山西省大同市:「四大競争分野」に力を注ぎ描き出す新たな質の生産力の発展の青写真
新たな科学技術革命と産業変革を迎え、「因地制宜」(その土地の条件に合わせて適切な方法を講じること)による新たな質の生産力の発展は各地で新たな発展のチャンスとなっている。このほど、『中国報道』の記者は山西省大同市にあるハイテク産業パークのリーディングカンパニーの生産ラインを訪れ、大同市が描く「新たな青写真」について取材を行った。
際立った地理的優位性を持つ大同市は、京津冀(北京市・天津市・河北省)、太原市、呼包鄂(呼和浩特<フフホト>市・包頭市・鄂爾多斯<オルドス>市)の三大都市群が交わる中心に当たり、いずれの地域からも高速鉄道で2時間圏内に位置している。また、豊富な石炭資源を持つ大同市は中国の重要な石炭生産拠点の一つであり、鉄や銅、亜鉛、鉛といった鉱物資源にも恵まれている。さらに、大同市は20万4000台の大型および一定規模以上のデータセンター設計高密度ハウジング(標準ハウジング72万7000台に相当)、300万台以上のサーバーを有しており、演算能力の輸出都市としてその名を馳せている。
近年、大同市は科学技術(先進製造業)、エネルギー、農業、文化観光消費という「四大競争分野」で現地に合った適切な方法によって新たな質の生産力を発展させ、大同市の経済を飛躍的に成長させるべく計画を進めている。
あまたの業種を活性化させるスマートシティ
デジタル経済は製造業の質の高い発展において最も成長力、爆発力、けん引力を持つ産業だ。現在、大同市は京津冀データ・演算能力サービス拠点を全力で構築している。山西省で第一陣の新型スマートシティモデル都市である大同市は2022年以降、「五つのネットワークの融合」というグランドデザインにのっとり、京東科技がつくり上げた先進的な都市のデジタル基盤をよりどころとし、ネットワークを活用したワンストップ式による都市状態の感知、都市データの共有、都市ガバナンスの一元管理、民生サービスの提供、産業発展のスマート化などの面でイノベーションとブレークスルーを実現した。
天下大同アプリ(大同市デジタル政府ガバナンス一体化事業の発展を後押しするソフトウェア)は2022年8月に試験運用が始まり、同年10月に正式にリリースされた。このアプリは現在までにイテレーションが20回余り行われ、累計ユーザーは50万以上に達しており、公益情報の告知やメディア融合コンテンツの市民への配信に用いられるほか、コミュニティー掲示板、文化観光、就業・求人、問題の申し立てなど、さまざまな面で大同市民に利便性をもたらしている。大同市データ局の韓傑局長は、大同市は次のステップとして天下大同アプリをよりどころに都市ガバナンスが抱える課題や難題におけるより多くのコンテクスト応用を確立し、スマートシティによってあまたの業種を大いに活性化させていくと語った。
新たな質の生産力が後押しするエネルギー構造のモデルチェンジ
産業チェーンの発展過程で頭角を表すリーディングカンパニーは産業革新の主体であり、新たな質の生産力の発展における主力だ。山西省におけるハイエンド設備製造の産業チェーンの中核企業である中車大同電力機車有限公司(以下、中車大同公司)はリーディングカンパニーとしての役割を十分に発揮し、鉱山運輸設備や新エネルギー製品といった戦略的新興産業を包括的に育んでいる。
2021年、中車大同公司は自主研究開発・製造による全国初の水素燃料電池ハイブリット機関車を公開した。また、2023年には水素燃料電池の搭載効率が世界で最も高い水素動力機関車「寧東号」をラインオフし、世界の軌道交通設備におけるクリーンエネルギー応用の模範例となった。さらに、同年に研究開発が完成した全国初の電化道路および鉱山運輸システムのモデルプロジェクトは中国国内における技術分野の空白を埋め、世界の道路の省エネと二酸化炭素削減という難題の解決に中国の案をもたらした。
新たな質の生産力の特徴は「新」、鍵は「質」、足がかりは「生産力」にある。新たな質の生産力とは生産力の移り変わりを意味し、その核心こそがデジタル化とスマート化だ。中車大同公司企業文化部の李聖部長によると、中車大同公司では近年、デジタル化・スマート化建設を重要な足がかりとして産業のデジタル化プロジェクトを着実に推進しており、製造・組み立てライン全体の生産効率が30%前後向上し、「スマート製造」は同社による新たな質の生産力育成の成果を確かに示すものになっているという。
未来に向けて、中車大同公司の李暁軍副総経済師は、同社は新たな質の生産力をいっそうよりどころとして引き続き企業内の生産要素の配置を最適化し、絶えずハイエンド化・デジタル化・スマート化・グリーン化へのモデルチェンジを推し進めていくと語った。
大同市エネルギー局の王志清党組書記兼局長は『中国報道』に対し、大同市は現在、京津冀総合エネルギー供給拠点の構築に力を注ぎ、大同市のエネルギー体系の質を着実に向上させており、エネルギー革命によって大同市のモデルチェンジ発展を後押ししていると述べた。
