青島大学外国語学院 日本語専攻 大学院一年生 孫芸

小さい頃、よく『ウサギとカメ』というイソップ物語を聞かされた。ウサギとカメが競走して、足の速いウサギは余裕で勝てると気を抜いて、途中でひと休みする。結果、寝入ってしまい競走に負ける。逆に、足がのろくて勝つ可能性がないと思われたカメはコツコツ歩き続けて競走に勝つ。学校の先生からも親からも、不器用でかまわないから、カメのように頑張ってと言われた。これはこの物語の寓意である。
でも、「ウサギは倒れたのかもしれない。なぜカメは寝ているウサギに声をかけなかったのか?」
初めてこのような疑問を『僕らは奇跡でできている』という日本ドラマで聞いた時、本当に驚いた。考えてもみなかったが、それは確かにありえる話だ。主人公の相河一輝という人が「ウサギはカメを見下すために走るんだ。自分はすごいって証明したいんだ。でも、カメはぜんぜん頑張っていない。競走にも勝ちにも興味はない。カメはただ道を前に進むこと自体が楽しいんだ。カメの世界にもはやウサギの存在はないから、寝ているウサギに声をかけなかったんだ」と言った。この斬新な解釈に、「なるほど、そうか!」の声が心から漏れた。
ドラマの中で歯科医の水本先生は自分の親や患者さんの期待に応えようと、アメリカに留学して歯の美容技術を学んで、中国語も勉強して、ほかの人より優秀になろうと無理を重ねている。毎日忙しくてストレスがたまってぜんぜん楽しくない。水本先生を見ていて、自分が日本に留学していた時のことを思い出した。
貴重な留学の機会を大事にして、自分が優秀であることを証明したかったから、ほかの人にできることは興味がなくても全部やってみたいと思い、本当にやりたいことが目の前にあってもぜんぜん見えなかった。結局ちゃんとできたことが一つもなく、悩んでばかりいた。そんな時、日本人の学生のひなたちゃんと知り合った。ひなたちゃんの名前は漢字で「日向」と書く。まさに名前のように前向きな性格で、明るい人だ。ある時、ひなたちゃんが私を見て、「願いって、目の前のことを夢中になってやっているうちに、叶っちゃうんじゃないかな。考えすぎない方がいいよ」と言った。その言葉を聞いて、目からうろこが落ちた。ひなたちゃんと話していると、だんだん毎日が楽しくなってきた。日本の事情をいろいろひなたちゃんから聞けるし、日本語も上手になった。ひなたちゃんも中国語に興味を持ったから、お互いに教え合って、充実した留学生活を送ることができた。
勝つことを目的にせず、自分の道を前に進むこと自体を楽しもう。カメのように目の前の一歩一歩に夢中になろう。