一碗の茶から平和を

2023-12-07 12:05:00

汪皓楠 北京外国語大学  

 

茶道に興味を持って、岡倉天心の『茶の本』を愛読している。主題である茶とは、飲み物の茶から茶室、茶を飲むまでの儀式など、茶に関連する全ての情報が統合されたモノを意味している。また、茶道を仏教、道教、華道との関わりから広く捉えながら、茶道を通じて日本人の精神文化や生活観、美意識などを解説している。

天心は茶室にて一杯の茶を飲むことから多くのことを学べるべきだと主張する。そのため、私も自分の茶道体験から何を学んだかを常に考えている。高校の時、修学旅行で東京に行った。ホストファミリーのおばあさんは茶道の裏千家の先生で、私に茶道を体験させてくれた。茶筅を使って抹茶を立てるのは物珍しく新鮮だった。私も中国の茶芸を学んでいたので、中日の茶文化について語りあった。その結果、道具や作法はかなり違っても「お茶で友をもてなす」という精神は共通していることに気づいた。これは、私にとってかけがえのない一期一会だった。

しかし、このような一期一会の機会は、最近少し得難くなってきたようだ。ここ数年、双方の国民感情が悪化する傾向があるからだ。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って民間の直接的な交流が途切れてしまった。すると、SNSなどを通じて誤解が生じ、認識の違いが大きくなり、互いに不信感が高まっていった。そして、相手を拒否したり激しく非難する現象が見られるようになっているのだ。

これはどうすれば改善できるだろうかと考えていたようなある日、天心が『茶の本』を書いた発想が思い浮かんだ。今では日本の文化を理解するのに必要不可欠な存在になっている『茶の本』はもともと茶道を欧米に紹介する目的で書かれたのだ。つまり、天心にとって『茶の本』は現在を永遠とするための美の経典だけではなく、東洋と西洋が理解し合い、世界が調和することを願った白鳥の歌でもあるのだ。

要するに、両国の関係を改善するためには、まず茶道に代表される民間の文化交流を強化し、民間友好の基盤を固める必要があるだろう。その際、常に互いを尊重しあい「お茶で友をもてなす」というゆとりのある心を持つべきだ。こうしていけば互いの関係を良くしたいという気持ちが高まり、中日友好事業のたいまつを次の世代に伝えることもできるのではないかと思う。お茶は平和を象徴するものなため、互いに落ち着き、お茶でも飲みながら相談しようといった友好的な態度を持てば、問題も順調に解決できるのだ。中日国交正常化50周年に当たる今、両国国民の好ましい関係が何代にもわたって続くよう、「お茶で友をもてなす」という精神で友好を深めていくことを祈っている。

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