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友達のいる国に爆弾は落とせない

 

中西 刀麻

「日本のみんなに出逢えて本当に良かった。日本人みんな優しいと中国で伝えたい」。私にとって初めての中国人の友人である田雨(デンユイ)さんが言っていた言葉が今も中国について考える際に思い出される。

田雨さんと出会ったのは2012年の夏の頃であった。彼女は短期のインターンシップで上海から日本に来ていた学生であった。私たちはあるNPO団体の活動を通して知り合い、彼女を含む何人かの学生で一緒に観光地などを訪れたりした。

 田雨さんとの会話は日本のどこが好きかであったり、中国に旅行に行く際のおすすめの場所など本当に普通のよくある日本人と外国人の会話であったのを覚えている。彼女は日本の文化が好きで、将来は日本で働きたいと言っていた。

田雨さんの日本滞在は、平日はインターンシップ、週末は私たち日本の学生とどこかへ出かけるといった具合であった。

私の大学生として初めての夏休みは驚くほど早く時間が過ぎ、気付けば田雨さんの帰国の日がやってきていた。私たち学生と田雨さんはその頃にはすっかり打ち解けていて、空港で別れを惜しみつつ彼女を見送った。

あの日本への抗議活動が起きたのは彼女の帰国から一ヶ月が過ぎた頃であった。デモが起きている最中に私は少しためらいを感じながらも田雨さんに連絡して、中国の現状がどのようなものかを聞いてみた。「なかなか厳しいね」と一言だけ返事がきて、しばらく連絡が来なくなってしまった。連絡もできないくらい厳しい状況なのかと私はとても心配した。

数日後また彼女から連絡が来て、田雨さんは日本が好きであること、日本との戦争になるのが怖いということ、そして最後に日本での暮らしで関わった人への感謝の気持ちを伝えてくれた。「日本のみんなに出逢えて本当に良かったです。日本人みんな優しいと中国で伝えたい」。「政治家は喧嘩しているけど私たちは仲良し仲良し」。騒ぎのニュースを追っているなかでこの言葉にどこか救われたような気がした。その当時は中国の人全員が日本を敵対視し、怒っていると感じていたため、たった一人でもそのようなことを言ってくれる人がいたことに安心させられたのだと思う。

その頃日本でも中国のデモに対抗するように反中国の言論が目立った。そして身の周りの多くの人が少なからずそのような言論に同調しているように思えた。そのような中で、ネットなどで出回っている反中国の意見や、友人の誰かが言っていた中国へのネガティブな気持ちに同調しかけていた私を引き止めたのは田雨さんの存在であり彼女の言葉であった。どこか中国を嫌いになれないのである。

ある時にどこかで聞いた言葉で、「友達のいる国に爆弾を落とそうとは思わない」というものがある。私は田雨さんとの出会い、2012年の日本への抗議活動を通してこの言葉の意味を強く実感させられた。ある国に敵対心を持つということにおいては戦争もネット上での中国批判も同じである。

果たして現在中国をネットなどで強く批判している日本の人たちには中国人の友人がいるだろうか、友人がいなくとも中国の人とまともに会話をしたことがあるだろうか。国というものはそこに住む人一人一人によって成り立っているものであるのに、そのうちの一人も深く知らないのではないか。日本人による中国への批判の正体は、あまり知らない相手への不信ではないだろうか。 

インターネットを使って誰が言ったかわからない情報を信じ、相手の顔の見えない中で批判することの多い若い世代の私たちこそ、現実の世界で、自分の目で見た中国、中国人と向き合っていくべきである。

中国と日本の人と人との直接の交流を増やしていくことが未来の日中関係の構築に必要である。まずは中国人の友達を作ること、そして中国に関心を持つことが、相互理解の実現への第一歩である。将来私が社会で活動していくなかで、このような相互理解の輪を広げていくことに貢献できたら幸せである。

 

人民中国インターネット版 2015 年12月

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