になった先生方、土日だというのに、講演を真剣に聴きに来てくれた大勢の学生たち、講演会が終っても「サインをください」と言って列をなす学生たちに対し、こちらが悪い印象を抱くはずがない。

二日間という短い時間の中で吉林市のことがほんとうに好きになった。だって、この街で日本語を学ぶ全ての人がわたしによくしてくれたのだから…。

吉林を発つ日、早朝6時に出発し、バスに乗って朝鮮半島にほど近い延辺という街へと急いだ。

北華大学の蔡先生(男性)が朝5時半に迎えに来て、バス停まで送ってくれた。

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2011年10月27日

 

 

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