美のプロフェッショナル
下瀬 優華
私は中国の宮廷ドラマを観るのが好きだ。今、日本では中国ドラマの人気が高まり、放映数も増えてきている。特に私が惹かれているのは、それぞれの時代の特色を表現した豪華な衣装、メイクやヘアスタイルだ。細やかな刺繍が施された衣装や装飾品などは画面越しからでも伝わるほどだ。私も一度は身に纏ってみたいと思う。
日本では美容をはじめとする様々な新しい中国トレンドが生まれている。中国市場で美容は注目され、デジタル化を活用しながら大きな成長、発信をしている。その中で「チャイボーグ」というメイク方法に人気が出た。整形したかのようなメイクで美しくなれることから、関心を持つ日本の若い女性たちが増えた。また、「網紅」と呼ばれるインフルエンサーたちの可愛いネイルやヘアスタイルを、日本のネイリストや美容師も次々と取り入れ始めた。今後、このようなトレンドの発信は増加していくはずだ。
そして中国の伝統文化の一つだ。「京劇」がある。まだ私はSNSや画面でしか見たことがない。日本の歌舞伎や舞妓、芸妓さんたちのメイクとは似ているようで違う、不思議なデザインをしている。私は互いの国の別のメイク方法を実際に観て伝統の真髄に触れてみたい。そこから中国のことを深く知り、私はオリジナルの美を形として造りたいのだ。いつか、私の作る美を見て、日中両国の友好の橋渡しの一つになればと思っている。
美容においてヘア、ネイル、メイクなどの大半は外見を整え、美しく見せることは当然だと言える。もちろん、それらを支えるのは私たち美容に関わるプロの仕事の一つだ。だが、内面を整えることも欠かしてはならない。中国ドラマの中でもあるように、古来から美容にも漢方を取り入れるほど、漢方と美容は切っても切れない関係があると感じた。肌トラブルや髪の悩みは人それぞれで、外側からのアプローチだけでは限界がある。そこを内側からサポートするのが漢方の効果の一つなのだ。本来漢方は、一個人の症状にあわせて細かく調合していく。美容も一人一人の好みや色を合わせて、その人に似合うスタイルを提案する。漢方と美容は施し方がとても似ていると思った。ドラマを観て知った漢方の知識を正しく身につけ、発信し、身近に感じてもらうことが出来れば、漢方と美容を併用し、全身の美への提案をしたい。
私は今、美容師でアミスタントとして働いている。毎日多くのお客様との出会いがあり、もちろん外国の方も来店する。ある日、中国のお客様と出会ったが私は、「你好」、「謝謝」しか中国語を話せなかった。要望を何とか聞こうと、翻訳や身振り手振りを使ったが、上手くコミュニケーションをとれず、恥ずかしかった。私が中国語をもっと理解できていたならと悔しい思いをした。先般、今まで不可能だった外国人美容師の日本での就労も法的に可能となり、私の会社の他店舗では中国人の方が働いている。他にも、日本の有名美容室が中国でヘアショーを開き、直接技術交流もした。
私はこのように変貌する美容業界の背景から、もっと多くの世界を知りたくなった。今はまだ修業中の身に過ぎないが、自分の目で見て、肌で触れ、足を運び、様々な経験をしていかなければならない。私は美容師として、日本と中国、隣り合っていても異なる文化を互いに知り、美容の視点から友好を深め広げていく担い手の一人となりたい。美を追求するプロフェッショナルとして多面的な分野を学び、得た知識を日本だけ、技術面だけに留めるのではなく、他国の人たちにも広げていくのも美容師の本来の使命ではないだろうか。私はその第一歩として、中国のトータルビューティーを極めていきたい。だから私は、中国への学びを止めない。