船舶護衛?高市首相の訪米から日米同盟のねじれと脆弱性を見る
国際問題評論員 唐知遠
最近、ホルムズ海峡に世界の注目が集まっている。トランプ米大統領は日本などの同盟国に対し、ホルムズ海峡での船舶護衛に軍艦を派遣するよう求めたが、多くの同盟国が明確に、あるいは遠回しな表現で拒否した。そのような中、ジレンマに陥った日本はとりわけ優柔不断さを際立たせ、日米間の複雑な利益関係と矛盾を余すところなく露呈した。折しも最悪のタイミングで、日本の高市早苗首相は3月19日に米国へ向かい、就任後初の訪米がスタートした。
高市首相はこのたびの訪米に合わせて念入りに計画を立て、特に日程をトランプ大統領の訪中予定の直前としたのは、対中政策で機先を制して米国と足並みをそろえるとともに、経済・貿易、投資、防衛協力などの推進によって日米同盟を強固にし、訪米という「初の舞台」で新政権に向けた評価を高めようとする狙いがあった。だが、米国とイスラエルによるイラン攻撃で、トランプ大統領が同盟国に船舶護衛への参加を名指しで求めたことで訪米の重点が移り、当初定めていた議題は完全に狂わされた。船舶護衛という選択問題は解のない外交的に致命的な問題となり、日本が同盟関係の中で気まずい立場に置かれている縮図ともなった。
ジレンマに陥る日本
日本にとって、ホルムズ海峡はエネルギーの生命線であり、約90%の原油が同地を経て輸入される。戦争の影響を受け、日本はすでに石油備蓄を放出し、三菱ケミカルなどの企業は原料供給を絶たれて減産に追い込まれた。日本は確かにエネルギーを守るために船舶護衛を行いたいという衝動に駆られているようだが、法的枠組みや実際の民意、外交政策、軍事的リスクなど多層的な制約に直面している。
法律面では、日本が2015年に成立した新しい安保法制に基づいて自衛隊を船舶護衛に派遣する場合、ホルムズ海峡の封鎖を「存立危機事態」と認定する必要があるが、日本政府はその判断を今に至るまで下していない。なおかつ、米国とイスラエルによるイランへの軍事行動は国連による授権を得ておらず、国際法違反であり、日本の軍隊派遣は法理的根拠がない上に、社会各界から強い疑念を引き起こすことになる。
民意面では、日本のメディアが行った世論調査によると、回答者の82%が米国とイスラエルによるイラン攻撃に反対しており、支持すると答えたのは9%にすぎなかった。高市政権が船舶護衛の要請を承諾した場合、民意に背き、政権基盤が揺らぐのは必至だ。
外交面では、日本とイランは長きにわたり友好関係にあり、2019年には当時の安倍晋三首相がテヘランを訪問して米国とイランの対立の調停を試みた。今回米国に協力して船舶護衛を行った場合、イランを敵対国と見なすのと等しく、日本の外交戦略は大きな転換を迫られる。イランはもし在日米軍基地が自国への攻撃に使われれば、日本を攻撃目標に加えると明確に警告している。ひとたび関係が悪化すれば、日本の中東外交における余地は大きく狭まり、報復を受ける可能性もある。
軍事面では、ホルムズ海峡の航路は狭く、イランは機雷の敷設やドローン、ミサイルによる反撃能力を備えており、自衛隊による船舶防衛は日本国内で自殺行為の任務であると評されている。日本が先進的な機雷掃海技術を持っているとしても、人員や艦艇の安全を担保することは難しく、ひとたび死傷者が出れば高市政権は極めて深刻な政治的危機に直面する。
「真珠湾奇襲」への言及という気まずい瞬間
3月19日のホワイトハウスでの会談は、高市外交にとって気まずい一時となった。トランプ大統領は日本の記者の質問に対し、米国によるイラン攻撃と第2次世界大戦における日本の真珠湾奇襲を同列に論じ、「われわれは奇襲をしたかったから誰にも言わなかった。奇襲については、日本が一番よく知っているだろう?どうして日本は真珠湾のことを教えてくれなかったんだ」と言い返した。
会場は笑いに包まれ、高市氏は目を大きく見開き、きまり悪そうにしつつ、無理に笑顔を作っていた。この一幕は全世界の前で日本の面子を潰し、日米同盟の不平等な本質を完全に露呈するものだった。真珠湾奇襲は米国にとっての「国辱」である。トランプ大統領は冗談めかして言ったが、実際には日本を敲くものにほかならず、日本の同盟関係における位置づけは不名誉な歴史を持つ従属者であり、米国は日本を全く信用していないことが明示された。
