家族の愛を取り戻したい

2023-12-06 16:38:00

譚若氷  長春師範大学  

             

「両親と真剣に話をするのは、どれくらい前のことだったのだろうか。」『東京物語』という映画を見終わった後、私はそんなことを考えた。

『東京物語』が描くのは、非常にシンプルな物語だ。年を取った両親は東京に住む子供たちを訪ねるが歓迎されない。丁寧にもてなされるものの、子供たちは義務感に満ちている。人の子供のうち次男は既に亡くなっていたが、その妻である紀子だけが二人を温かくもてなし、両親は東京でやっと人のやさしさを得たのであった。両親は、多忙な長男や、精神的な余裕のない長女の生活を目の当たりにすることで、次第に子供たちの現状や理解し、最終的には家に帰ることにする。この旅行の間、大きな衝突はないが、日常生活を通して家族関係の崩壊と希薄な親子関係が明らかにされていく。

序盤、子供たちの無愛想な態度で怒りを感じる。しかし、二人がそれぞれに仕事に戻らないといけなくなる場面を見て、ふと思った。もしかするとこの二人は日々のストレスによって心が麻痺し、親子関係や家族愛といったものがもはや無くても良いものになってしまったのではないかと。

中日両国はどちらも東洋文化圏に属しており、家族観も多かれ少なかれ似ている。『東京物語』の描く日本の家族は、現代の多くの家族の実態でもあると言えよう。急速に移り変わる現在社会の中で、伝統的家族構造は歴史的な巨波に揉まれて崩壊し、親子関係は希薄になっている。社会の進歩は却って、人間らしさを失わせることになる

自分と両親は血のつながりがある最も近い家族であるはずだが、私たちの間には常に深い隔たりがあるようだと感じる。ある夜の食事風景を思い出す。家族三人で食卓を囲んで座っていたが、和気あいあいとした雰囲気はなく、沈黙の中で食器がぶつかる音だけが響いていた。母はどうにか空気を壊すべく、共通の話題を探そうとした。小さな優しい声色で私に学校はどうかと尋ねた。しかし、母の言葉は空しく部屋に響いただけだった。父は何も言わず、自分の料理に集中させていた。かつては温かさと楽しさに満ちていた家族だったはずなのに、その時は誰もが口を封じられたように黙りこくって、残酷なほど静かだった。

人はいつも、まだ自分にはたくさんの時間が残されていると思ってしまう。しかし実際はそうではない。私が両親を無視している間に、二人に残された時間は日に日に短くなり、白髪になって行く。そのことに気づき、これまで両親との間に合った距離を縮めて行こうと決めた。例えば両親にビデオ電話をかけたり、折に触れて祝日などに挨拶をしたり、時間がある時は一緒に旅行に行ったりするといったように、努力してコミュニケーションを取り続けた。関係は少しずつ良くなってきたように思える。父と母を空しい気持ちにさせないよう、私は今とこの先を大切にして、かつて軽視していた家族の愛を取り戻したいと思う。

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