国の垣根をこえて

2022-10-26 10:42:00
細井 江実理

私には、人やグループをステレオタイプ化し、イメージを固定化させてしまう癖があった。例えばテニスサークルの人は、みんなチャラく、テニスなんかせずに飲んでばかりいる、また共学出身の人は、異性の目を意識しすぎているなど。そして、このステレオタイプ化する癖は、中国に対しても同様に働いた。具体的にいうと、中国人は容姿が綺麗で、みんな野心が強く、反日であるというステレオタイプを抱いていたのだ。

私がこのようなステレオタイプを持つようになったのには、いくつかの要因があると思う。例えば幼い頃、中国人の知り合いがいたのだが、彼女はとても気が強く、また一度決めたことは絶対に曲げない性格であった。そのため自分の気に食わないことがあると、泣きながら強い口調で自分の要望を押し通していた。ある日、その様子を見ていた大人が、あの子は中国人だから仕方ないよね、と言っていたのを聞いた。私はそれまで、自分が日本人、彼女が中国人であるというように国や民族、と言ったことを意識していなかった。そのため、世の中には中国人、日本人というようにグループで一括りにされる、ということ、またこの大人のように、中国人に対して良くないイメージを持っている人が一定数いることを知った、

他にも、私が中国人に対して良くないイメージを持つようになった要因として、メディアやSNS等で中国人に対するマイナスのイメージを助長させるような報道があるだろう。

そのイメージが変化したのは、大学生になってからだ。私の通っている大学では、アメリカ人、中国人、韓国人、フランス人など様々な国の人がいる。履修しているクラスで、ある中国人の男の子と出会った。彼は、日本語も英語も、もちろん中国語も得意だ。しかしそのことをひけらかそうとせず、いつも謙虚である。また、ディスカッションの際には相手の意見をきちんと聞いた上で、相手に配慮しつつ自分の意見を述べる。私は彼と出会って、今までの中国人に対するイメージが180度変わった。私は、今まで中国人であることを理由に少しマイナスなイメージを持っていた自分を恥じた。

私には、サークルにいる穏やかで物腰の柔らかい中国人の女の子や、同じクラスの元気で面白い中国人の男の子など素敵や中国人の友達が沢山いる。全ての日本人が素敵な人ではないように、中国人がみんな私の周りの友達のように素敵な人であるは言い難い。しかし「国」という枠組みで一括りにして、その人個人のことをろくに知りもせず、ステレオタイプを元に判断するのは非常に危険なことだと思う。そのような態度では、相手の本来の考え方、個性の発見の機会を喪失させ、分かり合えたかもしれない未来を潰してしまうことにつながるからだ。ステレオタイプによってその国の人を判断することは控えていきたいと思う。

なお、中国人の友達に、日本は中国人にどう思われてるのかを聞いてみた。すると、「以前の戦争問題や受けた教育もあり、最初から完全に親日的な中国人は少なかったと思う。主観的に日本に良い印象を持てない人と、日本の良いところをもっと知りたい、勉強したいという人に大きく分かれるが、最近は後者が優勢だと思う」との回答を受けた。私は、中国の人がこのように思ってくれているとは知らなかったため、非常に喜ばしく、また私も中国のことを知りたいと思うようになった。現在の日中関係は良好とは言えないかもしれない。しかし、ステレオタイプを持たず、個人と個人の間だけ対話し、理解しようという姿勢があれば、国という垣根を超えて分かり合えるのではないか。

 

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