『花のワルツ』、人間の勇気と愛

2023-12-06 16:44:00

黄宏鈺 河北工業大学

 

もし、一番印象深い作家は誰だろうと聞かれたら、僕の答えは川端康成だろう。一番愛読する小説は氏の『花のワルツ』だ。高校の時代に学校の図書館で読んでいたが、今になって読み返して見ると、何か異様な深みさえ覚え始めて、つい表現の中身を探求してしまいたくなる程、興味を引き寄せられる自分がいる。はじめ、尻切れ蜻蛉のような舌足らずさを覚えていたが、よく読み始めると、不要な表現をすべて切った、とても洗練された作品に思えて来た。さすが川端康成、さすが和式の哀れと美しさ。

『花のワルツ』は勇気と愛に関わる短編小説だが、少女たちのほのぼのとした思いやについての描写が実に感心する。少女の完璧な容姿の表現がまったくなく、内面からくる細かな顔の表情や、欠点も描きながらも、繊細なる少女なりの魅力を表現できる『花のワルツ』は実に素晴らしい。

僕には『花のワルツ』が好きな理由は文章自体が美しいのみならず、ほのぼのとした恋の裏にある主旨にも特に気に入った。

舞踊研究所で舞踊の学習に夢中になった3人の弟子の三角関係を描いた物語だが、弟子の南条が右足不自由になってしまいもうダンサーとして生きる理由がなくなったが、憧れた少女の星美しい踊り姿を見ていた彼は、気が狂ったように踊りの魅力に励まされ、心を新たにしてダンスを再開しようとした

僕が一番好きなシーンは、南条と星枝が森の中に踊っていたシーンだ。星枝と南条にとって、芸術は第一、芸術は万能。舞踊という芸術には体の痛みを癒す魔法がある。すなわち、勇気と愛を抱える人間にはあらゆる苦痛を乗り越える力があるという主旨は僕が好きだ。

世を渡ると、必ず数え切れない苦しみを試練することは、人間の宿命だろう。私たちはあたかも未知の世界に踏み込む旅人のようだ。つまずきのない平坦な道を過ぎる時はもちろんいっぱいあるが、険しい山を登る場合もきっと少なくないだろう。もし淵に落ちたら、どうするか。もうこのまま諦めて人生の幕を閉めてしまうつもり?それとも諦めずに頑張って、再び勇気と愛をもって旅をするか。南条は後者になった。

『花のワルツ』だけでなく、川端康成の他の作品の情景描写もうまい。読んでいるうちに、頭の中で素晴らしいイメージやシーンがどんどん湧き出てくる。またヒロの心の寂しさや孤独を表現するのも素晴らしいという点も氏の作品の特徴だと称されるが、それは僕が氏の作品を愛読する一番大きい理由ではない。一番大きい理由は氏の人間の勇気と愛を讃える主旨にある。

勇気と愛のために宇宙に星が輝く。  

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