田舎の自然生かし民宿経営 森林守る民間防火スタッフ

2018-05-22 12:36:10

 

高原=文  馮進=写真 

 北京市懐柔区には山が多いため、山火事などの防火管理には慎重を期している。アジア太平洋経済協力会議(APEC)の開催地だった懐柔区では、当然のことながら、防火管理がいっそう厳しく行われていた。林業局に属する森林消防隊員はもちろんのこと、各村や鎮の民間森林防火管理スタッフまで、例年より半月繰り上げて重点防火期間の待機状態に入り、いつでも緊急事態に対応できるよう備えていた。 

神堂峪村の王君節さんは民間森林防火管理スタッフの1人。今年の10月中旬から来年5月までの7カ月にわたる重点防火期間において、ほかの5人の村民と共に村の森林防火管理を担うこととなった。

民宿始め家事との両立 

王さんが暮らしている神堂峪村は有名な神堂峪観光区に隣接し農村体験型観光を主な収入源とする村。村内には釣り堀やフルーツ狩り園があり、ほぼすべての農民が何らかの形で農村体験型観光に関わっている。週末になると、山登りや、魚釣り、そして、田舎のきれいな空気を吸い、北京北部の農村生活を体験するために、都市部から数多くの人がやってくる。 

王さんは村で民宿を最も早く始めた。結婚前はインスタントラーメン生産工場で働いていたが、月収はわずか300数元(現在1元は約18円)だった。そこで、1990年代の初めに思い切って工場を辞め、民宿を始めた。夫は村の外で建築工事を請け負い、息子はまだ学校に通っているため、この二十数年、客室の掃除、食事の用意から、家の果樹園と野菜畑の管理まで、すべて王さん一人の肩にかかっていた。 

2006年、この数年間に民宿の収入で貯めた三十数万元で、客室を新たに5部屋作った。観光客を泊めることで毎年の収入が4、5万元になる。「私はもう40代で、出稼ぎだと1年働いても2万元そこそこにしかなりませんし、自分の時間は取れません。我が家で民宿をやっていると、家事との両立もできるので、満足しています」と王さん。

村のため、APECのために 

10月の中旬から、王さんは民宿以外に、村の民間森林防火管理スタッフという新しい仕事を任せられた。村には78世帯、178人おり、毎年抽選により、防火管理スタッフ未経験で18歳以上の村民から6人を選び、その年の防火管理を任せることになっている。一人につき毎月440元の手当てが政府から支給される。主に、道路脇の除草、たきぎ拾い、そして、道路両側に幅20㍍の防火路を確保する仕事などがある。山に入った村民または観光客に対し、線香や紙銭(紙幣を模したものを燃やすことで死者に届くと信じられている)を焚くことを禁じ、指定範囲外でタバコを吸ったり、火を燃やさないように喚起する。また、村に設けられた2カ所の見張り所に、その6人を分けて配置し森林に火や煙が出ていないかなどの状況を24時間体制で見張り、異状があったら即座に村民委員会に報告する。村民委員会は報告を受けると、消防隊または全村民を動員して消火に向かう。 

王さんによると、2011年に神堂峪村にある雁栖鎮で大火事が起き、数百ムー(1ムーは約667平方㍍)に及ぶ土地が焼き尽くされたという。冬に雷は落ちないし、高圧線などもないため、自然発火の可能性は低く、やはり人為的要因によるものだと推測されている。そのため、ここ数年、地元の森林防火管理を一段と厳しくし、深夜でも地元の林業管理局のスタッフは必ず各村の防火管理スタッフが見張りについているかどうかをチェックする。 

王さんは数年前に一度、防火管理スタッフになったことがあるものの、今回は、地方の学校に通っているため村にいない息子の代わりとして参加している。APEC開催前には、「観光のオフシーズンで、手が空いているので、村のために、そして、北京APECのためにも力になれたらと思いました。APEC開催後、より多くの人々に懐柔を知ってもらい、遊びに来て欲しいです」と語った。

最新技術で負担軽減 

日頃の防火・消火活動において、王さんらが使っている用具は非常にシンプルで、家庭用消火器のほかに、家にある鎌、シャベル、タイヤで作った手製の消火グッズしかない。監視もほとんど肉眼で行うため、行き届かないところが無いとは言えない。そこで、地元では最新の防火設備を多数導入した。 

たとえば、神堂峪村、慕田峪長城、九龍山墓地をはじめ八十数カ所の重点防火地域で、観光客がピクニックに来たり、親族を供養したりする場合、喫煙、爆竹、線香、紙銭など、山火事になりやすい危険な行為はしないよう北京市森林公安局からの注意が流される装置が設置された。このように、みんなで火事を防ぎ、森林の美しさを共に楽しめることが期待されている。 

また、懐柔区は防災緊急指揮システムを導入し始めており、2015年までに完備する予定だ。同システムは監視カメラ、気象データ収集、火勢分析、森林害虫監視および緊急指揮調整などの機能を通じて、森林火事の予防と即時対応、害虫の予防と対応、無断伐採の抑制に大いに役立ち、各村・鎮の民間森林防火管理スタッフの仕事量を大幅に減らすことができる。

 

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