タンピン族と日本
石黒 寛史
私が中国についての作文を何か書こうと考えたときに高校の時に学習した中国の歴史や現在の政治状況などしか知らず、今の中国がどのようなものなのかを意外と知らないということを思い知らされた。そんな私が中国についての話題で興味を持ったのはタンピン族についてである。タンピン族とは寝そべり族とも呼ばれており、若者の一部が中国の競争が激しい社会を嫌い、高額の消費や結婚出産をあきらめるもので中国のSNSの「タンピンは正義だ」という投稿をもとに広まったといわれている。韓国のMZ世代、日本のさとり世代に近いといえると思う。しかし、日本や韓国とは少し異なり、タンピン族はより積極的な意思表明であるといわれる。彼らは家を買わない、車を買わない、恋愛をしない、結婚をしない、子供を作らない、消費をしないの「六不主義」を基本方針としている。タンピン族が広まった背景としては2010年代からの中国の経済成長率の鈍化や、コロナによって高い学歴を手に入れたとしても一流企業に入れる保証がなくなり、受験戦争や就職活動によって敗れた人にその思想が受け入れられたことがあげられる。実際に中国では若者の失業率が20%を超えており、厳しい現実にさらされている。しかし、中国ではこのタンピン族に対する理解があまりないといわれている。どうしようもない現実に失望した若者とこれを理解することができない先行世代との間の溝は深い。
このような状況は日本にも同じことが言えると思う。今の日本では非正規雇用が増加し、賃金が上昇していないにも関わらず物価高が進み、特に若者は国民全体の中でも苦しい状況にさらされている。そしてタンピン族とは少しベクトルは違っているが恋愛や結婚を望んでいなかったり、プライベートを重視する傾向にある。これについては私も強く同意したいと思う。未来を切り開くのは今の若者であることはわかってはいるもののその未来にあまりにも希望がない。少子高齢化は加速し、若者の負担ばかりが増えていく。このような状況に対して政府は現状を打開できる有効な政策を実現できていない。また、資本主義の社会の中で資本家たちの政策に踊らされてたくさん働いてたくさん消費することは本当に幸せなのかという疑問も生まれている。このような状況の中では未来のことなど考えることができない。現状を生きることで精いっぱいなのである。ましてや恋愛をして子供を産むなど無理である。未来のないこの国で次の世代に問題を先送りし続けている中、新しい世代を産むことはあまりにも酷なのではないかとすら思う。他人を幸福にする余裕などなく、自分が幸福になることで精いっぱいでその自分の幸福すらままならない。私はこのような点で日本と中国は一致おり、自分はタンピン族のような生活はしていないがこの考え方に賛成である。中国について隣国ではあるものの詳しく知らなかったがこんなにも分かり合えるであろう共通点があるのは驚きであった。
現代の人々の考え方は多様化し、一見受け入れがたいような考えもある。そして日本と中国は対立することも多いが共通していることも多い。その一つがタンピン族やさとり世代の考えだと思う。若者の未来がないという考えは悲しいことだがどうしようもないことである。未来がないこの国々で個人個人が少しでも自分が描く幸福を達成できるような社会になることを願いたい。