次の10年に向けて志新たに

2025-02-08 15:20:00

段非平 王朝陽=文 

12月4日と5日、中国国務院新聞弁公室と日本の外務省の後援で、中国外文局と日本の言論NPOの共催による第20回「北京―東京フォーラム」が東京で開催された。 

同フォーラムは「多国間協力に基づく世界秩序と平和の修復に向けた中日協力」を全体テーマとし、中日両国の政治、経済、ビジネス、学術、メディアなどの分野から約100人のパネリストを招待し、多国間協力の推進や平和と秩序の再構築、政治的相互信頼の増進、経済協力の深化、安全保障提携の強化、メディアの責任の明確化、デジタルガバナンスの推進、青年交流の増進などの重要な議題を討論し、交流を深め、コンセンサスをまとめた。 

健全で安定的な発展を 

12月4日の開幕式では、中国共産党中央政治局委員中央外事活動委員会弁公室主任の王毅外交部長がビデオメッセージで式辞を寄せ、「北京―東京フォーラム」が20年にわたり中日関係の発展を推し進める上で果たした積極的役割を高く評価し、次のように強調した。中日の二千年以上の交流史、国交正常化以降50年以上の関係史が繰り返し証明しているように、正しい発展の方向を維持する中日関係は両国と両国民のみならず、地域と世界の平和的発展に対しても重要なプラスの意味を持つ。中日は両国の指導者が達成した重要な共通認識を指針とし、両国関係の正しい位置付けを把握し、両国関係の政治的基礎を守り、互恵ウインウインの開放戦略を推し進め、地域と世界の平和と安定を守り、初心を守り、正しい道に従い、共通認識を形成し、行動を重んじ、両国関係の安定した持続的な発展を共に後押しするべきだ。「北京―東京フォーラム」が今後も率直かつ誠実な交流および共通認識を取りまとめる場として、新時代の要請にかなう中日関係の構築に新たな貢献を果たすことを希望する。 

中央宣伝部副部長国務院新聞弁公室主任の莫高義氏は基調講演で次のように述べた。中日両国の指導者が先ごろ会談を行い、共に中日の戦略的互恵関係の全面的推進に努め、新時代の要請にかなう建設的で安定した中日関係の構築に尽力するよう強調し、両国関係の発展に重要な政治的指針を示した。現代化を実現し、人民により素晴らしい生活を送らせるのは世界各国の共通する目標だ。改革とイノベーションは中国式現代化の力強い原動力であり、開放と協力は中国式現代化の鮮明な旗印であり、平和的発展は中国式現代化がたゆまず追い求めるものであり、グリーン低炭素は中国式現代化の重要な基盤だ。中国には「遠くの親戚より近くの他人1)」ということわざがあり、中日は一衣帯水の隣国だ。中国式現代化は中国の発展だけではなく、日本のチャンスでもあり、世界の平和と未来にもつながっている。共に両国の指導者の重要な共通認識を真剣に実行に移し、各階層の交流を強め、相互信頼を固め、協力を深め、中日関係の安定的かつ長期的な発展を推し進めてほしい。 

外務大臣の岩屋毅氏はあいさつで次のように語った。「北京―東京フォーラム」は長きにわたって日中両国のあまたの有識者が一堂に会し、知恵を集める重要な場所であり、日本政府としても大変心強く感じている 。過去20年を振り返ると、両国は隣国であるがゆえにさまざまな問題や懸案に直面し 、幾度かの困難な時期も経験してきたが、両国の有識者は両国関係の前向きな発展を推し進めるために粘り強く努力し続けてきた。日中関係の土台は国民交流と相互理解にあり、フォーラムの今年のテーマも非常に時節にかなったもので、両国は国際社会に重責を担う国としてこれらの問題を深く掘り下げる必要がある。両国の有力な有識者がフォーラムで率直に意見を交わし、実り多い成果が得られることを期待する。 

元駐中国大使の宮本雄二氏は福田康夫元首相の基調講演を代読した。福田元首相は次のように指摘した。習近平国家主席は先月(昨年11月)のG20サミットで、各国は国連憲章の趣旨と原則を基礎とする国際関係の基本準則を順守し、開放的で包摂的な世界経済をつくらなければならないと改めて言及した。この宣言は、世界の分裂を回避し、国際社会の団結した協力を推し進めるための積極的なシグナルだ。日中は国際社会の平和的発展に積極的に貢献する両国関係の構築に尽力しなければならない。これは「日中共同声明」の基本精神であり、日中の戦略的互恵関係に含まれる意味でもある。世界の動向が日中を協力に向かわせている中、両国関係にもいくつかのプラスの動きが現れ始めており、両国がそのきっかけを的確に捉え、さらに大きな進展を実現してほしい。 