「北斗+スマート農業」が後押しする農業の質の高い発展
北緯40度にある大同市は世界でも特に農作物の栽培に適したゴールデンベルトに位置し、気候は冷涼で、昼夜の寒暖差が大きく、日照時間が長いことから、京津冀地域への野菜の供給拠点となっている。近年、大同市は「栽培面積の安定化、単位面積当たりの生産量の向上、総生産量の確保」を目標とし、新たな質の生産力の農業における活用を発展させ、科学技術によって食糧生産を活性化し、スマート農業で質の高い発展を促進している。
「北斗衛星測位システムを使った栽培では苗の間隔を等しく18㌢に保つことができ、人の手で行う作付けよりも精確で、全体的な出芽率が高まります」と本誌記者に語るのは、大同市の雨沢農業科技有限公司で責任者を務める吉子平氏だ。測定結果によると、大同市平城区西谷荘村の東試験田の面積は1180ムー(1ムーは約6.67アール)で、1ムー当たり5997本の苗が植えられ、そのうち5421本が育ち、出芽率は90.3%に達した。周辺の農地で人の手によって植えられたトウモロコシの出芽率は83%であり、それと比較して7.3ポイント上回っている。
「『北斗+スマート農業』を支えとするトウモロコシの大規模単位面積当たりの生産量モデルを模索するのは、大同市の非常に優れた農業の総合的利益と競争力を高め、国家の食糧安全保障に寄与し、農業・農村経済の質の高い発展を成し遂げることが目的です」と大同市ブランド農業・科学技術情報発展センターの梁全主任は語る。
梁主任によると、大同市はトウモロコシの作付けの過程で数多くの新たな品種、新たな農業機械、新たな技術を用い、北斗衛星測位システムによるドローンを使った高精度な種まきを全面的に導入しており、トウモロコシの作付け、畝のビニールトンネル掛け、点滴灌漑を一括化し、1ムー当たりの苗数を増加させ、スマート化・無人化・精確化、さらにはコスト削減と利益増を実現し、トウモロコシの単位面積当たりの生産量を大いに高める上でしっかりとした基礎を打ち立てたという。
スマートサービスは文化観光の融合を推し進める新たなエンジン
近年、大同市は全国で密かに人気を集める観光目的地の一つ、さらには観光客が注目する人気スポットとなっている。大同市はこの好機をとらえ、文化観光の融合と新たな質の生産力に力を注ぎ、この二つの双方向の発展を実現している。
大同市は観光客の体験向上のため、現地ならではの文化観光資源をよりどころとし、大同市のスマート文化観光を育み、観光の全過程において観光客が素晴らしい体験を得られるようにし、より多くの観光客を続々と集めている。労働節の連休期間中、大同市データ局主導で構築された「天下大同」ミニプログラムは多くの観光客から絶賛を博し、ミニプログラム内には景勝地の予約や場所の確認、休日のイベント情報やその開催期間の紹介などあらゆる機能が備わっており、観光客はミニプログラムを利用してトイレや駐車場を探したり、景勝地やイベントを楽しんだりと、行き届いたサービスを受けられる。飲食・宿泊・移動・観光・ショッピング・レジャーを網羅するワンストップ式のサービスは、他の地域からの大同市を訪れる観光客に大きな利便性をもたらしている。
大同市文化観光局の安玉坤局長は本誌の取材に対し、新たなチャンスをつかみ、新たなチャレンジを迎えると語った。新たな質の生産力が文化観光の新たな発展をけん引する時代の到来に伴い、大同市は新たな質の生産力を打ち立てることを突破口として果敢に新たな取り組みを行い、人気や注目が一時的なものにとどまることなく持続的に観光客で賑わう文化観光産業の質の高い発展を成し遂げている。
ビッグデータや人工知能AI、バーチャルリアリティー(VR)といった新たな質の生産力の文化観光分野における応用の加速に伴い、大同市観光集散センターの李迎東董事長は文化観光消費におけるデジタルコンテクストの応用を加速させ、VR観光やスマートガイドシステム、デジタル考古・博物館、非代替性トークン(NFT)、バーチャル・デジタルヒューマン、景勝地などのメタバース化といった数多くの新たなタイプの融合業態を誘致・育成し、デジタル化によって文化観光産業の質の高い発展を後押しすべきであり、大同市の文化観光が未来に向かい、全国のデジタル文化観光の最前線に躍り出るようにする必要があると提言した。
新たな質の生産力の発展は長期的な任務および系統的なプロジェクトであり、関連する方面は多岐に渡る。大同市は一貫してイノベーションを発展けん引のための第一の原動力とし、「四つの競争分野」に注力する計画・合理的配置・一本化を早くから提起し、全く新たな青写真を描き出すことに懸命に努め、中国式現代化の着実な推進に貢献している。
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