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わらいの時間~海南講演会

ジャスロン代表 笈川幸司

海南島は長寿の島と呼ばれている。日本で言えば沖縄に相当するだろうか。学生たちからこんな言葉を聞いた。「祖父も祖母も、毎日出かけるときはマンション22階の階段を上り下りしている」「うちの家系でいちばん早く亡くなったのは98歳」「果物は甘いけど、砂糖と違って健康的よ」などなど。

今回、大阪府にある市岡国際教育協会さんに招かれ、海南師範大学で講演会をすることになった。この協会には柳村さんという方がいて、数年前にこの大学で半年間留学し、その後は年一回交流活動をしている。

その柳村さん。定年されるまで製薬会社に勤めていたが、ただのサラリーマンではなかった。この30年、ご自宅に海外から外国人学生をホームステイさせてきた。その数、57名。彼らの多くはすでに結婚し、親となっているが、柳村さんはその57人の「子どもたち」の子を、孫だと思って生きている。生き甲斐は、その「子どもたち」に会いに世界各地へ旅することだとおっしゃる。

そんな不思議な魅力を持つ柳村さんは、日本から7名の仲間を引き連れ、この大学で毎年コンサートを行っている。バンド名は「ちゃんとバンド」。なぜかと問うと、教えてくれた。「ちゃんと演奏したいからちゃんとバンドです」と。大阪人らしいユーモアたっぷりの回答だ。

海南島に到着後、わたしはすぐ「ちゃんとバンド」の皆さんと会ったが、彼らの口方はいきなりジョークが飛び出した。みんなでエレベーターに乗り込むと、鏡で自分の顔を見た山岡さんが「おっ、俳優のポスターが貼ってある」とおどけた。柳村さんはすかさず「指名手配の写真やろ」とつっこんだ。さすがは大阪人。プロでなくても、普段の会話が漫才でできている。

今回の交流会は、3つの部門に分かれていた。まずは、海南師範大学の学生たちによるスピーチ大会。次に、わたしの講演会。最後に「ちゃんとバンド」の演奏会と、学生たちによる歌やダンスのパフォーマンス会。3時間半の交流会が終わると食事会へとうつった。食事会が終わると、学生たちがみな、わたしたちの乗る送迎バスを取り囲み、長らく手を振ってくれた。

講演会は前回の上海講演以来2週間ぶりだったので感覚を忘れ、途中で声が枯れてしまった。どうにか最後まで話し続けることができたが、いちばんうれしかったのは大阪の人たちに「面白かった、すごかった」と褒めていただいたこと。

「笑い」は世界の共通語。そう思って、講演会では常に笑いの大きさや拍手の大きさを意識している。その意識の高さにおいては大阪の右に出るものはない。だからこそ、大阪の人たちに「おもろい」と言われるのがうれしい。

翌日は、急遽海南大学で講演会を実施することに。これは、普段からわたしをサポートしてくれている日本人留学生の井村君が海南大学の金山主任に連絡をしてくれたからだ。気温35度を越えた海口、教室にはエアコン設備がなかった。

それでも約2時間、学生たちがずっと真剣にわたしの話しに耳を傾けてくれた。暑いというのは良いことだ。笑いを取ろうとしてスベっても、暑さのせいにすればいい。これまでかなりの場数を踏んできたが、これほど汗を流したことはなかった。ただ、緊張から来る「いやな汗」とは違い、久しぶりにジョギングをしたときに、体の中からすべての毒が出て行くような心地よさを感じていた。

ところで、海南大学ではひとつ喜ばしいことがあった。この大学で日本語を教えている藤田先生は、あの人気お笑いコンビ・トータルテンボスの藤田憲右さんのご尊父様だったのだ。

わたしのパソコンの中には、トータルテンボスさんの映像がいっぱい入っている。落ち込んだときに彼らのネタを見ると元気になるからだ。

藤田先生の前で元気のよい姿をお見せすることができてほんとうに良かった。海南島には、はじめて留学にきた18年前から「いつかは来たい」と思っていたが、こうやって実際にヤシの並木道を歩き、日本や北京ではけっして口にできない新鮮なマンゴージュースで喉を潤すことができた。

ほんとうに「日本語航海士」になれてよかったと思う。

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2012年5月

 

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