礼は世界の共通言語

2023-10-23 16:08:00

北田 あや


私は日本の大学に通う大学一年生です。前期に中国語と中国文化の授業をとっており、その授業をきっかけに少しずつ中国について関心を持つようになりました。今日は、そんな私の身に起こった素敵な体験談をお話しします。

私は、自宅の最寄駅近くにある食べ放題チェーン店で現在アルバイトをしています。主な業務は接客と料理提供、レジ作業です。

ある日、何十名ものお客様が来られて店はてんやわんやになりました。中国語の授業をとっているために、その団体のお客様は何人かの日本人を除いて中国人の団体であることが推測できました。最初は日本語を理解していないお客さまにどう接していいかわからず、中国人のお客さまに対してしどろもどろとした対応をしてしまっていました。使用言語の壁という問題を抱えたアルバイトと飲食店利用者の間に暖かい空気を齎すことの難しさを覚えました。彼らは酒を飲み、食事を嗜み、軽い宴会状態にあったことを記憶しています。

私が中学生の頃、家庭科の先生が授業の余談として各国のテーブルマナーのお話をしてくれました。その時に家庭科の先生は「中国ではご飯を残すというテーブルマナーがある」「残すことによってもう食べきれないという思いを伝える」とおっしゃっていました。そんな話をふと、料理提供の際に思い出し「たくさん残されたらどうしよう」と思ってしまいました。食べ放題チェーン店という店の特性上、食べきれない量を頼んで大量に残していくお客さまは1日に何件も見かけます。後片付けをして、残された料理を見るたびにとても悲しい気持ちになります。

中国人の団体のお客さまたちの宴もたけなわ、かなりのペースで机にお皿が溜まっていきます。料理提供がてらそのお皿を回収すると、中国人のお客さまたちはたどたどしい日本語に笑みを添えて「ありがとうございます」とおっしゃってくれました。私はこんなにもやさしい笑顔を向けてくれたことと、一介の従業員のために日本語を使ってくれたことに対して嬉しい気持ちでいっぱいになりました。日本語を第一言語として使用している人でも、お皿を下げたときにお礼を言ってくれる人は半分にも満ちません。大抵のお客さまは私たち従業員を配膳ロボットと同じモノとして見ているのか、こちらの作業に対して反応を示しません。そんな中での彼らの反応は、とても誠意に満ちたように感じました。そして私はそんな彼らを見て「礼というものは世界共通の言語であり、礼に壁はない」ということを体感しました。

彼らの宴は終わり、ついに会計の手続きに入りました。彼らはお金を出すときも、レシートを受け取るときもお礼と笑顔を忘れませんでした。そんな彼らのテーブルを片付けると、まとめられた皿とスプーン一杯程度の残飯がありました。テーブルはとても綺麗にまとめられており、彼らのマナーと誠意を感じました。

以上がわたしの中国にまつわる体験談です。

 

 

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