自分の「キッチン」を見つけよう

2023-12-07 15:52:00

唐孝瑄 海南師範大学  

 

少し前のことだったが、身近な友人がうつ病になった。何もしたくない、生きがいも分からないという彼女の話を聞くと、慰めようとしたかったが、言葉はなかったのだ。

「大学に受かれば、悩みはなくなるよ」とか、「大学院生になると、人生はちょろいよ」とか聞いたことがある人は大勢いるだろう。そのため、怠けず車輪のように回り続けている。何かに追われるような私たちは、時間を無駄にしないように、自分に一体どんな人間になりたいのかと聞くのは一度もなかった。たまに、頑張る意味が分からなくなるので、私たちはその友人のように突然何もしたくない日が出てくるのだ。これも当たり前のことだろう。そう考えると、彼女の気持ちがよくわかってきた。

人生はまさか徒労の積み重ねなのか、とふと自問した。吉本ばななの『キッチン』の中で、主人公のみかげは祖母を亡くしてから、肉親が一人もいなくなった。まもなく雄一と彼の母であるえり子に出会って、楽しい時間を共にしばらく過ごした。その後、えり子が死んだ、みかげは大きな衝撃を受けた……彼女は、短い人生に、何回も死を迎えたんだ。「私と台所が残る」を読んだ時、「天涯孤独」という気持ちをしみじみ感じた。

しかし、本の冒頭にある「どこのでも、どんなのでも、それが台所であれば食事を作る場所であれば私はつらくない」というように、みかげは人生を徒労なことだと思うことはないのだ。食事を作っていれば落ち着きができ、どんな悲しいことがあっても、台所に戻れば大丈夫だと思えて、こうして大変な時を乗り越えられた。

自分の居場所があれば、外の世界でどんなつらいことがあっても平気だと、この本が私に教えてくれたものだ。

そういえば、冒頭に言った友人、最近は、再び元気を出そうとして、好きなことを見つけようとしているんだ。

「今日は、好きな本を見つけた!」

「ケーキを買って、一緒に食べる?」

……

些細なことばかりだが、彼女が生活への情熱を取り戻しつつあるのを見て、本当に嬉しかった。実は、人生はそのような些細なことで成り立っているのではないだろうか。

どんな人間になりたいのかは、すぐわかるものではないだろう。しかし、そのような些細なことの中で、自分は何が好きで、何ができるのかをゆっくり探っているうちに、分かってくるのだと思う。確かに、一生かかっても自分が一体どんな人間になるかと分からない人も少なくない。しかし、人生とは一体何なのだろうのようなことを繰り返して考えているうちに、いつの間にか時間が流れていく。それでも、少なくとも人生を徒労なことだと思わなくなるだろう。

みかげにとって、居場所は台所なので、汚い台所であれ、ピカピカしている台所であれ、台所があるなら、それで安心できる。そして、私たちは、自分の居場所を見つければ、茫漠とした未来を嘆くこともなく、目の前のことを楽しんで、幸せを見出すことができると信じる。

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