党大会報告を読んでの感想

2022-10-20 16:43:03

文=横浜国立大学名誉教授 村田忠禧 

「報告」を読んで中国の将来に希望が湧いてきた。とりわけ「法治中国の建設」に共感を覚える。改革開放政策を真剣に取り組んできた結果、小康社会の全面的実現が達成された今日、人々は各人の夢の実現を目指すことが可能となるが、夢は一様ではない。それが他人や公共の利益を損なうことがあってはならず、矛盾、対立が発生した際の解決の仕方なども含めたルール化が必要となる。西側の色眼鏡を通してみる中国の法治は監視と統制の統治となる。しかし人々は法に反しない限り、夢の実現を目指して奮闘する自由が得られる。中国の民営企業の活発な動きにそれは見て取れる。

自由を得るためには遵法精神の定着が欠かせない。もちろん主体的、客観的に条件が備わっていなければならない。学習・研究が不可欠だ。

「報告」は教育、科学技術、人材を社会主義現代化国家の全面的建設の基礎的で戦略的な支え、科学技術を第一の生産力、人材を第一の資源、イノベーションを第一の原動力と位置づけている。近年の中国の科学技術の発展は実に目覚ましい。一例を挙げると昨年6月に打ち上げられた有人宇宙船「神州12号」は7時間もかからずに宇宙ステーション「天和」とのドッキングに成功。この報道に接した時の驚きは忘れられない。アメリカやロシアはいまだ2日間は必要としている。

西側の言論では中国の政治体制を共産党の独裁、民主主義が存在しないかのように語られることが多い。彼らにとって大切なのは議員の選出が一般の選挙で行われるかどうかにある。西側民主主義では、票に繋がらないことには関心はないし、ましてや票を失うような問題には関わりたくない。選挙に勝利し議員になったら、国民から権限を負託されたものとして、自分及びその支持団体の利益のために働くが、一般の国民との関係は希薄になる。しかし選挙がまた近づくと、自分に投票してもらうよう、急に国民との距離を縮める振る舞いを見せる。民主主義が衆愚政治に陥る危険性は常に存在している。

中国における人民代表も選挙によるが、選出方法はもっと複雑である。55の少数民族には必ず代表を出す権利がある。14億の人口のうち、1万にも満たない民族が現在9ある。すべての民族が自己の代表を持つことで、真の民族平等が守られる。他にも民主諸党派や各界、各分野にも選出枠がある。つまり中国全体の意見が反映されるよう代表数の調整がなされた上で、定員より多い候補者による差額選挙を実施している。協商民主の一つの現れである。

今回の「報告」で注目すべき新しい問題提起は「全過程の人民民主」という表現である。この表現を私は不勉強のせいでこれまで知らなかった。民主選挙、民主協商、民主政策決定、民主管理、民主監督を実行することを指すとのこと。それぞれの過程における党の指導と民主はどのような関係にあるのか、具体的な事例が思い浮かばない。中国でも新しい概念なのではなかろうか。中身がよくまだ分からないが、これからの中国の民主主義の発展を考える上で興味深い問題提起であると思う。

中国の全過程人民民主と西側の民主主義がどう違うのか、両者を客観的に比較研究すべきである。そうすれば互いの長所・短所が明らかになり、互いに学びあえば双方の民主主義の改善と発展に役立ち、相互理解が深まるであろう。

 

人民中国インターネット版

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