最後の人魚を守ろう

2023-12-07 14:24:00

曽静美  大連海事大学  

 

夏の早朝、窓から爽やかな風が吹き、私はそっと『海女文化』を閉じ、深い思索にふけった。これは私が机に向かって『海女文化』を読んでいる場面である。 実は、海女という職業について、私は何年も前から少し知っていた。海女というのは呼吸装置を持たずに海に入り、海産物を獲る女性だ。 その本は、海女たちの歴史、文化、そして現状を描いたドキュメンタリー作品であり、中には海女たちへのインタビューも数多く含まれている。

特に印象的だったのは、子どもの頃に海女さんの仕事ぶりを見て、獲れたばかりの魚介類をいつも味わえた幸せな思い出から海女になった井村千春さんの話だ。 「海が大好きで、海に入ると、自分が自由な魚になったような気がして、日常から離れ、海の色とりどりの世界を泳ぐことができる」このような独創的な生き方は望ましいと思う。

しかし、このような生き方は現代の社会から消え去ろうとしている。 近代工業文明の影響を受け、現代人は人手の代わりに道具を使う傾向があり、漁具は常に更新され、買い替えられる。そして海女は次第に疎外され、繁栄していた時代には数万人いたのが、今では2000人以下にまで激減し、今残っている海女のグループは海上の最後の人魚になってしまいそうだ。

近代文明の最大の特徴は、工業化、都市化、物質文明の発展のことである。 したがって、経済効率の悪い海女の文化は時代錯誤だとみなされる。 しかし、精神的な豊かさという点では、海女文化は逆に現代の工業文明よりもはるかに進んでいると思う。 海に入る過程で、目だけで海洋生態系の健全性を確認できる海女たちは、海洋資源を乱獲しない。 自然に畏敬の念を抱き、自然との共生を図りながら、自然とのバランスを長年に保っている。 長い目で見れば、彼らは海洋環境の保全に貢献し、鑑賞に値する手つかずの美しさを私たちに提供してくれているのだ。

「さくら、さくら、野山も里も見渡す限り、霞か雲か、朝日に匂う」これは海女たちがよく歌う歌だそうだ。桜は短い間開いては消えていくと言われるが、今の時代に海の間を静かに漂う人魚姫の姿をした海女たちも桜のように消えていくようだ。 私たちは彼女たちのために何ができるのだろうか。少なくとも、海女の存在を無視せず、もっと注目すると同時に、身近なところから温室効果の一因とする二酸化炭素の排出を減らし、環境汚染による魚の数量減少を遅らせ、より良い生活と作業環境を与え、美しい人魚姫の歌声が消えないようにするべきではないだろうか。

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