外へ飛び出してみよう

2023-12-07 14:29:00

楊剣萍  外交学院  

 

『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』という本を読んだ。

それによれば、日本には「察する文化」の影響によって、「多数派に合わせなければならない」という不文律が存在している。それが同調圧力となり、ひきこもりやいじめなどの社会問題が深刻化しているという。

同調圧力に苦しんでいるのは日本人だけではない。儒教思想を重んじる中国では、他者を思いやり優先すべきという「仁」の思想こそ人が目指すべき美徳であると考えられている。しかし、その追求が過ぎると、「皆、どんな場面においても常に他人のことを優先すべきだ」という不文律が生まれ、同調圧力が生じる。そしてそれに従わない人は、「身勝手だ」「人間味がない」「思いやりのない人間だ」と非難される。その結果、中国社会では何かの決断や選択を迫られた個人は、その判断基準を「自らの考え」よりも「周囲の意向」「社会の規範」に置く人が多くなっている。

言うまでもなく、他人のことを慮る姿勢や気持ちを持つことは称賛すべきことだ。しかし、それは強要されるべきではないし、強要されれば人々は抑圧感と閉塞感を抱くだろう。

またさらに、中日いずれの社会でも、同調圧力に圧倒され「皆と同じように生きられない自分はダメな人間だ」と自己を否定している自己肯定感の低い人は多い。自己肯定感の低さは「皆と同じように」と教えられてきたことが原因だろう。それによって、他人の逸脱にも敏感になり、より一層人や社会を信頼できなくなっているのではないか。

これらの問題に対して、私たちはどう対処すればよいだろうか。

例えば、高気密な部屋に住み続けると、目に見えない汚れや湿気などが溜まり、人の心身に悪影響を及ぼすだろう。そこで、窓を開けて新鮮な空気を取り込むことで、一気にリフレッシュすることができ、快適な気分になる。社会生活をしているときも、ドングリの実のような一つの集団に閉じ込められないように、自ら風穴をあけて、外にある複数の集団やコミュニティに属して、渡り歩き、風通しをよくすべきだ。それにより、フィールドは一つではないと意識し、もう少し自由闊達に生きることができるかもしれない。

つまり、はびこっている同調圧力から自由になるには、「世界の外」へ踏み出す小さな一歩が必要となるのではないか。たかが一歩、されど一歩。たくさんの「一歩」を積み重ねていけば、それが「道」となっていく。その道中には、新しい発見や出会いの喜びもあるだろう。

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