一リットルの涙

2023-12-06 16:48:00

姜雨晨  上海初盟教育科技股份有限公司

 

この本を紐解くのは三年ぶりだ。当時読んでいたとき、紙の色がこんな風に黄ばんでいたのか、もう覚えていない。

だが、今再び、ページをめくるにつれ、難病と闘い続けた少女の心の葛藤がすこしずつ思い出される。彼女は将来への期待に胸を膨らませる一方、病状の進行に不安を覚えていた。体を動かす力を失い、苦しみつつ、その時、まだできることを彼女は精一杯する。私は『一リットルの涙』という作品に、何度も、何度も心を揺さぶられた。

『一リットルの涙』は木藤亜也という少女が、14歳から20歳にかけて書いた日記で、亡くなった後、母親が彼女の闘病の様子を整理して出版したものだ。脊髄小脳変性症という難病の進行と闘い続け、その間の生活と心の葛藤が日記に書き綴られている。手と指がだんだん硬くなるなど、病気の進行につれて書くことも難しくなっていったが、彼女は手が動かなくなるまで書き続けた。

私が初めてこの作品を読んだのは大学生の時で、亜也の強い心といつまでもあきらめない姿に感動して何度も涙をこぼした。そして、私自身も大学卒業後、父が悪性腫瘍という病気を患い、腫瘍が脳に転移し、言語中枢が病魔に侵されたせいで意思疎通が難しくなり、手や指の動きも自分の意のままにならなくなり、また書けなくなることを、看病しながら見ていた。

それではじめて、この作品の中に描かれている、自分のできることがすこしずつできなくなるというのは、本人にとってどれほど絶望的なのか、どれほど衝撃的なのか、分かったような気がした。それでも亜也はリハビリをし続け、病気の進行をすこしでも止めようと頑張った。そのような彼女の闘いに私は勇気をもらい、自分も何度も立ち直り、父の闘病に付き添った。

父はある日、歩くときふらふらして、転びそうに見えたのを私が支えてあげたが、寝たきりになってしまった。そのふらふらとした歩みが最後で、二度と歩けなくなった。病は患者の体にどれほど痛みを与えているのか、どれほど精神的なダメージを与えているのか、付き添いの私はそれを知りながら、少しも父の苦痛を分担することができなかった。父は一年以上にわたる闘病生活で、内心にどんな葛藤があったのか、話してくれたことはなかった。しかし、きっと、だんだん歌えなくなったり、歩けなくなったりするなど体の変化を自覚していて、日記に書いた亜也と同じように、一リットルの涙を流していたと思う。

父が亡くなるまで、私は何度もこの本を紐解いた。この本によって、私は、「病気よ、進行を止めろ!」といくら願っても、病気は進行していくことを知った。でも、この本によって、私は何度も絶望から立ち直ることができた。人間は不意な病、思いがけないことに襲われるが、そんなことには負けないと宣言することができる。   そして、乗り越えて見せることができる。そう教えてくれたのは、亜也ちゃんだった。亜也ちゃん、本当にありがとう。

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