夏に出会い、夏に別れる

2023-02-10 15:36:00

顧倩倩 連雲港師範高等専科学校

「蛍火の杜へ」を初めて見たら、きれいな映像や淡々とした展開に引き込まれた。この映画は緑川ゆきさんの短編漫画をもとにアニメ化された作品で、暖かい物語を語った。 

毎年夏休みに祖父の家に遊びに来ていた女の子・蛍は、6歳のとき、妖怪が住むという「山神の森」に迷い込んだ。出口が見つからず泣き出してしまったところで、狐の仮面をかぶった少年・ギンに助けられ、森を出ることができた。ギンは妖怪でも人間でもない存在で、山神の妖術で生かしてもらっている者だ。それに、人の肌に触れると消えてしまう。その夏から、二人は徐々に友達になっていく。蛍も毎年夏休み、ギンの元を訪れるようになった。真夏に、二人は一緒に楽しい時間を過ごした。 

印象的なワンシーンは、二人が遊んでいる途中、蛍が木から落ちそうになり、ギンは手を伸ばして受け止めようとしていた瞬間だ。自分に触れられたらギンが消えてしまうのではないかと蛍の心配事が読めるように、ギンは手を引っ込めた。無力感を感じたギンに、蛍は微笑んで、「でもよかった。何があっても絶対私に触らないでね」と。自分がけがしても、ギンが消えないように願っている蛍を見て、私は友情を大切にすることで感動した。 

いつしか蛍はギンに恋心を抱くようになった。ギンの特殊な身分は、「触れられたい・触れられない・近いのに遠い」という悲しい終わりを暗示するのだろう。 

光陰矢の如し、十年間はあっという間に過ぎた。ずっと一緒にいられるように、地元で就職するつもりと宣言する蛍に、ギンは「忘れてしまっていいんだよ」と諭した。時間がいつか二人を引き離すだろうと知っても、その時まで一緒にいようと蛍は思う。それから、ギンは蛍を妖怪たちの夏祭りに誘った。 

夏祭り後、二人が森を散歩した。偶然通りかかった少年が転びそうになってしまうのをギンがとっさに腕をつかんで助けた。人に触ったギンの指が蛍火のような光になり、その光もだんだん全身に届いた。ギンは「来い、蛍。やっとお前に触れられる。」と微笑んだ。ギンの胸に蛍が飛び込み、そして抱き合った瞬間にギンは消えてしまった。そして間際に蛍に「好きだよ。」とつぶやいた。ここで私は涙腺が崩壊した。 

ギンにとって、10年間をかけても、自分が消えると知っていても、恋した少女に一度触れられて、すでに十分だろう。これはなんて立派な愛だろう。最初から最後まで、私はこの物語が悲劇的な存在だと知っている。映画の終りに、ギンが人間の子供を助けたので消えたことに感謝する。ギンは蛍に触れて消えたら、蛍の永遠な痛みになると思う。この種族を超える愛は悲劇になるのではないか。 

私はこんな立派な愛に憧れる。民国の作家・銭鍾書、楊絳夫婦の愛情は平凡なのに立派だ。その不穏な時代で、彼らはお互いに尊重して包容し、愛情が人々を感動させた。電話やネットワークがなくても、素朴に手紙で連絡し、生活は簡単で幸福だった。 

私は未来の生活でそんな愛に出会いたい。誰かが現れ、誰かが去っていても、思いがけない出会いの喜びを大切にし、突然の別れを受け入れるしかない。 

「蛍火の杜へ」

 

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