目標設定と木犀の雨

2023-10-23 16:13:00

宮本 愛香


日中平和友好条約締結45周年を迎え、私はこの条約締結を様々な困難を乗り越え実現された日中双方の方々に感謝したい。そのお陰で、かけがえのない中国人の友達ができたからである。

私は中国語が大好きである。言葉そのものが持つ響き、発音、イントネーションがとても美しいと思う。現在大学4年生の私は、この3年間新型コロナウイルス感染症の影響で制限された環境で過ごしてきた。入学時に楽しみにしていたアルバイトや友人との旅行等の普通のことさえ難しく、それなら中国語にはまってみようと考え、①日常会話レベルの中国語力を身に付ける、②中国人の友達を作る、③中国に旅行する、という3つの目標を設定した。

大学では、渡航型留学の代替としてオンライン留学が実施されたため、それに3年間参加した。また、中国サークルに入って、日本人の友達と「もし留学生が来たら」という想定で様々な妄想をしてイベントの企画を練った。中国語が少し話せるようになると、もっと中国について知りたくなり、大学での講義だけでなく、学外で実施される活動にもアンテナを張り、奈良県の「東アジア・サマースクール」に参加した。私は初めて中国人の学生とともに課題に取り組む経験をした。奈良県のお茶を売り出すためのブランディングという課題だったが、やる気がある同世代の人たちで協力して何かを成し遂げようと頑張ることに国籍など全くネックにはならなかった。イベント後、この体験で学んだことを大学の友達等にシェアするとともに、「中国語って面白いよ」と伝える活動を始めた。「中国語しゃべってみて」とよく言われるので、「木犀の雨」という話を数分間、身振り、手ぶりで、声色も変え、心をこめて朗読をする。すると、みんな、「中国語、全然わからないけど、なんかすごい。」「中国語ってきれいな言葉だね。」などと言ってくれる。

このような地道な「中国語ファン」を作る活動を続ける中、とうとう中国から留学生が来てくれた。張さんだ。はじめは互いにモジモジしてしまい、すぐに打ち解けることができず、今振り返ると本当にもったいなかった。しかし、ある町で行われた異文化交流イベントに一緒に参加したことをきっかけに関係は変わった。ワンタンを販売したのだが、看板をみんなで作り、試行錯誤してワンタンを作り、協力して販売する、この活動を通じて、みんなとても仲良くなった。

張さんは今年の2月に帰国してしまったが、今でも週1で中国語と日本語でおしゃべりを楽しんでいるので、あまり離れていると感じない。先週は日本の映画を見たということで、語尾に「じゃけぇの~」を連発し、大笑いをした。中国料理は油を使うから帰国して太ったというが、日本で特にやせてもいなかったので、単においしいから食べ過ぎているのではないかとか、私の中国語の発音間違いで意味が全然変わったものになり吹き出すなど、たわいもない話だが、張さんとのおしゃべりは本当に楽しい。

大学入学時に設定した目標のうち、中国語はHSKという中国語検定試験で4級に合格することができ、日常会話は問題なく話すことができる。そして、かけがえのない中国人の友達もできた。あと1つ、中国に旅行に行くことだが、これは卒業旅行で叶えたい。新型コロナウイルス感染症の影響下で辛いこともたくさんあったが、私は大学入学時に目標設定をしたことで有意義な大学生活を送ることができた。次は、「張さん達と一生友達でいる」、という目標を設定したい。簡単ではないかもしれないが、互いに尊重し、理解し合う、それを続ければきっとできると思う。次の目標達成のため、私は一生努力する。

 

 

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