縁の結びを掴む

2023-12-06 16:05:00

金晨希  温州大学外国語学院 

 

最近、私は一穂ミチの短編小説「回転晩餐会」を読んだ。この作品は心に深く響く作品だと思う。 

ある回転レストランの40年以上の常連客で、穏やかで礼儀正しい夫婦は年に一度だけ訪れる。妻の足が少し悪く、彼女を促すことなく、いつも夫が彼女を優しく手助けし、店員たちをいつも癒してくれる。 

傍目には幸せそうな夫婦は、実際には夫婦ではなく、60年前の飛行機墜落事故で残りわずかの生存者で、ただの「赤の他人」だ。あの時、このレストランで炎上した飛行機を目撃したので、毎年事故の日にここで食事することになった。 

窮屈な現実の中でお互い支え合いながら生きていた二人の関係は、恋愛感情かどうかはっきりしないけれど、深く切れない絆が結ばれているはずだ。この短編小説を読んで、私は人々との繋がりの大切さを感じ、そして日本の「縁」の文化に感動した。 

日本において「繋がり」または「縁」という文化は古くから受け継がれている。日本には数えきれないほどの神社が存在し、神社での定期的な参拝は日本人の日常生活の一部だ。この参拝の目的は神様との繋がり、または神様を通じて他の人との縁を求めることだと言える。 

思えば、日本の文学や映像作品などのほとんどは、縁の力を感じさせられる。日本の古典文学の最高傑作である『源氏物語』から、「千と千尋の神隠し」や「君の名前」などの人気映画まで、どれも「縁」をテーマにしている。 

他人との繋がりは非常に重要だ。日本の漫画の巨匠、手塚治虫は、「人生は一人じゃない、二人三脚で走らねばならんこともある」と述べている。人間は社会的な生き物であるため、外界との繋がりを持たないことは非常に難しく、辛いことだ。 

私はかつて日系企業で約一カ月の実習経験がある。当時、日常の日本語会話すらできず、毎日不安と緊張の中で席に座っていた。何もできないだろうと思っていたけれど、所属部署の日本人の先輩方が親切に手助けし、忙しい中で私にさまざまな課題を与えてくれた。彼らのおかげで、その一カ月の間に多くのことを学んだ。伝票整理などのスキルはもちろん、退社後の飲み会や実習終了時の社員全体への挨拶など、貴重な経験から日系企業の「家族のような縁」の文化を深く味わった。今でも、所属部署の先輩方と連絡を取り合っている。要するに、中国の個人主義的な文化と比較すると、日本は確かに縁を重視していると感じる。 

  縁は不思議なものだ。どれほど短い時間であっても、結ばれた縁は消えない。だからこそ、目の前の縁にしっかりとつかまってください。   

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