中国の日本問題専門家・楊伯江氏 高市発言にみる「日本の新型軍国主義台頭加速の動き」に警戒を

2025-12-04 15:28:00

日本の高市早苗首相は11月7日の国会答弁で、日本が台湾海峡情勢に武力で介入する可能性を示唆し、中日関係を両国の国交正常化以降で最も危機的な状況に追い込んだ。この発言は直ちに、国際社会の幅広い反発を招き、中国側は厳正な抗議を行った。しかし、高市首相は26日の党首討論でも、「日本はサンフランシスコ講和条約に基づき、台湾に対するすべての権利を放棄しており、台湾の法的地位を認定する立場にない」と述べ、発言の撤回には応じていない。

中日関係の最前線で起きたこの一連の動きを、中国の学術界はどう捉えているのか。中国社会科学院日本研究所の楊伯江所長に話を聞いた。

■高市発言は国際法と国際関係の基本原則に違反 

高市発言の問題点として、楊所長がまず指摘したのは、「国際法と国際関係の基本原則を公然と踏みにじっている」点である。

楊所長によれば、『カイロ宣言』『ポツダム宣言』『日本の降伏文書』など一連の国際法的文書は、いずれも台湾が中国に返還されることを明確に定めている。1945年10月25日、中国政府は正式に台湾に対する主権行使を回復し、台北で降伏調印式を行った。これにより台湾は、法理上も事実上も中国に復帰した。

その後、1971年の国連総会決議第2758号は、中国の国連における代表権問題を最終的に解決し、台湾が中国の一部であり、国連への加盟は絶対にあり得ないことを確認した。ここで重要な点は、中華人民共和国政府が中華民国政府に取って代わり、中国全体を代表する唯一の合法的政府となることは、あくまでも政権の交代にすぎず、中国の主権と固有の領土にはいささかの変更も生じていないという点である。

また、現在、181カ国が一つの中国の原則に基づいて中国と国交を結んでいることからも、「一つの中国の原則は国際社会の普遍的コンセンサスとなっていることは明らかだ」と楊所長は指摘する。

■高市発言は中国への内政干渉 

楊所長は次に指摘したのは、高市発言が中国内政を乱暴に干渉し、中日間の四つの政治文書の精神に明らかに背いているという点である。 

1972年の「中日共同声明」では、日本は台湾問題に関する中国側の立場を「十分に理解し、尊重する」こと、「ポツダム宣言」第8条を遵守する立場を堅持することを明記している。1978年の「日中平和友好条約」では、これを条約として確認し、1998年の共同宣言では日台関係を「民間および地域的な往来」に限定するとともに、初めて「中国は一つ」という立場を条文として明文化した。さらに2007年12月28日、当時の福田康夫首相は台湾問題に関する包括的な見解を示し、「二つの中国」や「一中一台」を認めず、「台湾独立」を支持せず、台湾の国連加盟も支持せず、台湾当局が「国連加盟を問う住民投票」を行うことも支持しないと表明した。

楊所長は、「高市発言は、こうした法理上の限界を踏み越え、日本歴代政府の約束を空文化しようとするものだ。中日の相互信頼を深刻に損なうだけでなく、『条約は遵守されなければならない』という国際法の原則にも重大に反している」と批判する。

■高市発言は極右思想の「集中的な噴出」 

11月26日に日本の国会で行われた党首討論で、立憲民主党の野田佳彦氏は、高市首相の「存立危機事態」発言について改めて問いただした。これに対し高市首相は、「カイロ宣言」や中日間の四つの政治文書ではなく、中国が参加しておらず、受け入れてもいない「サンフランシスコ講和条約」を持ち出して答弁した。この点について楊所長は強い疑問を呈する。 

楊所長は高市首相の姿勢について、「日本の右翼勢力が長年にわたり、戦後の法的基盤を『黙殺』してきたという誤った認識の延長線上にある」と批判。その上で、高市発言は日本の極右思想が「集中的な噴出」したものであり、軍国主義の残滓の根深さを浮き彫りにしていると指摘する。

戦後の日本は、民主化改革を通じて軍国主義の制度的基盤を根絶した。しかし、冷戦時代には米国の庇護のもと、多くの戦犯や公職追放者が政界に復帰し、歴史修正主義を推し進めた。そして現在、「専守防衛」は事実上骨抜きとなり、再軍備が加速している。

楊所長はこのような経緯に着目し、「高市首相とその支持基盤は、長年にわたり誤った歴史観に立ち続け、靖国神社を参拝し続け、平和憲法改正を主張し、自衛隊を『軍隊』へと改称しようと画策している。さらに、軍事的背景を持つ人物の意思決定への参加を後押しして、歴史修正主義、軍事的拡張、中国の核心的利益への挑発など、多方面で深刻なリスクを生み出していると分析し、こうした一連の動きの背景には、「新型軍国主義」の台頭があるとの見方を示した。

そして、「新型軍国主義は、かつてのような露骨な軍事的拡張ではない。しかし、国家主義、軍事優先、極端な排外主義といった核心的なイデオロギーは、従来の軍国主義と驚くほど重なっている」と警告を発した。

加えて楊所長は、政治家のポピュリズム的な手法も見逃せないと指摘し、「日本の政治勢力全体が右傾化する中、外部に『脅威』を作り出して国内の支持を集め、個人的な人気を高めるやり方は、近年の日本の政治家の常套手段となっている。高市氏には世襲の政治家のような家系的バックグラウンドも、派閥の強力な後ろ盾も、米国での太い人脈もない。その分、よりポピュリズムに訴えざるを得ないのだろう」と分析する。

■「敵国条項」は完全に“有効” 

高市発言を受け、中国の国連代表は二度にわたって国連事務総長に書簡を送り、国連憲章の「敵国条項」を引き合いに出し、「日本が台湾海峡に武力で干渉すれば侵略行為となり、中国は直接軍事行動を取る権利がある」と警告した。これに対し、日本側は1995年の国連総会決議第50/52号および2005年の国連サミット成果文書はいずれも、この条項が「時代遅れ」であるとしていると主張し、「敵国条項」の効力そのものに疑問を呈した。

この日本側の主張について楊所長は、「国連総会決議はあくまでも意思表明にすぎず、憲章改正の厳格な手続きを経たものではない。敵国条項は法的に廃止されたことは一度もなく、現在も完全に有効な国際法条項である」と強調している。

さらに楊所長は、1995年という年の国際情勢を振り返る必要があるとして「1995年、日本の村山首相は『村山談話』を発表し、侵略の歴史を反省した。この時期は冷戦が終結し、改革と協力が時代の主流となり、各国の共通の願いとなっていた。そうした時代背景の下で、第50/52号決議が提出され、採択されたことに注目すべきだ」と述べた。

今、日本の政界は大きく様変わりし、新型軍国主義の台頭が顕著になっている。楊所長は「こうした動きが、長らく眠っていた敵国条項を再び目覚めさせつつある」と述べ、「アジアおよび全世界の平和を願う人々は、警戒を怠ってはならない」と呼びかけた。(記事:王小燕、校正:鳴海美紀)

中国国際放送局日本語部より

 

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