中国語の学びを通して広がった世界

2022-10-26 10:18:00

熊木 愛弥


 起床。「在六点半。」支度をして駅に向かう。駅の看板には中国語がたくさん表示されている。中国語の表示を見つけるたびに小さな声でつぶやいてみる。「中央票口,地出口・・・」そして大学に到着する。「今天也要加油!」

このようにして、私の1日が始まる。私はまるで3歳児のようだ。周りが知らないもので溢れている。キョロキョロと辺りを見回し、興味のある方へと勝手に体が動いていってしまう。中国語を見つけては声に出して読む。知らない単語があればスマホを取り出して写真にとって記録し、その読み方と意味を調べる。

大学の授業が終わった後には、同じ大学の中国人留学生と待ち合わせる。週に一回彼女とカフェで会って、中国での日々の暮らしや、若者の流行について聞かせてもらう。一週間の中で、この時間が最も早く過ぎるような気がする。家に帰ると、SNSで中国人の友達とやり取りをする。学校のこと、食事のこと、将来のこと。お互いに知りたいことがたくさんあるから、話題は尽きない。

中国語を学び始めたのは5ヶ月前。大学の第二外国語で中国語を選んだのだ。理由は「中国の歴史が好きだから。」私は特に語学学習が好きというわけではなかった。今までに「勉強」したのは英語だけ。学校で英語の授業を受け、テストのために単語や文法を覚えていた。

しかし今の私は違う。辞書を絵本のように読み、日本語との表現や文法の違い、それらの背景にある感覚の違いを「発見」するたびに胸が踊る。私は中国語を「学んで」いるのだ。

私の性格は保守的。「新しい環境が怖い」「ずっと今のままがいい」といつも考えていた。特に趣味もなく、何かに興味を持つこともないまま、高校を卒業した。もしかしたら私の大学生活は、狭い交友関係と、テストのための勉強だけのつまらないものになっていたかもしれない。しかし実際はそうはならなかった。現在は、常に新たな環境や機会を常に求め続けている。そうして、留学生の友達をたくさん作ることができた。会って話したり、ビデオ通話をして雑談をしたり、お互いの言語を教えあったり。また、SNSを活用して色々な背景を持った人たちとつながることができた。

様々な人たちと関わっていく中で、私の興味の対象は中国語にとどまらず、中国文化へと広がっていった。食事の場面一つをとっても、日本と中国の違いはたくさんある。「他国のことを知ることは、自国のことを知ることにもなる。」と何度も言われてきた。そして今になって初めて、身をもって実感したのである。文化の違いが生まれた背景や、そこから生じる人々の感覚の違いを知る。それによって、私が日々の生活の中で無意識に行なっている行動一つ一つに新たな意味が生まれる。この5ヶ月間で得た知識や好奇心に満ちた私の目を通して見る世界はまるで、真っ暗な夜空に輝く星々のようにきらきらと輝いている。

私の語学面での目標は、中国語で自分の気持ちを伝えることだ。自分の気持ちは言葉によって相手に伝わる。つまり、相手に自分の気持ちを伝えるためには、自分の気持ちを表現するための適切な語彙と表現方法を知っていなくてはならない。この目標を達成して、中国語を自在に操れるようになりたい。そして、中国語の学びの先にある最終的な目標は、どんな状況においても、固定観念で相手を決めつけることなく、まずは相手のことを知ろうとする姿勢をもった人になることだ。中国語を学び始めてからの5ヶ月間で私は、自分の知っている世界がどれだけ小さいものなのかを知った。今まで自分が満足していた環境の外には、とても魅力的な世界が広がっていた。一歩踏み出してみれば、素晴らしい出会いがあり、少しの勇気で、自分の可能性をいくらでも広げることができる。私は中国語の学びを通して得られた環境に感謝し、互いの文化を尊重することのできる国際人になりたい。

 

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