家紋を通して見えたもの

2023-12-06 15:50:00

付沢熙  南京師範大学附属中学江寧分校  

 

中学校の卒業旅行で一度日本の京都に行ったことがある。何より忘れられないのは、古めかしい町並みのほか、老舗の軒先に掲げられ、風にはためいている暖簾や菓子屋のかわいい看板である。4歳から絵画を学んでいるせいか、暖簾や包装紙の上のさまざまな紋章に心が引かれた。黒と白の混じっている素朴な彩りと簡素なシルエットとの組み合わせには、なんだか不思議な歴史的な物語を含んでいるのではないだろうかと思った。その後、日本文化を知っている母にこれらの紋章は日本の伝統的家紋から生まれるのであると教えられた。

また、妙なる紋章については、わたしにとっておもしろいエピソードもある。日本の旅行がいよいよ終わり、国内友人のためにお土産を準備するとき、お菓子の味が分からなくて戸惑った場合、そのお菓子の包み紙に印刷してある紋章によってだれに送るかを決める。花びらの紋付は女性の友達に、弓矢の紋付けは男性の友達に送った。非常に気に入る紋章を見かけると、お土産の包装紙をめくりとって収集しておき、上包みのないプレゼントさえ送ることがある。

帰国するなり、紋章に関する『家紋を探る』*という本を借りて興味深く読んできた。家紋とは日本人の各家の地位、家柄、家系などの印としてつける紋章である。そして、家紋の起源は、平安時代ごろ公家は社交活動に出席するとき、牛車を利用し、装飾や色が似ている牛車は見分けにくいので、車の目立つ位置にマークをつけたという説がある。つまり、日本の最初の家紋は他人のものと混乱を防ぐ目的があった。歴史の変遷にしたがい、家紋は貴族から武士へ、また庶民の間に伝わり、だんだん日本式のシンボルとなった。さらに、家紋のデザインは円の形をしており、黒と白の二つの色だけ用い、縁起のいい動物や植物の一部を取って簡略化し、「家」という意味を込めている、という特徴がある。日本では、家紋は古くから家族の神聖なる象徴として、優れた家風を伝承したり、家運の栄えを守ったりする機能をしている。この本から、以上のようなことがわかった。

ところで、これほど小さな家紋に、思いがけず魅力的な世界が隠されている。なぜ何百年も続いている老舗の店頭暖簾や商品に素敵な紋章が描いてあるのか、という謎がやっと解けた。大家族がなくなり、核家族が増えつつある現在では、海外留学や出稼ぎでばらばらした家族のメンバーをつなげるのに家紋が役立つのではないだろうかと思う。家からどんなに離れても器具や衣服の上の家紋を見かけると、人々の心を一つにして自慢の家族の歴史を継承しようとするためであろう。ちなみに、中国でも、ただいま優秀な伝統文化を受け継ぎ、家族が団結して家風を輝かすようと若者たちに呼びかけている。そこで、日本の家紋によるヒントを受け、イベンドや儀式において家族のような親近感に富んだバッジや紋章を作って人々に配ったらみんなの心が結びつくかもしれない。実に、日本と中国だけでなく、世界はまるで家のように、各国は家族のメンバーのように、兄弟のような各国の人々は睦まじい家庭、平和な世界を築くために家紋のような親近感につながるものを発見し、利用しなくてはならない。

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