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長春で出会った熱意

ジャスロン代表 笈川幸司

「熱意が一番」

そう語るのは、新興大学の中にあって上昇気流に乗る吉林華僑外国語学院の王先生だ。

長春で日本語を学ぶには大きな意味がある。

長春工業大学

長春の大学には「日本語水準全国一」と自負している教師も少なくない。実際にその通りだと思うし、わたしはこの高い意識こそ、自分たちの能力を引き上げるためにもっとも大切なものだと思っている。もちろん、その意識がたまに生む「驕り」には十分気をつけなければならないが。

「スパルタ」

とまでは言わないが、厳しい取り組みをしている大学がある。吉林大学だ。

成績、総合力を求めるだけでなく、吉林省で行われる日本語スピーチ大会では当然優勝しなければならない。いや、そんなことは誰も口にしないが、そういう雰囲気が漂っている。つまり、世間ではびこる「甘え」を許さないのだ。

「あまり、無理をしないで」

「そこまで頑張らなくてもいいのよ」

そんな言葉が世間ではなんとなくだが「思いやり」とされている。そういう類の本が売れ、テレビで紹介されればすぐに国民が共感し、支持する。怠け者にとっては都合の良い時代だ。現代社会では、頑張らない人間が、頑張らなくてもよい理由を堂々と主張できる。そのゆきつく先のことは、ここではしない。 さて、話を戻すが、吉林大学では「甘え」を許さない。

間違えたら、学生に何百回も間違ったその単語を書かせる。ときには一万回も書かせるそうだ。そして、読者に誤解してもらいたくないので記述するが、教師陣はみな、学生たちに慕われている。そこがすごい。

吉林大学

先日、長春出身の学生からこんな話を聞いた。

「宿題がなく、試験が簡単で、授業に出なくても単位をくれる先生は、すごく人気があるんです」

それもひとつの事実かもしれない。しかし、「まったく、今の中国の大学は…」と嘆くのはまだ早い。吉林大学は、何十年もの間、全国一のレベルと非常に高い意識を持ち続け、真剣に、日本語教育に取り組んでいるのだ。

東北師範大学・柯先生が、「教師と学生が一致団結し、熱意を持って雰囲作りに取り組んでいる新興学校・吉林華僑外国語学院の学生の日本語レベルは、吉林大学の次だろう」とおっしゃった。

長春山崎日本語学校・山崎校長は、「利益だけを追求する日本語学校はうちのライバルではありません。なぜなら、質を求めない学校はすぐに淘汰されてしまうからです。でも、社会に貢献し、高い質を求めていけば、どんなに厳しい時代でも、ちゃんと生き残ることができます」とおっしゃった。

ものが豊かになってきた中国では、価値観がゆらぎやすい。2000年になってから日本語学科を設置した大学も、数年前、一時的にだが学生数が膨大に増えた。

「よし、このままいけば大丈夫」

10年を経た今、油断してきた学校は沈み、熱意を持って取り組んできた学校だけが人気を保っている。

最後にわたしが何を言いたいのか、もう説明するまでもないだろう。

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2011年10月20日

 

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