キャンピングカー人気じわり

2023-09-16 21:02:00

王焱=文・写真

人々の旅行に対する新しい考え方や、「詩的な知らない世界」への美しいあこがれに伴い、中国のキャンピングカー市場が静かな盛り上がりを見せている。 

台数はすでにアジア最大市場 

「中国国際キャンピングカー見本市」が6月16~18日、北京の北人亦創国際会議・展示センターで開かれた。2万平方㍍を超える会場には、全世界から100を超えるブランドのキャンピングカーやトレーラーハウスが集結。また、多くのキャンピングカーのパーツやアウトドアキャンプ用品も展示。3日間で1万人を超す愛好者らが詰めかけた。 

今回の見本市では、100種類以上のキャンピングカーの実物が一堂にお目見えした。中には、外見は少し大きなSUV(スポーツ用多目的車)にすぎないが、車内には折り畳みベッドやテーブル、家電、汚物回収装置などが全てそろっているキャンピングカーも。また、大型トラックをシャシー(車体)として使い、キャビン部分が高くそびえているものもあれば、昇降付きの2階展望テラスまであるキャンピングカーもあり、まるで可動式のとりでのようだ。出展されたキャンピングカーのほとんどは実際に乗車体験ができた。中に入ると、筆者のような外出嫌いの者でも思わずドライブ旅行に思いをはせてしまう。 

キャンピングカー文化は1950年代に欧米で興り、中国のキャンピングカー市場は2000年頃から成長し始めた。14年当時は、総販売台数がわずか約2000台だった。だが21年にはキャンピングカーの年間登録台数は1万5731台に達し、同年の成長率は約30%だった。また全国の総保有台数は、21年末までに約19万2000台に達している。年間の販売台数と総保有台数から見れば、中国はすでにアジア最大のキャンピングカー市場となっている。 

新型コロナの影響を受け、中国のキャンピングカー業界は22年前半、一時成長率が減速した。だが新型コロナの影響が薄れると、同市場は急速に回復し始めた。今年の第1四半期、中国のキャンピングカー市場は幸先良いスタートを切り、国産のキャンピングカーの販売台数は3206台で、前年同期比で33・53%増え、過去最高となった。 

広がるキャンピングカー人気 

現在、北米や欧州などの国と地域は依然として世界のキャンピングカー消費市場の90%以上を占めている。「中国国際キャンピングカー見本市」の副プロジェクトディレクターの張未楠氏によると、米国や欧州などの国と地域の市場では、キャンピングカーの保有台数は20年に人口1000人当たりそれぞれ30台と15台だった。しかし現在、中国市場では同1000人当たりの自動車保有台数は195台に達しているが、キャンピングカーの保有台数の割合は0・2台にも満たない。張氏は、中国では乗用車が徐々に普及するにつれ、個性的な消費が新たなブームとなっており、キャンピングカー市場にはまだまだ大きな成長の余地があると見ている。 

一般的にキャンピングカーは高価格で、その割には使用頻度が非常に低いため、長期的にニッチな商品にしかならないと見られている。だが、ますます多くの個人メディア発信者が、動画サイトで自らキャンピングカーを運転し、自由な旅行生活の様子を公開しており、一般大衆もこのように洗練された自由な旅行スタイルに心を動かされ始めている。1台数十万元から百万元以上もするキャンピングカーを購入することに比べれば、キャンピングカーのレンタルは、個人旅行の愛好者たちにとってより経済的に夢をかなえる手段となっている。 

昨年の国慶節の連休期間中、中国国内のほとんどのレンタルキャンピングカーは貸出率が100%だった。あるネット旅行サイトでは、レンタルキャンピングカーの予約コースを公開して5時間で1000件以上もの予約が殺到した。また今年の「労働節」(メーデー)の5連休中、レンタルキャンピングカーのサイトでは予約数が前年同期と比べ5倍以上も増え、一部のサイトでは夏休み分まで予約があふれたところもあった。 

成都のレンタカー会社でキャンピングカーを担当する王旭氏は、こう説明した。「メーデーの連休中、キャンピングカー利用客の平均レンタル日数は5日。わが社の祝祭日のレンタル料金は1日1400元(約2万8000円)で、平日は1000元(約2万円)未満だ。4、5人が一緒に乗れば、1人当たり数百元しかかからず、宿泊費と公共交通費の節約にもつながる」。また王氏によると、レンタル客の多くは地元の人で、一方で成都に到着後にキャンピングカーを借り、チベットに行く他の地域の観光客もいるという。このところ、雲南省や貴州省、チベット自治区を目的とした旅行ルートが一番人気となっている。冬になると、観光客の中には南に向かい、海南省まで春の息吹を求めに行く客もいるという。 

新たなキャンプモデルと課題 

キャンピングカー旅行の自由さも無条件というわけではない。キャンピングカーは大きいため、多くの駐車場では歓迎されていない。キャンピングカーのオーナーたちは朝目が覚めると、どこで水の補給や充電ができるか、汚水とゴミはどう処理するか、夜はどこに停めるか――を毎日考えなければならない。 

そこで、駐車や補給、レジャーとごみ処理ができる、キャンピングカーの乗り入れ可能なキャンプ場が登場するようになった。今回の見本市では、多くの観光地がPRブースを設け、キャンピングカーの愛好者たちに対し、車を駆ってそれぞれのキャンプ場を体験してくれるよう呼び掛けた。 

「キャンピングカー+キャンプ」は新たな産業チェーンを形成しつつある。張氏によると、米国と欧州には、キャンピングカーが乗り入れ可能なキャンプ場がそれぞれ2万カ所余りあるという。だが中国は、たった1000カ所余りだ。キャンピングカーが利用できるキャンプ場の不足は、キャンピングカー消費市場の発展を阻害する。キャンピングカーが乗り入れ可能なキャンプ場をいかにうまく運営し増やしていくかは、今後の大きな課題である。 


「2階建て」でテラスも付いた豪華なキャンピングカーも登場

関連文章