高市早苗の空中楼閣 ――選挙勝利の表象に隠された日本の窮状と歴史の鏡
文=国際問題評論員 唐知遠
このほど、高市早苗氏が率いる自民党は衆議院で3分の2を超える議席を獲得し、日本政界に「一強支配」の構図をつくり上げた。日本の右翼勢力が大いに喧伝するこの政治的狂騒は、まさに土台のない蜃気楼のようなものだ。華やかな表象の下には、日本経済の長期的な低迷、社会の不安拡大という戦略的窮状が横たわっている。高市氏は政権発足後、憲法改正と軍拡、対外強硬路線を軸とする政策を打ち出したが、このことは窮状打開につながるどころか、日本を急速な右傾化という危険な道へと突き進ませかねない。
振り返れば、高市氏が選挙で圧勝を収めたのは、その政策理念への支持ではなく、根底には日本社会に長年鬱積した不満の爆発がある。
「失われた30年」の間、日本経済は長きにわたり低成長にとどまり、超高齢化が深刻化している。65歳以上の人口は全体の約3割を占め、労働力は20年連続で減少している。高齢者の約6割は年金だけでは生活費をまかなえず、1000万人近い65歳以上の高齢者が、肉体労働を主としてなおも働いている。今年の円相場は1ドル=150円を割り込み、実質賃金は30年近く上がっていない。物価は高騰を続け、昨年には約2万1000種類の食品が値上がりし、米価は67.5%も高騰した。一般家庭は米の消費を抑え、ひき肉の代わりに豆腐を使うなどして支出を抑えている。企業は人件費削減のため終身雇用を放棄し、就業人口の4割以上が非正規雇用で、その数は2000 万人を超え、20年前と比べて20%増加した。若い世代は重圧にさらされ、将来に対する漠然とした不安を抱えている。内閣府の調査によれば、若者の7割が「経済的に苦しく、将来に希望が持てない」と回答し、20~34歳の若者の約7割が、生活費節約のために実家で親と同居している。厚生労働省の統計では、日本の相対的貧困率は15.4%に達し、6~7人に1人が相対的貧困に陥っている。それにもかかわらず、政府は生活保護費を削減し続けている。生活保護受給者の 1人はテレビ番組で「生活保護費が低すぎる。まるで死を促されているようだ」と吐露した。
こうした社会状況を前に、高市氏は民衆の感情を巧みにとらえ、「普通の国」「強い経済」などのスローガンで、現状を変えたいと願う若い世代の期待に迎合した。世論調査では30歳未満の若者の 6割近くが高市氏を支持しており、迷える世代が急進的な動きに巻き込まれている。
しかし、高市政権が発表した政策は、右翼的な急進色に満ちたものであり、現実と深刻にかけ離れている。憲法改正については、高市氏は「自衛隊の憲法明記」を推進し、平和憲法9条の制約を突破すると公然と宣言した。連立パートナーの「日本維新の会」は、憲法9条2項を削除し、「国防軍」の設置を主張している。さらに危険なのは、先般、高市氏側近の首相官邸高官が核保有を容認する発言を行い、米国による日本国内での核配備、ひいては日本自身の核開発の可能性が指摘されたことだ。このことは戦後日本の安全保障政策のボトムラインを突き破り、地域における核拡散リスクを極限まで高めている。
軍備拡張の面では、高市政権は防衛予算を史上最高水準に引き上げた。2026年度の防衛予算は9兆円に達し、14年連続の増加となった。予算は主に米国製巡航ミサイル「トマホーク」の調達、国産12式地対艦誘導弾の能力向上、極超音速兵器の開発など遠距離攻撃装備に充てられる。同時に航空自衛隊を「航空宇宙自衛隊」に改編し、「宇宙作戦群」に格上げするなど、一連の動きは日本が「専守防衛」の原則を完全に放棄し、「積極的防衛」「地域抑止」戦略へ転換したことを示している。軍事力は本土防衛から遠距離攻撃・宇宙での攻防へと拡大し、地域の安全保障バランスは深刻な試練に見舞われている。