中国国際広報集団総裁(中国外文局局長)の杜占元氏は中国側主催を代表して次のように語った。今年は「北京―東京フォーラム」が弱冠(20歳)を迎えた年だ。フォーラムの20年の成功と実践は、双方が民間交流と誠実な対話をし、相互信頼を深め、共通認識を形成し、世代間友好と互恵協力をし続けさえすれば、中日関係は必ず健全で安定して発展する軌道に進み、さらに素晴らしい未来を迎えることを示している。新たな10年に向かい、フォーラムが時代と共にテーマを着実に広げ、戦略レベルを高め、交流の形式を革新し、各分野の力を集め、協力レベルを引き上げ、未来に向けて青年の参加を増やし、交流の範囲を拡大してほしい。 

大和総研名誉理事の武藤敏郎氏は日本側主催を代表して行ったスピーチで次のように語った。フォーラムが20年で得た豊かな成果は双方の相互信頼に基づいており、「小異を捨てて大同につく」は「北京―東京フォーラム」が創設以来守ってきた精神だ。新たな10年に向け、フォーラムはこの精神をしっかりと把握し、これまでの20年で築き上げた信頼関係を基礎とし、さらに質が高く成果に富んだ対話を繰り広げ、日中関係の健全で安定的な発展を推し進め、世界の平和と安定を促進するためにさらなる貢献を果たすべきだ。 

開幕式の後、主催側の中国外文局と日本の言論NPOによるフォーラムの次期10年(2025~34年)の協力枠組み協定調印式が行われた。双方はフォーラムの過去20年の相互信頼の増進、共通認識の形成、中日関係の健全で安定した発展を推し進めるために果たした努力と貢献を高く評価し、フォーラムが今後10年で新たにより大きな成果を収め、中日の友好と協力に新たな章を記し、地域と世界の平和と繁栄と発展のために新たな貢献を果たしていくことを引き続き共に推し進めると宣言した。 

初心を守り次へ踏み出す 

現在、世界秩序は数々の試練にさらされている。複雑で混乱した国際情勢の下、アジアと世界の重要な国である中日はいかにして二国間の枠組みを乗り越え、地域そして世界の平和と繁栄を守るためにさらなる貢献を果たすべきか? これは「北京―東京フォーラム」の次期10年の協力枠組み協定調印後に全てのパネリストが次の10年に向けて答えなければならない時代の問いだった。 

12月5日の閉幕式全体会議で、呉江浩駐日本中国大使と金杉憲治駐中国日本大使はそれぞれ式辞を読み上げ、この時代の問いに対して自身の考えを述べた。 

呉大使は次のように指摘した。中日は多国間協力を強め、国際秩序を共に守り、さまざまなグローバルな課題に共に対応するという、両国の指導者が繰り返し確認した重要な共通認識は、中日の戦略的互恵関係のあるべき道筋であり重要な内容でもある。現在、中日関係は改善と発展の重要な時期にあり、双方にとって最重要の任務は両国の指導者が達成した重要な共通認識を一刻も早く実行に移すことだ。また、呉大使は、今回のフォーラムで幾度も取り上げられたウクライナ危機、中東情勢、朝鮮半島情勢、関税戦争、貿易障害、地球温暖化、エネルギー食糧安全保障問題、人工知能(AI)などのテーマに対し、これらは中日と国際社会の共通の課題であり、さらに言えば中日が協力を強化すべき共通の利益の在りかでもあると述べるとともに、両国が共に道義を守り、責任を示し、実行を重視し、地域と世界の平和と安定、団結と協力、発展と繁栄のためにしかるべき貢献を果たそうと呼び掛けた。 

