彼女たちの翼を折らないように

2023-12-06 16:08:00

吉妍  陝西師範大学  

 

冒頭で質問だが、同一の条件で両面均一のコインを投げると、表裏それぞれの確率はどのくらいか。約5割だ。そして、日本人口を男女別にみると、割合はどのくらいか。それも約5割だ。しかし、実際の社会現実は単純な数値以上に複雑だ。

東京大学の入学式の祝辞で中国で広く知られた上野千鶴子氏は、社会の性差別を問題視していて猛烈な批判を常に投げ上げている。彼女がその祝辞で言及した東大の入学率の男女差の「2割の壁」も強い反響を呼んだ。それよりも厳しいのは、厚労省の調査によると、2023年日本企業の女性管理職が1割程度だということだ。この差はいったいどこからなのか。その問題には、上野氏の『家父長制と資本制』に書かれた近代資本制社会に特有の女性の受けた二重の抑圧が答えになるかもしれない。

この本では、市場と家庭の二つの視点から女性への抑圧を分析している。一方で、家庭は女性労働を求めている。家内で女性の家事や子育てなどの労働について、マルクス主義フェミニズムは「家事労働」、「再生産労働」や「不払い労働」といった概念を初めて提唱し、いつも隠れていた女性労働の貢献を明らかにした。しかし同時に、市場も女性労働を求めている。近代資本制の発達につれて、市場が発展し、それに参入した人が増加し続ける。だが、家内労働に縛られた女性が進路が限られ、仕事と家庭の両立に直面しなければならない。

この本は1990年で発表されたので、現代に完全に相応しいことはできなくても、よい参考になれるし、性別にかかわる社会問題の手がかりも見つけた。現代でよく見られるのは、同じ仕事で給与が異なること、女性の二重労働、女性向けの仕事が二次的労働市場に限られることなどだ。そして、卒業したばかりの先輩方と雑談した時こそ、彼女たちの口ずから本当の現実を一瞥することができ、女子学生を待っている就職環境の厳しさを身をもって感じた。この本を読むことで、以上の状況は自然なのではなく、性別役割分業から徐々に発展してきたのだということがよく分かった。

これからは日本だけでなく、高齢化社会に入ったばかりの中国も労働力不足に悩まれるだろう。その点で、女性の労働力は社会発展にとっても不可欠だ。彼女たちの翼を折らないように、中日両国は女性の権利擁護、ジェンダー平等の促進のために全社会の協力を呼びかける必要がある。女性のニーズを考慮し、彼女たちの力を無視せず、排除せず、バランスをより良く取る社会を作れると思う。喜ばしいことに、今の私たちが目に見えるのは女性エンパワーメントはますます重要視されるようになっている光景だ。

男女格差が空前の関心を寄せた今に生きている私たちにとっては、現状を分析し、他人と支えあい、現状を変えるための知恵が何よりも大切だと私が思っている。未熟ながらも、力の及ぶ限りジェンダー平等の社会に貢献していきたい。

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