待つことの大切さ

2023-02-10 15:25:00

王瑞潔 中国海洋大学

最近、「内巻」という言葉が中国の若者の間で流行してきた。それは職場や学校でみんなが頑張っているから自分も頑張らないと追いつかないという考え方の意味で、頑張れば頑張るほど競争が激しくなる状態とのことだ。周りの人が追求するものを自分も目標にして求めるのが無難だ。社会で生きる私たちは多かれ少なかれ、そのような気持ちを持っているはずだ。すると、本当に欲しいものが何かも知らずに、非理性的競争に落ち込まれてしまう。 

これは、私が過ごしたい人生ではなく、映画『日々是好日』の主人公・典子が好きな人生でもない。大学時代の典子は一生をかけられる夢を見つけたいと思った。しかし、学生生活は瞬く間に過ぎていき、周りでは就職や進学の話が出始め、自分は本当にしたいことが分からなかった。書くのが好きな典子は卒業した後、何度も就職に落ちても妥協できず、ようやくフリーライターになり、恋愛、結婚、父の病没など、人生の節目を経て、自分なりに生きていた。 

三十年間、典子が長く続けてきたのが茶道だ。茶道は優劣や勝敗に関係なく、競争のようなものではない。典子は毎回茶道教室に通ってお稽古をすると、心が落ち着くなる。茶道は自分自身と向き合う、自分を癒す時間になるのだ。 

茶道の作法に細かい動作などが多く、美味しいお茶が出来上がるために、ゆっくりとしなければならない。だが、この「ゆっくり」こそ、茶道の一番の魅力だと思う。なぜなら、お茶の深く柔らかな香りとしっくり心に染みるほろ苦さが、時間をかけなくては味わえない、というのが、「待つ」ことの大切さを教えてくれたからだ。 

私は以前よくちょっとした失敗で焦ったり、落ち込んでいたりした。2年生の時初めて大学の日本語スピーチコンテストに参加したが、いい成績が取れなかった。悔しいとも思ったが、失敗の原因が自分の能力不足にあるのだと痛感した。もっと頑張って日本語を学んでみたが、上達を目指して急ぎすぎたせいか、なかなか心のゆとりが持てず、いくら努力してもうまくいかなかった。そんな時、映画のセリフを思い出した。 

「雨の日は雨を聴く。五感を使って、全身でその瞬間を味わう。雪の日は雪を見て。夏には夏の暑さを。冬は身の切れるような寒さを。」どんなことが起きても、今という瞬間を大切にすれば、日々は良い日になる。人生はお茶と同じように、あまり急がずに、時間がかかることを面白がってみたらどうだろうと、私は考え始めた。その後、心のゆとりを持つようになり、日本語の勉強に集中できた。3年生の時再びコンテストに挑戦し、一等をもらった。 

人生には思い通りにならないことの方が多い。だが実際、成功するためには待つことが極めて重要だ。成功なら成功を楽しみ、失敗なら失敗を味わう。これから、失敗でも、不安や焦りを抱えるのではなく、今は自分にとって「待つ」時間なんだと構えて、ゆっくり、しっかりと前に進んでいこうではないか。 

映画『日々是好日』

 

関連文章