手紙が伝える思い

2022-01-07 10:56:32

天津理工大学 語言文化学院日本語学部 19級 范心怡

 

日本の詩人、石川啄木は、「誰が見ても、われをなつかしくなるごとき、長い手紙を書きたき夕。」という詩を詠んだ。手紙は、電話やメールなどでは表現できない情報や感情を表現することができる。仮に石川啄木が現代に生きていたとしても、携帯を手にし、SNSで活躍する姿は想像もできないだろう。

この間NHKの「ドキュメント72時間〜文房具店 この手紙をあなたに」という番組を見た。銀座のある大型文房具店の手紙用品売り場が舞台になっていて、このコロナ禍において、はがきを買う人が多いとのことだった。この時、初めて手紙が日本人の生活において重要な地位を占めていることがわかった。特に、番組内である女性が話したエピソードが印象的だった。彼女はふとしたきっかけで、そこまで仲良くなかった友達にクリスマスカードを出したところ、友達からも手紙で返事をもらい、二人の仲は急に親密になったそうだ。それからというもの、二人は一緒にお酒を飲んだり、新年会を開いたりしたと、彼女は嬉しそうに語っていた。そして私は、ふと、自分にも同じ経験があることを思い出した。 

私には、幼稚園から中学までずっと一緒だった幼馴染がいる。しかし、私が引っ越しをしてから、高校の勉強が忙しくなったこともあり、時間が経つにつれて、連絡がだんだん少なくなっていった。

昔は、毎日どんなことでも話せる仲だったのに、今は年に一度誕生日の時だけSNSで連絡するだけなのはとても寂しいと思った。

そこで、去年、彼女の誕生日に、手紙を書いて、誕生日プレゼントと一緒に送ることにした。自分の気持ちをちゃんと整理しながら手紙を書き、相手に伝えることができることができたおかげか、数日後、彼女からも真心がいっぱいこもった手紙が届いた。こうして、私たちの仲は元に戻り、昔のように毎日やりとりをするようになった

今は、SNSが当たり前の時代になったが、あえて手紙を書く人もいる。手書きの文字には個性が現れるし、その一文字一文字には書いた人の気持ちがこもっていて、相手に伝わりやすいからだろう。手紙で感じ取る親しみや、温かみは、メールやSNSなどにはない、格別なものである。

さらに、日本にも古代に中国から伝えられた書道文化がある。「書は人なり」という言葉のように、文字から書いた人の性格や人柄を感じ取り、その人を評価するのは、中国でも、日本でも同じである。

大切な時に、大切な人へ、一字一句、心を込めて書いた手紙を送ろう。

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