コンビニの姐姐

2022-10-26 11:27:00
西山 心音

私がいつも最寄りの駅のすぐそこにあるコンビニによるのには理由がある。それはあの人がいるから。

遡ること約1年前、寝坊して朝ごはんを食べる時間がなかった&電車に乗り遅れそうな私は軽食を買うために急ぎ足でいつものコンビ二に入った。ドアを開けた瞬間に流れるお決まりのメロディーと共に1人の店員さんの「おはようございまーす!!」という活気のいい大きな声が私の耳に入ってきた。こんなに大きな声で挨拶されるのなんて初めてだな、とは思いつつも、私は特に深く考えることも無く、お気に入りの鮭と昆布のおにぎりを買ってコンビニを去った。何日後かの登校前、またそのコンビニに行くとまたその店員さんが元気いっぱいの挨拶をしてくれた。その店員さんのことが少し気になっていた私は、チラッと彼女の名札を見てみると、名前からして彼女は中国人なのだとわかった。彼女は曖昧な日本語だか、他のどの店員さんよりも丁寧に、そして元気に接客してくれた。また、彼女はとてもフレンドリーで毎回レジで会うごとに少しずつ会話をするようになり、私と彼女はとても親しくなった。今でも彼女は、私がコンビニに寄る度、中国での生活や家族、将来の夢など、色々な話をしてくれる。つい先月、私はコロナの影響で学校生活や行事が制限される苦しみを、彼女は母国にいる家族に会えない悲しさを共有したことがあった。その時に、私は彼女に「コロナで辛い事も沢山あるけど、一緒に乗り越えようね。」と伝えた。すると彼女は涙目になりながら「ありがとう」と言った。その瞬間、私は産まれ育った国も環境も全く違う彼女と、言語や歳の壁を超えて心を通わせられているのだと実感しとても心が温まった。彼女はいつも私がコンビニを出る時は決まって、お店全体に聞こえるくらい大きな声で「行ってらっしゃい!」と言ってくれる。私はその一言に元気を貰ってし、家族に会えない状況の中、夢に向かって突き進んでいる彼女を尊敬している。

ある日、いつもと変わらずレジで彼女と話しているとレジのすぐそこに置いてある新聞のタイトルが目に入った。日中関係悪化の話題だった。その新聞のとおり、年々、日中関係が問題となってきている。が私は、両国は今以上に親密な関係をきづいていくことが大切だと思う。普段よく利用する100円均一のショップの商品や衣服など、私達が日常で触れているものの多くがMade in Chinaであるし、街には中国料理店が多く立ち並んでいる。逆に、中国でも日本のアニメや美容品が高い評価を受けている。このように、お互い誇れる技術や文化を共有することが出来ているはずなのに、政治的な問題でぶつかり合って閉まっていることをとても悲しく思う。日本と中国が手を取り合い互いに政治面を含む多方面で高め合える関係になる事を願うばかりである。

正直、私はテレビからの情報やネットのニュースだけで、中国は日本の事が嫌いなんだ。と勝手に決めつけ、良くない偏見を持っていた。無意識に自分で中国との関わりに壁を作ってしまっていたのだ。しかし、そんなイメージとは裏腹に、彼女はとても優しく真面目で謙虚だ。それに、彼女の元気いっぱいの挨拶は私だけでなく、沢山の人に元気を与えている。私に、コロナ下で怠りがちだった挨拶の大切さを改めて教えてくれたのは紛れもなく彼女だ。彼女に出会って、たった一部の情報や、なんとなくのイメージだけで人を判断し、自ら関わりを持とうとしない事ほど、勿体ない事はないと気付かされた。何故なら、その人がどんな人かなんて、実際に関わってみないと分からないのだから。

私はいつか彼女と中国語で会話をしたい。そう思って、高校の第二言語は中国語にした。「もう少し上達したら、中国語で話しかけてみよう。」そんな事を考えながら今日も私はあのコンビニに行く。

 

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