共に歩む

2023-02-07 16:19:00

佳瑜 上海初盟教育科技股份有限公司

2019年は私にとって、忘れられない年だった。というのは、2019年は私が初めて日本へ留学した年であり、多くの人生勉強になった年だからだ。初めてのことには当然新鮮さが伴う。この留学はにとっても例外ではない新鮮なものであった 

とはいえ、はじめはわくわくでいっぱいの私は新鮮さが消えていくにつれて、友達は出来たものの、少しずつ異国での孤独を感じるようになった。本好きの私は気を晴らそうと思い、向かった先は近くの書店だった。そこの三階で出会ったのが伊集院静さん作のエッセイ集『きみとあるけば』だった 

最初はタイトルに惹かれ、気付けば思わず本を引き出した。表紙に堂本剛さんのかわいらしい二匹の犬のイラストがあった。それを見て内容に興味が湧いてきた私はこの本を買わずにいられなかったのだ。 

「人は誰か、何かとともに歩いているものだ。その相手が、たとえ人間ではなくとも、子供の時代、青春時代、そして大人になっても、その人のかたわらには誰か、何かがそばにいて、喜び、哀しみをともに抱いてくれている。孤独な人には“孤独”が隣にいる。」 

家に帰ってページをめくると目の前に現れた言葉だった。なんと心に染みる言葉なのだろうと思った。 

なんだ、孤独を感じる私も本当は孤独ではないのか。掃き出し窓のガラスに映る自分を見て、口元がほころんでいたことに気付いた。 

この本をめくりながら日本人の心の繊細さを覚えた。日本の古典文学である『枕草子』からみてもわかるように、日本人の心には古くから繊細さが流れている。伊集院静さんの文章からまさにその繊細さが感じ取れる。素直に自分の弱さや非を認めて反省する姿勢が、むしろ逆に優しさと強さの表れだと思える。私は自身の内面と向き合うのが怖かった。自分の弱さを認めたくないからだと思う。しかしこの本を読み終え、私はやっとわかったような気がした。臆病でもいい、悲しんでもいい、喜怒哀楽はより人間性を豊かにするために極めて重要な感情だと考えた。 

最近は夜になるといつも雨が降る。この雨音で来日間もない頃の留学生歓迎会を思い出してしまう。その日は会場へ行く途中突然の雨に降られ、髪と服が濡れてしまい、落ち込んでいたのが記憶に残っている。歓迎会のテーマは「袖振り合うも他生の縁」。そこで五か国の学生と先生が集まり、みんなでゲームしたり友達を作ったりしているうちに、気分も晴れてきた。その時の楽しさは今でも鮮明に覚えている。 

それにもかかわらず、帰国して2年近くも経つ今となっては、その時の仲間たちとの連絡がいつの間にかなくなっていた。寂しい気持ちにはなるが、それでもいい。彼らはその時の私と歩いてくれていたから、この出会いは私の心に咲いた永遠に枯れない思い出の花になっているのだ。そして今日もきっと誰か、何かとめぐりあい、私と歩いてくれるはずだと、私は信じている。 

『きみとあるけば』伊集院静 朝日新聞社

関連文章