「今まで、訴訟を起こすことは当事者にとって精力を消耗し、時間のかかる大変なことでした。それが今では、立件から判決まで訴訟当事者は家から出なくても、指先を動かすだけでスマートフォンを通して訴訟の全プロセスを実現できるようになりました」。こう紹介するのは、浙江省寧波市の中級人民裁判所(日本の地裁に相当)の沈路峰判事だ。
AI(人工智能)技術で裁判はオンラインによる遠距離審理が実現した
「移動マイクロ裁判所」は、訴訟当事者に利便性を提供すると同時に、裁判官の仕事を大いに助けている。訴訟の段取りや事務的な仕事にかかる時間が短縮され、裁判官は大量の事務的な労働から解放され、本業の裁判業務に集中できるようになった。
中国の裁判所は、昨年からインターネットを使った司法の新しいあり方を模索し、ビッグデータやブロックチェーンなどの技術の高度な応用を進めてきた。最高裁判所は今年の「両会」(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)での活動報告で、感染症防止・抑制の期間中に、スマート裁判所は大いにその役割を発揮したと報告した。
具体的には、全国でインターネットでの立件数が136万件、公判の開廷が25万回、調停が59万回、電子送達が446万回、ネットによる調査や口座凍結などの執行件数が266万件、裁判所のネット競売の落札総額が639億元、差し押さえなどの実施金額は2045億元だった。
広州市白雲区人民裁判所では、スマート配置によって訴訟手続きを簡便化している
「スマート裁判所の開設は、裁判システムと裁判能力の近代化を実現する重要な手掛かりであり、支えでもあります。特に新型コロナの感染症防止・抑制期において、山東省内の裁判所は訴訟の全プロセスをオンラインで処理することに重点を置き、全省規模で裁判所公務の一体化を図ってきました。これは訴訟当事者の提訴に役立つだけでなく、裁判の質と効率のアップも促進しました」と、第13期全人代の代表を務める山東省高等人民裁判所の張甲天所長は語った。
裁判所へのAI(人工智能)技術の導入は、案件の審理に役立つだけでなく、裁判のプロセスとその結果の透明性の向上にもつながっている。最高裁判所の統計によると、今年4月末までで、中国裁判文書オンラインで公開された公文書の数は9195万件で、中国司法プロセス情報オンラインが訴訟当事者に対して公開した文書は2900万件、公開された情報は15億項目に上っている。
第13期全人代の代表でもある江蘇省弁護士協会の車捷副会長は、こう語った。「私が杭州のオンライン裁判所で調査・研究していた時、現地の裁判所が情報化構築を通して司法公開を推し進め、監督のコストを削減していることに気づきました。今では、すべての裁判文書は、一部の例外を除いて原則公開です。公平公正だからこそ公開に耐えうるのです」(沈暁寧=文)
人民中国インターネット版 2020年5月29日
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