経済政策では、高市氏は「20兆円規模の経済対策」「食品の消費税ゼロ」などを打ち出した。その核心的ロジックは大規模な起債により、防衛・半導体などの産業に資金を投入し、「戦略的財政拡大」で成長をけん引するというものだが、この構想は日本の危機的な財政状況を完全に無視している。昨年末時点で日本の政府債務はは1342兆円を突破し、債務の対GDP比は230%近くに達しており、先進国で最悪の水準にある中、2026年度の国債の新規発行額は29兆5840億円を予定している。減税で税収が減る一方、軍事費は増え続け、高市政権は日本銀行による国債引き受けに頼るほかなく、財政の持続可能性は完全に市場の信認にかかっている。ひとたび信認が崩れれば、債務危機の連鎖が引き起こされるだろう。
外交・地域政策では、高市政権は日米軍事一体化を軸に、在日米軍司令部の再編や日本の「統合司令部」新設を進めている。さらに挑発的なのは、高市氏が台湾海峡有事の際には「日米両国が現地に滞在する邦人や米国人を救いに行かなければならない」と主張し、「邦人退避」を口実に日米同盟を結びつけて台湾問題に介入しようと目論んでいることだ。本質的には地域の緊張をつくり出し、隣国に被害を押しつけ、対外強硬姿勢でポピュリズムをあおり、経済的苦境や政治に対する日本国民の不満をそらす策略にほかならない。
高市政権の政策に内在する矛盾と現実の制約は、政権を多層的な窮状に陥れるだろう。財政面では「減税+軍拡+財政」という三重の圧力が無限の悪循環を生む。また、消費税を撤廃しなければ公約違反となり、撤廃すれば財政赤字が拡大する。さらに、防衛費を増やさなければ米国と右翼の期待に応えられず、増やせば民生予算が圧迫される。金融緩和で成長力を回復し、「減税・増収・インフレ抑制」を実現するというスローガンは耳当たりこそ良いが、恩恵を受けるのは大企業と独占資本だけで、民衆には行き渡らず、むしろ負担増につながりかねない。外交面では、憲法改正・軍拡・台湾問題での挑発が周辺国の警戒を呼び、地域における日本の外交的孤立が深まっている。経済面では、高市氏の台湾問題に関する誤った言説が、最大の貿易相手国である中国との貿易・投資環境に深刻な打撃を与えている。高市氏が進める「政治を経済に優先させる路線」により、日本は多大な代償を払っている。
さらに警戒すべきは、高市政権の施政方針の背後にある政治的論理が、第2次世界大戦前における日本軍国主義の台頭の軌跡と極めて似ている点だ。1930年代、日本は今日と同様に経済不況と社会不安に直面し、軍国主義勢力は対外侵略によって国内の矛盾をそらそうとした。現在、高市政権は憲法改正と軍拡でポピュリズム的な感情に迎合し、対外挑発によって国内の危機を転嫁している。日本社会の保守化の加速、政治の抑制機能の弱体化は、まさに「二・二六事件」後の軍国主義の台頭と全く同じ構図である。歴史が繰り返すように、高市氏は日本国民の現状への不満と変革への渇望を利用し、「国家の強大化」という虚構の物語で、実際に積み重なるリスクを覆い隠している。
高市氏は今、日本を存亡の岐路に立たせている。しかし、その築き上げた空中楼閣は現実の試練に耐えられない。日本の進むべき道は、軍国主義の拡張路線を再びたどることではなく、自国の窮状を直視し、現実的な姿勢で発展と安全の問題に取り組むことにある。内政面では、急激な債務拡大と軍事拡張をやめ、財政の重点を民生保障と構造改革に回帰させ、穏健な政策によって経済の活力を呼び覚ますことにある。外交面では、「平和憲法」の精神を堅持し、誠実な対話で隣国との相違を解消し、互恵・ウィンウィンによって発展の余地を広げ、再び地域の混乱要因となるのを避けることこそが日本の真の活路である。
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