笑顔はあの頃のままで

2023-02-10 15:16:00

付瑩瑩 山西師範大学

「気をつけなさい、転ばないようにな」 

やんちゃ走り回る幼い私を見守るおじいちゃんの優しい笑顔が、まるでスクリーンのように心に浮かびあがりました 

『おかえりなさい』は、認知症のおじいさんが家からいなくなった時、主人公の優子が祖父との幼少期の生活を思い出し、祖父の深い愛情に気づくという話しです。 

小説は主に思い出の部分と今起こっていることに分けられ、2つの部分が交差して描かれています。著者は、読者がはっきりと区別できるように、今起きていることを語るときに時計を使っています。読者は全文をはっきり把握することができるだけでなく、小説全体の筋道に沿って、スムーズに読み進められます。表現方法の面で、私たちはこの小説から多くのことを学ぶことができると思いました。 

この小説で、私に深い印象を残したシーンが3箇所あります。まず、祖父がまだ笑顔を見せていた頃のシーンです。時間が経つにつれて、祖父の認知症は深刻になり、優子はだんだん大人になって自立意識が強くなっていきます。優子が発する冷たい返事を聞いた彼の寂しそな笑顔に、私は心が締め付けられる感じがしました。彼の心にいる優子は、まだあの幼く、活発な女の子なのです。しかし、現在の彼女は多くの友達ができて、好きなサークルに参加して、自分だけの空間があって、もう彼と二人で過ごしていた頃の優子ではありません。彼女は自分の不満をさらりと言いましたが、祖父の寂しそうな笑顔を見ると、私は胸が苦しくなり涙がこぼれます。 

次に、優子が幼い頃に描いた祖父の絵を、彼が大切に保管していたことを知るシーンです。クレヨンでむちゃくちゃに描いただけの絵なのに、彼は、その絵を褒めただけでなく、ずっと大切に保管していたのです。料理をしたり、洗濯物を干したり、平凡な絵を描いたりして、優子とずっと過ごしたからこそ、彼の生活は多彩で、彼女に対する大きな愛で何でもしてあげたいと思っていたのだとわかります。美しい願いを込めて優子と名付け、優子に良い学習机を買ってあげて、優子の絵を捨てずにいた彼の、優子のすべてを大切にしている姿に、私は胸が熱くなりました。 

最後は、祖父が学校の前に優子を迎えに行ったことを知るシーンです。彼は認知症のせいで急に家を出たと思っていましたが、優子の「行ってきます」という言葉を聞いて、あの頃のように学校の前に行って優子を待っていたのでした。時間は流れて、優子は大きくなりましたが、彼の彼女への愛は何も変わっていませんでした。彼の心の中の優子は永遠にあの頃の優しい孫娘です。 

中国では、私はもちろん、多くの人が祖父母に育てられます。この日本の小説は、中国人の私にとって大切なことを思い出させてくれました。毎日の忙しい生活の中で、忘れかけていた記憶の中の優しい笑顔。私は、久しぶりに見たおじいちゃんの笑顔が、あの頃のままだと気付くことが出来ました。 

おかえりなさい

 

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