安全保障分科会 対話の強化で誤解を解く

2023-12-05 15:15:00

陳蘊青=文 

在、ユーラシア大陸情勢の緊迫化がエスカレートしつつある中、いかにして複雑な地域世界情勢において安全保障面の危機に対応し、地域の平和と安定を守るかが、今回の安全保障分科会の主なテーマとなった。中日両国のパネリストは地域紛争や防衛政策、防衛交流、危機管理コントロールなど共通の懸念事項について、率直で建設的な交流議論を行った。 

誤解の原因は交流不足 

今回の分科会で、中国側パネリストが提起した問題は主に二つの点に集中した。一つは、米日同盟が中国を仮想敵として想定し、経済、軍事、外交などの手段で中国の発展を抑え込み、海峡両岸の統一に干渉する意図がますます表面化していること。もう一つは、日本政府が昨年末に発表した「安保3文書」と岸田文雄首相が打ち出した2027年までの今後5年間の防衛費を国内総生産(GDP)の2%にまで倍増させる方針で体現された日本の防衛政策の大きな調整。日本側パネリストの懸念は主に中国の国防費の増大や台湾問題、朝鮮半島情勢に集中した。 

日本側パネリストの懸念に対し、北京大学国際戦略研究院院長の于鉄軍氏は次のような見解を示した。中日は防衛安全保障において互いにかなりの誤解を持っているようだ。日本側は中国のさまざまな動きに対する懸念がますます深刻化していると言うが、逆に中国側も日本をそう見ている。中日平和友好条約の精神をいかに中日の安全保障協力に落とし込むかは重点的に議論する必要がある。 

中国社会科学院日本研究所副所長の呉懐中氏は次のように述べた。中国は覇権の争奪戦や地域情勢への強引な干渉を通して自らの発展と安全を実現したというわけではない。ほかの主要国と比べ、中国の国防政策は一貫して非常に自制的だ。中国は米国の覇権に挑もうとしていると日本のメディアはよく報じているようだが、北京にいる私たちが得た全ての情報はこの点を否定するものだ。もしそれが本当のことならば、鄧小平氏がかつて言ったように、中国人としてまず自国の覇権に反対する。 

元駐米日本大使の藤崎一郎氏と防衛省防衛研究所アジアアフリカ研究室長の増田雅之氏も、両国間には相手国に正しく情報を伝えることができなかったり、互いの意図を誤解したりしたことが確かにあるという考えを述べた。 

双方のパネリストは次の考えで一致した。中日の安全保障面に現れた多くの問題は一定の程度で、現在の両国の戦略観、世界観などにおける違いの拡大化によるものだ。45年前の中日平和友好条約締結時、両国の国際地域情勢に対する見方は大きな差がなかったが、目下、両国の世界秩序や地域情勢に対する見解はますます分かれていっている。そのため、対話を強化し、認識の齟齬(そご)を減らし、誤解を解くことが極めて重要だ。 

対話こそ力 

北京大学国際関係学院副院長の帰泳濤氏は次のような考えを述べた。現在、地域と世界の安全保障環境は混迷を極めており、各方面の立場は大きく異なり、短期的な対話で相違を解消することは難しい。そのため、さまざまなレベルの恒常的で安定した対話コミュニケーションのメカニズムの構築が必要になってくる。長期的にいえば、各方面に受け入れられる地域的安全保障の枠組みや行動準則を検討を経て打ち出すことが有益になるだろう。 

中国国際戦略研究基金会上席研究員の張沱生氏は次のように補足した。まずは双方の防衛安全保障対話を回復し、齟齬の深刻なところについて危機管理コントロールをしっかりと行い、できる限り誤解を解き、共通した利益のある分野で協力を展開すべきだ。 

日本側パネリストも恒常的で安定した対話交流メカニズムを構築することの重要性を強調し、政府上層部の政策決定者間の協議対話の早期回復という願いを示した。また、若手防衛幹部交流メカニズムの構築や海洋防衛現場担当者交流の強化、防衛政策を解説する教官の相互派遣などの提案を打ち出した。 

双方のパネリストは次の共通認識を形成した。現在の両国に大きな意見の相違が見られる中、各レベルの対話を一気に回復させるのは簡単ではない。そのため、「北京―東京フォーラム」のような対話の場はいっそう重要になってくる。対話を通して、相手国の立場への理解を深めることで、将来的に政府レベルのコミュニケーションのための準備を整え、協力的な雰囲気を醸し出すことができる。 

分科会の最後に、元空軍副司令官で中国側司会の陳小工氏は感慨深げに父親陳楚氏のことを振り返った。初代駐日本中国大使だった陳楚氏は任期中に中日平和友好条約の交渉に携わった。「父が退任しても条約はまだ締結に至らなかった。交渉が結局5年間も続き、しかも大変だったことは、両国の間に非常に複雑な歴史問題と現実問題があることを物語っている。しかしだからこそ、問題をはっきりと整理し、協力できるところをしっかりと押さえることがいっそう必要になるだろう。この条約の批准書交換は、当時の鄧小平副総理と福田赳夫首相の立ち会いの下で行われた。中日の平和と友好はたやすくできたものではなく、われわれは大切にしなければならない」 

元駐中国日本大使で日本側司会を務めた宮本雄二氏もそれに呼応して、次のように述べた。対話こそ力、交流こそ力、堅持こそ力だ。対話をやり続けてこそ、双方の疑念が次第に払拭され、具体的な成果が上げられるだろう。

 

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