金杉大使はビデオメッセージで両国の戦略的互恵関係に対する自身の考えを述べた。一言で言えば、日中間のさまざまな懸案は適切に管理して、それが両国関係の大局に悪影響を与えることを避けつつ、共通する課題についての協力を深化させることであると考える。日中関係の安定のために、私たちが個々人としてもできることは何か。それはお互いが、よりバランスの取れた形で相手の現状を理解する努力だ。他者のプリズムではなく、自らの視点で相手を理解する勇気を持たねばならない。金杉大使は式辞の最後に中日の悠久の学び合いの歴史を振り返るとともに、フォーラムへ次のメッセージを寄せた。本対話での真剣な議論も、お互いの「学び合い」の重要性を示しており、次の10年に向けた議論の重要な土台となるものだ。日中関係のさらなる発展と、国際社会全体の平和と繁栄につながっていくことを強く期待している。 

「北京―東京フォーラム」は政治外交、経済、安全保障、メディア、デジタル、平和秩序、多国間協力の七つの分科会と青年対話を行った。2日間の期間中、中日両国の政治、経済、学術界隈のパネリストたちがそれぞれ自身の分野から時代の問いについて答えた。 

閉幕式での分科会報告で、同フォーラムの成果が集中的に取り上げられた。「中日は両国関係を合理的に位置付け、戦略的互恵関係の構築に適切な行動を取り、二国間レベルのウインウインに限定せず、地域レベルで多方面にメリットがあるようにしなければならない」「不確実性が増す2025年に、中日は人民元、日本円、韓国ウォンなどの地域の通貨と金融の安定を共に守り、第三国市場2)を共に開拓し、デジタル化とグリーン化のモデルチェンジを推し進めなければならない」「地域の多国間安全保障メカニズムが不足している状況で、中日は一刻も早く各レベルの交流メカニズムを回復し、起動させ、不測の事態の発生を防がなければならない」「両国のメディアは客観的な立場を守り、事実ではない情報を適時ただし、気候変動や貧富の差などのグローバルな課題に注目し、関連報道を強めて世界の分断を克服し、平和と発展を促進する世論を導かなければならない」「中日はAI技術基準で協力研究を深め、AI国際基準の公布を共に推し進めなければならない」などの共通認識が、現在の中日関係の改善と発展のために理性的で実現可能な意見を提供した。 

このほか、次の10年に向けてフォーラムが発揮する役割もパネリストたちの議題に上った。「中日が地域紛争の解決や平和と秩序の共同構築で協力を展開し、双方の相互信頼を効果的に高めるのを推し進める」「中日が気候変動、伝染病への対処、人道主義的援助、海難救助などの共通の利益がある非伝統的安全保障の分野でさらなる協力の展開を推し進める」「中日関係の修復、国民の認識の改善のためにメディアの責任を果たす」「デジタル経済や高齢化社会など、中日が共に直面し、それぞれ長所を持つ分野で両国民の福祉につながる報道をする」「中日の歴史共同研究の展開を促進する」「両国ひいてはアジアや世界の優秀な青年を対話に参加させ、青年リーダークラブをつくり、交流の新たなチャンネルと空間をつくる」などの提言は、フォーラムのこれからの発展に重要な参考の意味を持つ。 

同フォーラムの閉幕式では「次期10年座談会」を特別に設け、中日の主催者代表である中国外文局総編集長の高岸明氏と言論NPO理事長の工藤泰志氏が20年間の足跡を振り返り、その上で今後の新たな10年の発展の方向を展望した。双方はフォーラムが二国間関係を超越し、さらなる広大な視野を持つべきだという考えで一致した。高氏は、今後はさらにテーマを掘り下げて議題を広げるとともに、フォーラムの成果がよりいっそう政府の施策に体現されるよう促さなければならないと指摘した。工藤氏は、フォーラムを年に1回に限定させず、対話のメカニズムを構築し、一年中役割を発揮させるようにしたいと希望を語った。 

閉幕式の最後に工藤氏が同フォーラムの成果の一つである「東京コンセンサス」を読み上げた。建設性に富むこのコンセンサスは同フォーラムの双方のパネリストの知恵を集めた重要な成果だ。コンセンサスは双方が共に努力し、良質な世論環境を形成し、両国間の懸案となっている未解決の難題の解決を促し、アジアと世界の平和の実現を推し進めたいという決意を表しているばかりか、フォーラムを世界や未来に向けた対話の場としてグレードアップさせるという信念を示した。 

こうして第20回「北京―東京フォーラム」は成功裏に幕を閉じ、次の10年に向けて新たな一歩を踏み出そうとしている。 

 

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