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コンテストはどんな場所か?~北京市日本語朗読大会

ジャスロン代表 笈川幸司

11月26日、早稲田大学北京事務所において、『早稲田杯・北京市日本語朗読大会、二年生大会』が開催された。

この大会は、早稲田大学北京事務所と清華大学アニメ協会『次世代』の協力の下、団体での出場(グループ出場)が認められた新しいスタイルのコンテストだ。今大会には二年生54チームが参加し、上位10名には、日本アニメ声優イベントのチケットが次世代から送られた。

今回、わたしは挨拶の中でこのような話をした。

「このコンテストが終ったら、結果がどうであれ、担任の先生、精読、会話、聴解の先生に必ず電話をして、感謝の言葉を言ってください。また、成績の良かった学生に対して、心から『おめでとう!』と言ってください。今日は、それを言う練習の場です」と。

これまで自慢げに次のようなことを話す学生に会ったことがある。

「わたしは、どの先生からも指導を受けずに、自分の力だけでコンテストに出ました!」

一生、スピーチコンテストに出続けて賞金を稼ぐ「スピーチコンテストのプロ」などという職業はない。スピーチ大会を通して学ぶべきものがあり、それを今後の生活で役立てていかなくてはならない。

だから、そのセリフを聞いたとき、「この学生は、周りの人や教師と良好な人間関係が築けない、総合力に欠けた学生だ」と思った。

コンテストに出れば、多くの人にお世話になる。自分ひとりの力で良い成績をおさめられると勘違いしている人に明るい未来はない。

断言する。そういう人間は、社会に出て失敗を繰り返し、その失敗を他人のせいにし、しまいには失敗から目を背けるようになる。

スピーチ大会に出場するときには、指導をしてくれる人を探すことが必須だ。そして、指導をしてくれる教師には、いつも感謝の言葉を口にし、練習が終って部屋に戻ったら、電話一本入れ、「部屋に着きました。今日はありがとうございました」とひとこと言うことを忘れないで欲しい。

電話代を心配する人もいるだろう。しかし、一回何角か一元ぐらいなものだ。感謝の気持ちを忘れることのほうが、よっぽど高くつく。

「何でも無料でやってもらい、自分は一元も出したくない」

そういう人間には、何も言わない。

ただ、コンテストに出場すれば、良い人間関係を築く過程を味わうことができることを知っておいて欲しい。そして、その体験を軽く見ないで欲しい。

最後に、コンテスト終了後、指導してくれた先生のほか、普段お世話になっているすべての先生方に報告し、お礼を言うこと。わたしたち教師が聞きたいのは、「これからも頑張ります!」というひとことだ。

この日、最優秀賞に選ばれたのは、清華大学二年生・王耕偉さんだった。

去年のこの時期、北京市大学一年生朗読大会が行われ、清華大学の学生が成績上位を占めたが、今回は上位10名中、8名が他校の学生だった。

一年が過ぎ、さまざまなコンテストを経て、北京市内の各大学のレベルがぐんと上がったいま、清華大学の二年生と他校の二年生とのあいだにはほとんど差がないことに気づいたのは他でもない、最優秀賞に選ばれた王さん本人だった。

 

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2011年11月28日

 

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