訪米期間中、高市氏はトランプ大統領を「ドナルド」と親しみを込めて呼び、「世界に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」とあからさまに持ち上げてみせた。このような言動が日本で報道されると世論は騒然となった。また、ホワイトハウスが発表した高市氏の写真は大袈裟な物腰や卑屈な態度を写し出すもので、軽薄な挙動や国家の品格を損なう振る舞い、外交的な媚びへつらいが批判を受けた。日本のネットユーザーは「日本の恥」と声を上げ、日本政府が外交上の尊厳を捨て、経済や国民生活を顧みず、ひたすら米国に追従しながらも、その見返りがこのような軽視や屈辱であったことに心を痛めている。
あいまいな態度でやり過ごすことは可能か
トランプ大統領が最重視する船舶護衛の問題について、日本国内では反対の声が高まっている。高市氏が訪米に出発したのち、日本の野党3党の党首は内閣官房長官に提言書を手渡し、高市氏の訪米期間中、日本は自衛隊の艦船を派遣して船舶護衛を行うことはできないと明確に伝えるよう求め、日本の国会前では1万人以上が参加する大規模な抗議活動が発生した。会談後、高市氏はトランプ大統領に、日本の法律の範囲内でできることとできないことがある旨を伝え詳細に説明したと語ったことで、日本国内で高市氏の衝動的あるいは過激なスタンスについて憂慮する人々はひとまず胸をなで下ろした。だが、トランプ大統領は表向きには日本を「NATOとは違う」と称賛すると同時に伏線を張り、日本の貢献に期待を示した。トランプ大統領は高市氏が携えた訪米の「お土産」に満足し、日本は窮地を脱したように見えるが、今後も引き続き無理難題を突きつけられるかどうかは知るよしもない。
この点について米国のメディアは、日本は戦術的あいまいさを見せたが、船舶護衛の要求を完全にかわせたわけでは決してないと評し、日米同盟の従属構造は変わっておらず、トランプ大統領は日本を中東に巻き込むことを諦めていないため、船舶護衛の問題は引き続き日米外交摩擦の焦点となるだろうと読み解いている。注意すべきは、日本政府がなおもあいまいで矛盾した態度を示していることだ。3月22日、米国の国連大使は、高市氏がホルムズ海峡の航行の安全確保のため、海上自衛隊による支援を約束したと述べた。翌日、木原稔内閣官房長官は記者会見で慌てて否定し、日本として何か具体的な約束をしたとの事実はないと語った。茂木敏充外務大臣はテレビの対談番組で、日本の機雷掃海技術は進んでおり、米国とイスラエルがイランと停戦協議で合意すれば、日本は自衛隊を機雷掃海のためにホルムズ海峡へと派遣することを考えることになると述べた。すると、木原官房長官がまたもや慌てて釈明し、現段階でいかなる特定の措置を取ることも計画していないと語った。結局のところ、米国の戦略的な圧力なのか、それとも高市氏が日本国民を欺き、内々に何かしらの約束を交わしたのか。日本政府内で連携がうまくいっていないのか、それとも意図的に観測発言を行って探りを入れているのか。日本国民はしっかり見極める必要があるだろう。
三重の外交的苦境の中で日本はどこへ向かうのか
船舶護衛の問題は日米の戦略的な相違を再び露呈させた。いわゆる同盟関係や国際的ルールは、覇権国の思うままに翻弄される。日本は現在、三重の外交的困難に直面していることは明らかである。すなわち、一つ目は不義であり、米国の行為が国際法違反であることは明白だが、日本は正義を重んじて諫言することなく、その場を取り繕って唯々諾々と容認し、ひいては悪事の手助けさえしている。二つ目は不平等であり、日米同盟の中で一方的に負担を強いられながら、米国に対して際限なく妥協して忠誠を示し、国家の利益や国民の意思を顧みていない。三つ目は無知であり、日増しに衰退し、ますます過激化し利己的になってゆく覇権国家に盲目的に従属しつつ、自国にとって最大の隣国および貿易パートナーとの関係を悪化させ、長期的発展の余地を自ら切り捨てている。日本は今後、船舶護衛のような自国の命取りとなる問題に、ますます多く向き合わざるを得なくなることだろう。