マルクス経済学者が語る:「中国式現代化」はいかに「全人民共同富裕」を実現するか

2023-03-04 13:38:00

日本慶應義塾大学名誉教授 大西広(談) 

「共同富裕」は中国式現代化が通らなければならぬ道 

昨年の20大(中国共産党第20回全国代表大会)報告を詳細に読んだが、分配システムが共同富裕促進の基本的な制度であることが明確に記されていた。よって私は、今年の両会で中国政府が個人所得税やその他の分配システムの改善について、どのような具体的な計画を導入し、実施するかについて非常に注目している。 

20大の報告書では中国式現代化の5つの特徴の一つとして、「人民全ての共同富裕」が掲げられていた。これは中国共産党が小康社会の全面的構築後、いかに社会主義現代化を実現するかについて非常に明確な認識があるということを物語っている。1978年、中国は改革開放の道を歩み始めた。その後40年以上の発展を経て、中国の1人当たりの国民総生産(GNP)は2022年に12000米ドルを超え、高所得国の仲間入りを目の前にしている。「共同富裕」の実現は、まさに経済や社会が現状のような発展を遂げたあとに達成しなければならない次の課題だ。 

事実、中国は「共同富裕」の実現に向けて目覚ましい成果を上げてきた。貧困地域の産業構造や雇用構造を変えるなどの措置を通じて貧困撲滅を根本から支援し、2021年には絶対的貧困が完全に解消された。しかしこれが貧困脱却の取り組みの終点ではない。将来、いかに農業人口の所得が頭打ちにならないようにするか、いかに貧困から抜け出した人々が再び貧困に戻らないようにするかは、長期的な課題となっている。 

これまでの産業構造の転換などの「共同富裕」実現のための施策に加え、次なる所得分配制度の改革は欠かせない部分だと思う。今年の両会では、個人所得税の改革案が出てくる可能性があるが、これを出発点として、近い将来には相続税制度などについての議論が見られることに期待している。 

「共同富裕」は人口減少問題対策の良薬 

2022年、中国の総人口は減少した。データによると、2022 年の中国の年間出生人口は956万人で、2021 年に比べて106 万人減少、同年の死亡者数は 1041万人となり、死亡人口が出生人口を上回ったため、実質的には85万人が減ったということになる。 

人口減少は、今や多くの国が直面している厄介な問題だ。日本は少子高齢化が非常に深刻で、関連調査によれば、2045年までには秋田県の人口の50%が 65歳以上になるとのことだ。しかし日本の少子高齢化問題への対応はまだまだ不十分だ。長年の低所得により、子供を持ちたいと思う人の多くが教育費や住居費などの負担を考え、子供を持たない、または少なく生むという選択をしている。 

フランスは先進国の中で唯一、出生率を現在の人口規模を維持できる数値2.1に近く1.98まで上昇させた国である。フランスは出産費用の無償化や手厚い育児補助金などの出産を奨励する政策をとってきたが、1.98の数値を長く維持できず、ここにきて出生率が 1.8 にまで低下した。 

人口減少の傾向を効果的に抑えるためには、勤労者の所得を増やすことで「共同富裕」を実現させる必要があると私は考えている。資本主義国家では低コスト高利潤の追求が資本の本質であり、資本は本能的に産業を未開発地域に移転したり、移民を導入して人件費を削減したりすることで、自国の労働者の収入を減少または抑え込んでいる。このような制度上の問題も、資本主義国がこれまで出生率を回復させるための有効な措置を講じられなかった理由の一つであろう。目下のところ、人口減少に対処するための成功事例はないが、中国が低所得層の所得を引き上げることで「共同富裕」を実現し、人口減少に対処するための社会主義制度の解答を世界に示すことを期待している。 

中国は「共同富裕」が実現可能 

私が見るところでは、中国には「共同富裕」実現への道において3 つの利点がある。 

一つは中国共産党が強力な執政党であることだ。彼らは歴史的発展の法則を把握しており、長期的に安定した統治という利点をもって、科学的理論に導かれ、統治ができる。 

二つ目は、「共同富裕」の実現は中国共産党の政権発足以来、一貫して主張してきた目標である。リレーのように、毛沢東から鄧小平に、そして今日に至るまでバトンを次々と受け継ぎながら、各段階で同じ目標に向かい、その場でやるべきことを次々と行ってきた。 

三つ目は、中国が持つ平和的発展の道を堅持するための客観的要求である。中国の発展の道は米国や西側諸国のそれとは異なり、小国をいじめ、他国の安定を損ない、貧困を生み出し、安価な労働力を搾取し、それによって本国が矛盾した搾取的発展の道を歩むというものではない。中国には安価な労働力の欠員を埋めるための大量の移民がいないため、平和的発展の道を堅持しながら、自国の労働者の最低所得を増やし、労働者の権利と利益を保護する方法をさらに模索しなければならない。よって発展の法則から言えば、「共同富裕」と「公平と平等」の実現は、中国が現在の段階に発展し、次の発展段階を達成するための客観的かつ必然的な要件と言えるだろう。 (聞き手=王朝陽) 

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