中華と文明

2022-10-26 11:39:00
宮崎 遥

私と中国との関わりの原点は、日本の漫画『キングダム』である。『キングダム』は、主人公の信と、後に始皇帝となる政を中心に、彼らの仲間と共に、秦の中華統一を目指すという物語だ。作中で、後に始皇帝となる政が、「中華統一の後に出現する超大国は、500年の争乱の末に“平和”と“平等”を手にする“法治国家”だ」と言う。つまり秦国が他国を支配するのではなく、法によって新しい国を形成するという意味である。私は、このシーンに心を動かされ、中国の歴史やその文明に興味を持つようになった。秦の始皇帝が法家の思想によって中華統一を成し遂げたことは事実である。万里の長城や兵馬俑などの建築物も秦朝の遺産として有名である。秦がこのように中華統一を成した紀元前200年ごろ、日本は弥生時代である。私は、弥生時代の日本と、秦の文明とを比較した時、その文明発達の差異に驚いた。日本は7世紀から中国の隋の律令を模範とする体系的な法典としての律令法典が施行され、法整備以外にも、米作りや漢字、仏教、貨幣など、現在の日本では欠かせないものや技術が多く伝わってきた。つまり、日本の文明の原点は中国にあると言っても過言ではない。更に大学の中国語の授業では、紙、印刷術、火薬、羅針盤の四大発明が古代中国のものであるということも学んだ。歴史を振り返ると、人類文明の観点で、中国が残してきた功績は非常に大きい。

そして、21世紀の現在、中国は科学技術が急速に成長し、再び人類文明の発展を成し遂げようとしている。特に、私にとって印象的だったのは、中国のスパコン(スーパーコンピューター)である。2016年にスパコンTOP500の1位にランクインした「神威・太湖之光」。私は、初めてその名を見た時、「名前、めっちゃかっこいいやん…ナニコレ」と思ったのを覚えている。よく調べてみると、当時、その性能は他国と圧倒的な差をつけての1位であり、TOP500にランクインしているスパコンは中国の開発によるものが最多という結果になっていた。

私は、以前ニュースで、中国の研究開発費が年々増加しており、大学には最新の実験装置や機器が設置され、若手の優秀な研究者が山ほどいることを知った。大学院生に対する研究費の資金供給・環境設備も充実していると聞いたことがある。中国と比べると、日本の大学は、最新の実験装置や機器が完全に整っているわけではなく、研究者の給与も低く、大学の研究資金は不足し、研究がしたくてもできない状況である。日本の優秀な学生は、日本で研究を行うことなく、海外に行ってしまうこともある。こうして日本の若手の研究者は育つはずもなく、日本の科学技術は国際的にも衰退していっている。日本が、研究者を増やし、科学技術を強化していくには、中国に習うべき部分が多い。

さらに、ゲームやドラマなどの映像技術の面でも、圧倒的に技術が向上していると思われる。コロナ下で何となく見始めた中国ドラマ、そして原神のゲームに関しては、そのクオリティが私の予想をはるかに超えており、予想外に面白い。まさに青天霹靂である。

「中華」は「世界の中央にある文明の地」という意味である。「中」は中央を、「華」は礼文が盛んなことを意味する。まさに、今その意味通り、文明の前進を遂げているのは確かである。しかし、文明の発展は、必ずしも地球、そして万人に対して善の結果をもたらすとは限らない。私は、その革命的な文明の発達や技術が、世界の平和と人々の幸福を実現するためのものであってほしいと願う。日本は、再び中国の文明から学ぶ時代が来ている。そして私達は、いつまでもその革新的な文明に対して受動的であってはならない。かつて漢字から平仮名や片仮名を生み出したように、その学んだものを私達なりに、その時代、あるいは自国のニーズや次世代の地球環境、地球人に向けて変革していくべきなのだ。

 

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